『Dearダニー 君へのうた』 (2015) ダン・フォーゲルマン監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



『Dearダニー 君へのうた』鑑賞。

原題は『Danny Collins』。有名人でもない人の名前だと内容がよく分からないと考えたのだろうが、相変わらずダサいのが邦題のセンス。

ダニー・コリンズは一世を風靡した"Washed-up”ロックスター。かつては名声を得ることにむしろ恐れていた彼も、成功は彼のそうしたナイーブな心を徐々に麻痺させ、結局は女とドラッグにまみれるというお決まりの行く末に。そうした彼に43年前に彼に宛てられたジョン・レノンからの手紙が見つかった。ロック雑誌の編集者に託されたものだったが、編集者がそれをコレクターに売ったため、ダニーの手には渡らなかったという経緯だった。ジョンからの手紙は、ダニーの目を覚まさせ、もう一度シンガーとして、そして家族人としてやり直しを決意させる。

ジョン・レノンが新人アーティストに手紙を宛てたが、それが後になって初めて発見されるという逸話は実際の話。その「おいしいネタ」をモチーフに、ジョン・レノンの楽曲をふんだんに使って作られたのがこの映画。主役にもアル・パチーノという大御所を配している。

実話にくっつけられたフィクション部分では、家族愛がテーマ。生まれて一度もあったことのない息子との再会をすると、本人は白血病、その娘は多動症の障害を持っているというてんこ盛りの設定。果たして、グルーピーの一人と一夜だけの関係で生まれた子供のことをロックスターがここまで気に掛けるのか、という大きな疑問はあるけれども、それさえ目をつむればあとは良く描けている。

アル・パチーノが自分の映画を観て初めて泣いたというのは、ラストシーンのことを言っているのだと思うが、確かにそのラストシーンは見どころがあった。

ただ全体として締まりのないぬるいお涙頂戴ものという感じが漂うというのは厳し過ぎる評価だろうか。アル・パチーノはよくやっているが、やはり『スカーフェイス』『クルージング』『狼たちの午後』の頃の輝きはなくなっていて、「昔の名前で出ています」系の役柄がはまっているのが寂しい限り。

★★★★ (4/10)

『Dearダニー 君へのうた』予告編