『スパイダーマン:ホームカミング』 (2017) ジョン・ワッツ監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

原作に最も近いとファンから評価が高い本作品。これまでのスパイダーマン・シリーズは、スパイダーマン単独の作品だったが、本作はアイアンマンほかのキャラクターが登場するシネマティック・ユニバースの作品。またこの作品の魅力として、特にピーター・パーカー役の年齢が言われることが多い。本作で演じているのはトム・ホランド。現在19歳であり、トビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドがスパイダーマン役を最初にやった時の年齢が25歳と26歳であったのに比べると、高校生という設定に実年齢が近いのはトム・ホランドということになる。

 

作品中で、体育の授業中にヒロインのリズが体育館で友人たちとスパイダーマンについて噂しているシーンがあるが、リズが「彼はホットだわ」と言うと、友人の一人が「マスクの下は30歳くらいのおっさんかもしれないぜ」と言うのは、前作までのピーター・パーカー役を揶揄していると思われる(また、ほかの友人が「もしかしたら顔面一面やけどだったりして」というセリフは、勿論デッドプールのことを指している)。

 

実年齢が役設定に近いトム・ホランドを起用して、テーマに少年の成長物語を大きくクローズアップした本作の出演者に、監督がリクエストしたのは、ジョン・ヒューズの80年代青春映画(『すてきな片想い』 『ブレックファスト・クラブ』 『フェリスはある朝突然に』ほか)を観ることだったという。

 

そうした原作に近づけようとする試みは、フレッシュ感を与えることに成功し、高評価につながっているのであろう。しかし、個人的にはこの作品は、過去のスパイダーマンの作品と比較して、あまり面白いとは思えなかった。

 

まずスパイダーマン・シリーズの共通の難点だが、スーパーヴィランが弱い。本作品では、バルチャーがスーパーヴィランだが、彼は普通の人間の武器商。そして世界の制服を企てるわけでもなく、直接人々に危害を加えるわけでもない。悪役度が低く、華がない。そもそも廃品回収業者の彼が、なぜ宇宙人の遺留したエネルギー物質を兵器利用する科学技術力と資金を持っているのか。そして開発した超ハイテク・超強力な武器を誰に売るかといえば、ATM強盗といった街のチンピラ。全くもってナンセンス。

 

また、スパイダーマン・シリーズは、マーベル作品には珍しく、学園ラブストーリーが一つの添え物になっている。サム・ライミ監督三部作のキルスティン・ダンストによるメリー・ジェーン・ワトソン、マーク・ウェブ監督「アメイジング」二作のエマ・ストーンによるグエン・ステイシーに比較して、今回のヒロイン(リズ・トゥームス役のローラ・ハリアー)の魅力のなさにはがっかりさせられた。せっかくジョン・ヒューズ作品群を参考にしたというのに、ピーター・パーカーの淡い恋愛ストーリーが全く魅力ないというのも残念なところ。

 

そして、やはり主役の力不足は否めない。いかに高校生としてはトウが立ってるとしても、トビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールドの両ピーター・パーカーは甲乙つけがたい魅力があった。トム・ホランドでは超人気スーパーヒーローには荷が重すぎた。

 

マーベルはシネマティック・ユニバースに大きく舵を切ってきたのだろう。スーパーヒーローがピンで活躍するのを野球で言うレギュラー・シーズン戦とすれば、シネマティック・ユニバースは言わばオールスター戦。どちらが好きかは好みがあろう。自分は圧倒的にレギュラー・シーズン戦派。それはスーパーヒーローがそれぞれの特殊能力を獲得するには稀有なストーリーがあり、それが同じ時代に同時に起こりうるというのはナンセンスだから。その意味では、スーパーヒーローが複数登場しても、X-MENシリーズはミュータント、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー・シリーズは宇宙人という説明がついている。一言で言えば、アイアンマンが出過ぎ(個人的にはアイアンマン/トニー・スタークは大好きなキャラクターだが)。

 

スパイダーマン・シリーズの6作目ということになろうが、個人的には、これまでの中では1・2を争う低評価と言わざるを得ない。6作の中では1番が『スパイダーマン』(2002年)、2番が『アメイジング・スパイダーマン2』(2014年)と考える。

 

またエンディングのクレジットがやたら長いが、それは最後の最後まで観れば(つまりマーベルお約束のおまけ映像を観れば)なぜかは分かるので、それまで席を立たないよう。

 

★★★★ (4/10)

 

『スパイダーマン:ホームカミング』予告編