テノール屋さん 望月哲也のブログ -239ページ目

いよいよ

大晦日、元旦と久しぶりに家でのーんびり過ごして、明日はいよいよ2010年の仕事始めです!








明日はNHKニューイヤーオペラコンサートのリハーサルです。


このコンサートは渋谷のNHKホールで1月3日の19時から、NHK教育テレビにて生放送されるのですが、なにせ、会場のNHKホールは大晦日のぎりぎりまで「紅白」をやってますから、日付変わって元旦になって大急ぎで紅白のセットを撤収~ニューイヤーのセットを設営、と裏方さんは大変なご苦労があると思います。お疲れ様です!






このコンサートには、僕自身2007年以来3度目の出演となります。








初出演は2006年の時で、この時指揮をされたのがアジアを代表する世界的指揮者、チョン・ミュンフンさん。


この著名な指揮者と共演出来るだけでも興奮ものなのに、その舞台がNHKニューイヤーオペラコンサートだとは!と当時、本当に興奮しまくっていたのを今でも覚えています。


そりゃ、一応オペラ歌手として少しずつステップアップしていたので、「いつかはあの舞台に立てたら、幸せだなぁ」と夢のように思っていた舞台ですからね。








この時はもう歌うので精一杯で、常に舞い上がっていたと思います。笑


ちょうどこの年末に、これも僕にとって初めての経験だったんですけども、東京フィルさんとオケ主催の第九の演奏会をクリスマス周辺に4公演歌っていました。


刺激的な本番ですっかり声を使い果たしてしまい、そんなぼろぼろの状態で、マエストロとの初対面。ピアノ伴奏による指揮者合わせで、マエストロに「日本のテノールはこの時期、みんな声がなくなってる」って言われてしまい・・・相当恥ずかしい歌をお聞かせしてしまったのです・・・。








ちなみにこの時≪愛の妙薬≫の「人知れぬ涙」という、超有名なアリアを歌わせていただいたのですが、この曲がまた更に辛かった!


決して音も高くはないのですが、非常に繊細なコントロールを必要とするこの曲、連日マーチを歌った喉には少々荷が重かったのでした・・・。






それでも本番はなんとか歌い!非常に刺激的な経験をさせていただきました。








で、翌2007年にもお声をかけていただき、この時はグノー作曲の≪ファウスト≫から「この清らかなすまい」という曲を歌わせていただきました。


≪ファウスト≫といえば、僕にとってのアイドルはスペインのアルフレード・クラウス。




今、DVDになって発売もされていますが、NHKホールでのライブ映像が残っています。


もちろんこれだけではないのですが、僕はこの映像にやはり衝撃を受けました。


そのクラウスが歌った同じNHKホールでこの曲を歌える!って事で、クラウス先生(心の師匠No.2)に「見守っててください」と、お願いするように歌ったのを記憶してます。








さて、今年は~モーツァルトの≪後宮からの逃走≫から「ここでお前に会わねばならぬ」という曲を歌います。


これまで歌ってきた2曲に比べると、多少地味かもしれません。


でも、ウィーンでも勉強した役柄ですし、なにより僕のウィーンでの師匠、エルンスト・ヘフリガー先生もこのベルモンテという役を得意にしていて、いい録音も残っています。もちろんレッスンもしていただきました。それ以来歌うことはなかったですけど、今回この曲を歌うにあたり、ヘフリガー先生のCDを聴きなおしてみました。






今回はヘフリガー先生に「見守っててください」ってお願いしながら歌おうかな。








もしお時間ありましたら是非、テレビ見てください。よろしくお願いします!

ラ・ボエーム

年内のステージも一段落ついたので、この年末年始の休暇中は来年予定しているステージの事について書いてみようと思います。



まず、2010年のメイン・イヴェントといえる≪ラ・ボエーム≫です。



先日出演した≪カプリッチョ≫とは違い、少しオペラに興味のある方だったらまずタイトルは聞いた事があるのではないかな?というほどのイタリア・オペラを語る上で非常に重要な作品です。



ジャコモ・プッチーニというイタリアの作曲家の作品。



この作品には並々ならぬ思い入れがあります。



合唱が歌いたかったので、高校で合唱部に入部しましたが、僕が所属した合唱部、合唱の世界ではなかなか有名な学校だったので、それはそれはハードに高校三年間、部活動を頑張っていましたが、合唱部の活動のなかで、年に2回程度「独唱会」なるものがありました。



合唱部の部員、一人ひとりが「発表会状態」で、独唱を披露するのです。



高校に入りたての自分は合唱曲ならちょっと知っていたけど、独唱の曲やオペラ!なんてまだまだ全く未知の領域だったので、先輩に勧められるままに「この曲歌え!」って言われたものを歌っていたのです。

最初に勧められたのは、なんと!「女心の歌」(笑)そう、あのヴェルディの≪リゴレット≫の超有名な曲です。



高校一年生のときに無理矢理歌ってました。いや、信じられない。笑



その時に学校の音楽準備室で聴いたのが、ルチアーノ・パヴァロッティの歌う「女心の歌」でした。



やられちゃいましたね。笑



その時に同じCDに収録されていたのが≪ラ・ボエーム≫の中の詩人・ロドルフォの歌うアリア「冷たい手を」でした。

この曲を聴いたときの衝撃たるや、すごかったです。大興奮でした。

幼心に「いつか独唱会でこの曲を歌いたい!!」って思ってました。いやいや、恐ろしい。



高校生で、小遣いとかもさほど持っていませんでしたが、地元のレコード屋さんに行って~音楽の友社から出版されていた、テノールのオペラアリア集(パート毎に色が分かれていて、テノールのものは緑色でした!)と、Deccaから発売されていた、カラヤン指揮のベルリンフィルによる≪ラ・ボエーム≫の全曲盤CDを購入しちゃいました。

(記念すべき、僕のクラシックCDデビューの品です)



もちろんカラヤンに惹かれたわけではありません。ロドルフォを歌うのが心の師匠、ルチアーノ・パヴァロッティだったからです。



それからそのCDのアリアの部分を繰り返し聴いては、手に入れた楽譜にカタカナのふり仮名をふって、自分でCDに合わせて歌ったりもしてました。



今現在の僕の道へと導かれた瞬間だったかもしれません。



その後、ボエームの舞台を見に行ったりもしましたが、僕の忘れられない体験は学部の2年生くらいのころだったと思うのですが、新星日響というオーケストラがありまして、(その後東京フィルと合併して名前が消滅してしまいましたが)そのオケの定期演奏会で、≪ラ・ボエーム≫の演奏会形式の本番がサントリーホールであったのですが、その時にロドルフォを歌っていたのが、日本が誇る世界のテノール、市原多朗さんでした。

「冷たい手を」の最後のハイCが、僕の脳をぶち抜いていくような鋭い響きで、それはそれはルチアーノ以来の衝撃でした。



いつからか、「死ぬまでに是非とも演じてみたい役柄ベスト3!」みたいなものを自分で想像するようになり、間違いなくロドルフォは、その一つでした。他の2つは結構時代時代で変化しているんだけど(笑)



学生時代から事あるごとにロドルフォの「冷たい手を」にチャレンジしてきました。

コンクールの予選で歌って撃沈!したこともあります。笑



今年の9月にサントリーホールで初めて!人前でオケの伴奏で「冷たい手を」を歌いました。

オケは読売日響。これまた初共演でした。

今まで、ピアノ伴奏でしか歌ったことのない曲がオケをやることで、こんなにも豊かに、歌いやすくなるものか!と感激しながら本番でも歌いました。




ここまであこがれ続けてきた≪ラ・ボエーム≫のロドルフォですが、全曲通して歌うのは今度の公演が初めてです。

僕はこれまで、どちらかというとプッチーニやヴェルディ、というよりはドニゼッティやロッシーニなどのもう少し古い時代の作品を歌うことが多く、その理由としては、プッチーニやヴェルディの作品はより一層のドラマティックな声と表現を求められる、ということです。

なんか、排気量の少ない車で目一杯吹かしながら走ってる、って感じです。笑

とにかく馬力が必要で、まだまだ20代から30代前半の僕の声には少々荷が重い感じでした。




ウィーンに行って、自分が思っていたレパートリーよりも多少重めのレパートリーを勉強して、少しばかり自分の喉も強くなったかな?そろそろこういうものにチャレンジしてもいいかな?って思っていたときにこのオファーを頂いたので、飛びつきました。(笑)



まだまだ歌いこんでいって、体に馴染ませていかないといけないなぁ~って感じているのですが、まぁ僕の楽器には出来ることが限られているので、自分の楽器でもって、表現できる最高のロドルフォを作り上げていければ、と考えています。



≪ラ・ボエーム≫大好きな作品なので、きっとこのネタでまだまだ書けると思いますので、乞うご期待。



びわ湖ホール・神奈川県民ホール・ベルリンコーミッシェオーパーの共同制作


ジャコモ・プッチーニ作曲

歌劇≪ラ・ボエーム≫


2010年3月13・14日 滋賀県・びわ湖ホール(13日に出演)

2010年3月27・28日 横浜・神奈川県民ホール(28日に出演)


指揮:沼尻竜典

演出:アンドレアス・ホモキ



ミミ:澤畑恵美

ロドルフォ:望月哲也

ムゼッタ:臼木あい

マルチェッロ:宮本益光

ショナール:萩原 潤

コッリーネ:ジョン・ハオ

アルチンドロ:松森 治

パルピニョール:清水徹太郎

ブノア:大澤 建



もしご興味のある方、是非会場に足をお運びください!よろしくお願い致します!



第九終了です。

都響との第九、3日目のサントリーホールでの公演も無事に終了しました。今日で2009年内の公演は全て終了です。



やっぱりサントリーホールは素晴らしいホールだと思いました~東京文化会館も素晴らしい劇場なんですが…やはり1961年オープンの劇場ということで、最近の音響のいいホールに比べると…という思いです。
(東京文化会館ファンの方、ごめんなさい。僕も思い出のたくさんある劇場なんですが…)



マエストロ・ベルクは今日も素晴らしかった。そしてオーケストラは、マエストロの池袋・上野・そして赤坂の劇場の特性を瞬時に感じて、毎回直前のリハで細かい指示を出していたけど、それに的確に答えていたと思います。お見事!



この三日間、本当にいい時間を過ごすことが出来ました。このブログ上から今回の演奏会に関わったすべての皆さんにお礼がいいたいです。


ありがとうございました!

そして、



お疲れさまでした!



とりあえず第九はもう忘れて(笑)明日からはNHKの稽古に行ってきます。



NHKニューイヤーオペラコンサートは、2010年1月3日、19時よりNHKホールにて催されると同時に、NHK教育テレビで生放送されます。
僕はモーツァルトの《後宮から逃走》からアリアを歌います。



どうぞご期待ください。