ラ・ボエーム | テノール屋さん 望月哲也のブログ

ラ・ボエーム

年内のステージも一段落ついたので、この年末年始の休暇中は来年予定しているステージの事について書いてみようと思います。



まず、2010年のメイン・イヴェントといえる≪ラ・ボエーム≫です。



先日出演した≪カプリッチョ≫とは違い、少しオペラに興味のある方だったらまずタイトルは聞いた事があるのではないかな?というほどのイタリア・オペラを語る上で非常に重要な作品です。



ジャコモ・プッチーニというイタリアの作曲家の作品。



この作品には並々ならぬ思い入れがあります。



合唱が歌いたかったので、高校で合唱部に入部しましたが、僕が所属した合唱部、合唱の世界ではなかなか有名な学校だったので、それはそれはハードに高校三年間、部活動を頑張っていましたが、合唱部の活動のなかで、年に2回程度「独唱会」なるものがありました。



合唱部の部員、一人ひとりが「発表会状態」で、独唱を披露するのです。



高校に入りたての自分は合唱曲ならちょっと知っていたけど、独唱の曲やオペラ!なんてまだまだ全く未知の領域だったので、先輩に勧められるままに「この曲歌え!」って言われたものを歌っていたのです。

最初に勧められたのは、なんと!「女心の歌」(笑)そう、あのヴェルディの≪リゴレット≫の超有名な曲です。



高校一年生のときに無理矢理歌ってました。いや、信じられない。笑



その時に学校の音楽準備室で聴いたのが、ルチアーノ・パヴァロッティの歌う「女心の歌」でした。



やられちゃいましたね。笑



その時に同じCDに収録されていたのが≪ラ・ボエーム≫の中の詩人・ロドルフォの歌うアリア「冷たい手を」でした。

この曲を聴いたときの衝撃たるや、すごかったです。大興奮でした。

幼心に「いつか独唱会でこの曲を歌いたい!!」って思ってました。いやいや、恐ろしい。



高校生で、小遣いとかもさほど持っていませんでしたが、地元のレコード屋さんに行って~音楽の友社から出版されていた、テノールのオペラアリア集(パート毎に色が分かれていて、テノールのものは緑色でした!)と、Deccaから発売されていた、カラヤン指揮のベルリンフィルによる≪ラ・ボエーム≫の全曲盤CDを購入しちゃいました。

(記念すべき、僕のクラシックCDデビューの品です)



もちろんカラヤンに惹かれたわけではありません。ロドルフォを歌うのが心の師匠、ルチアーノ・パヴァロッティだったからです。



それからそのCDのアリアの部分を繰り返し聴いては、手に入れた楽譜にカタカナのふり仮名をふって、自分でCDに合わせて歌ったりもしてました。



今現在の僕の道へと導かれた瞬間だったかもしれません。



その後、ボエームの舞台を見に行ったりもしましたが、僕の忘れられない体験は学部の2年生くらいのころだったと思うのですが、新星日響というオーケストラがありまして、(その後東京フィルと合併して名前が消滅してしまいましたが)そのオケの定期演奏会で、≪ラ・ボエーム≫の演奏会形式の本番がサントリーホールであったのですが、その時にロドルフォを歌っていたのが、日本が誇る世界のテノール、市原多朗さんでした。

「冷たい手を」の最後のハイCが、僕の脳をぶち抜いていくような鋭い響きで、それはそれはルチアーノ以来の衝撃でした。



いつからか、「死ぬまでに是非とも演じてみたい役柄ベスト3!」みたいなものを自分で想像するようになり、間違いなくロドルフォは、その一つでした。他の2つは結構時代時代で変化しているんだけど(笑)



学生時代から事あるごとにロドルフォの「冷たい手を」にチャレンジしてきました。

コンクールの予選で歌って撃沈!したこともあります。笑



今年の9月にサントリーホールで初めて!人前でオケの伴奏で「冷たい手を」を歌いました。

オケは読売日響。これまた初共演でした。

今まで、ピアノ伴奏でしか歌ったことのない曲がオケをやることで、こんなにも豊かに、歌いやすくなるものか!と感激しながら本番でも歌いました。




ここまであこがれ続けてきた≪ラ・ボエーム≫のロドルフォですが、全曲通して歌うのは今度の公演が初めてです。

僕はこれまで、どちらかというとプッチーニやヴェルディ、というよりはドニゼッティやロッシーニなどのもう少し古い時代の作品を歌うことが多く、その理由としては、プッチーニやヴェルディの作品はより一層のドラマティックな声と表現を求められる、ということです。

なんか、排気量の少ない車で目一杯吹かしながら走ってる、って感じです。笑

とにかく馬力が必要で、まだまだ20代から30代前半の僕の声には少々荷が重い感じでした。




ウィーンに行って、自分が思っていたレパートリーよりも多少重めのレパートリーを勉強して、少しばかり自分の喉も強くなったかな?そろそろこういうものにチャレンジしてもいいかな?って思っていたときにこのオファーを頂いたので、飛びつきました。(笑)



まだまだ歌いこんでいって、体に馴染ませていかないといけないなぁ~って感じているのですが、まぁ僕の楽器には出来ることが限られているので、自分の楽器でもって、表現できる最高のロドルフォを作り上げていければ、と考えています。



≪ラ・ボエーム≫大好きな作品なので、きっとこのネタでまだまだ書けると思いますので、乞うご期待。



びわ湖ホール・神奈川県民ホール・ベルリンコーミッシェオーパーの共同制作


ジャコモ・プッチーニ作曲

歌劇≪ラ・ボエーム≫


2010年3月13・14日 滋賀県・びわ湖ホール(13日に出演)

2010年3月27・28日 横浜・神奈川県民ホール(28日に出演)


指揮:沼尻竜典

演出:アンドレアス・ホモキ



ミミ:澤畑恵美

ロドルフォ:望月哲也

ムゼッタ:臼木あい

マルチェッロ:宮本益光

ショナール:萩原 潤

コッリーネ:ジョン・ハオ

アルチンドロ:松森 治

パルピニョール:清水徹太郎

ブノア:大澤 建



もしご興味のある方、是非会場に足をお運びください!よろしくお願い致します!