「うん沙世ちゃんが文化祭で書いたストーリー、あれは本当にあったことだったんだ。」
「本当にあったって、私は見たことも聞いたこともないのに。」
「たぶん僕と紗世ちゃんは子供のころから良く空想ごっこしていたから、離れていても波長が合ったのだと思う。お互いの空想が同じ映像として見えたように。」
まさか信じられない、でも山根君は嘘いう子じゃないし。
「ねえ、君は病院にいるって言ったよね?かってに出てくるの怒られないの?それにそのかっこうだし。」
「うん、もう一人の僕は病院にいるよ。」
「もう、訳わかんないわ。」
「じゃあ覗いてみるかい?」
「覗くって?」
「病院の窓から僕を。」
「何それ、どうやったら窓から覗けるのよ。」
「僕と飛んで行けばいいんだよ。」
「飛ぶ?」
「ほらこの天狗の葉うちわでね。」
そういうと山根君は天狗の葉うちわを振りました。
山根君と紗世の体は木の枝から離れぐんぐん空の上に登って行きました。
「きゃーーーー!!!落ちる~!!!」
「大丈夫僕のそばにいれば落ちないよ、僕の念ずる相手は落ちないんだよ。慣れるまで怖いかもだけど。この葉うちわは定員10名までは大丈夫なんだよ。大人になると100人までOKなんだ。大天狗になると1万人までOKなんだって。」
「そんなこと早く言ってよ!ていうか、言われても怖いわよ!」
二人はどんどん町の上空を飛んで行きます。
「ほら僕らの町、白龍町が見えるよ。あれが大山、そこから流れ出てるように見えるのが白龍川、その先に紗世ちゃんの高校城山高校、そしてお城の跡に作られた白龍城址公園。」
雲の間に白龍町が見えました。
「わあきれい、私たちの町ってこんなになっていたんだ。」
白龍川を挟んで東に白龍城址公園、西に大山、南に鳥山、北に亀が池、白龍町は白龍川で作られた盆地です。
「僕のいる病院は市立鳥山病院だよ。」
山根君はうちわを一振りすると急降下していきました。
病院の窓に二人は浮かんでいました。
「ねえこんなところ見られたらみんな大騒ぎになるわよ。」
「大丈夫だよ、天狗の隠れ蓑使っているから。」
「隠れ蓑?」
「うん、透明人間になれるってことかなあ。」
「もうわけわかんない。」
「ほら僕はそこだよ。」
山根君が指差す方向にベッドに寝ている山根君がいました。こちらをみるとこっくりうなずきました。
「山根君が二人いる!」
「もう一人の僕、空蝉だよ。」
沙世はああまたかって感じの顔でした。
「空蝉、替え玉ってこと?」
「うーん、替え玉ってこともないかな、分身だけど僕であることも事実なんだ。お互い怒っていることは見えてるし感じてる。無意識だと生霊って呼ばれることもあるよ。」
二人は病院を離れ鳥山の方に行きました。
「僕がどうして天狗になったかここへ行けば分かるよ。」
鳥山の中腹には鳥山神社があります。
「ほらあそこ見て、天狗岩だよ。」
烏天狗① 烏天狗② 烏天狗③ 烏天狗④ 烏天狗⑤ 烏天狗⑥ 烏天狗⑦ 烏天狗⑧
烏天狗⑨ 烏天狗⑩ 烏天狗⑪ 烏天狗⑫ 烏天狗⑬ 烏天狗⑭ 烏天狗⑮ 烏天狗⑯
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