イラク戦争に従軍した軍用犬とハンドラーの実話に基づいた作品。
犬と人間の交流を扱った評価の高い作品としては、『HACHI 約束の犬』がある。さすがラッセ・ハルストレムという悪くない出来だったが、この作品も悪くなかった。
ストーリーは至ってシンプル。予告編で展開が読めてしまう。人生にドロップアウトしたミーガン・レヴィー(ケイト・マーラ)は新天地を求めて海軍に志願する。作品前半は、その彼女の戦争経験が描かれている。彼女は偶然、軍用犬のハンドラーになるきっかけを得る(訓練兵の時、不祥事の懲罰として軍用犬の犬舎の清掃をさせられたこと)。そして、その後イラク戦争に共に従軍することになるジャーマン・シェパードのレックスと出会う。
後半は、戦闘中の負傷でパープルハート章を得たミーガンの退役後の物語。ミーガンは、命を懸けた勲功を共に成し遂げたレックスを譲り受けようとするが、軍規がそれを許さない。打ちひしがれる彼女だったが、それで諦める彼女ではなかった。
お涙頂戴のチージーな出来でなかったのがとてもよかった。前半においては、最近の戦争映画に見られる考証の念入りさと、映像の迫力に助けられていた。また、全体として所々に織り込まれた人間模様が生きていた。
人生の行き場を失った若者が軍隊に志願するということはリアルにあることなのだろう。そして、国のために命を懸けるということに生きがいを見出すということも。アメリカにおいては、ベトナム戦争の和平協定成立時に徴兵制は廃止されたが、この作品では、いわゆる「経済的徴兵制」という現実があるという状況が描かれていて、興味深かった(ただ、母親との不仲が若干オーバー・ドラマティックではあったが)。
深みがある作品とは言えないが、素直に感動できる出来だと思った。特に、犬人間はたまらないのではないだろうか。原題は主人公の名前をそのままつけているが、どれほどひどい邦題になるのか、それが少々楽しみになっているこの頃である。
★★★★★★ (6/10)