勿論人事担当者の育成の過程で一部の担当を割り振り、専門性を高めるのは悪いことではない。しかし例えば採用活動をする上で、今目の前にいる応募者は社内のリソースで育てることができるかどうかを判断するのは重要だが、採用だけを担当していると感覚でしか分からない。
例えば研修を担当する上で、そもそも研修ではなく、採用する方が組織課題にフィットするかどうかを判断することは重要。しかし担当を分けると、研修を実施することが大前提になる。実施しなければ仕事をしていないと思われるのだから、これは個人の問題ではなく組織・仕組みの問題だ。
結局のところこのように担当を割り振るということは、ある一つの業務に特化したエキスパートを育てることはできるが組織の課題を解決する上で本当にそれが最適なのかを考え、判断する力を奪うことになる。それは人事部門の「受け身体勢の醸成」や「(会社の業績にあまり影響を与えない、という意味での)間接部門化」を促進することになる。
本当に組織の課題を解決できる人事部門を作り、ヒト資源を活性化するために必要なのは、採用、評価、育成、労務管理を一気通貫して、人材開発の戦略をたてられる人材=HRコンサルタントを育てることだ。「HRコンサルタントを育てる」というのは何も外部のコンサルタントを組織の中に常駐させろ、という意味ではない。組織目標を達成する上でヒトの視点から問題を捉え、課題を明確にし、優先順位をつけ、対策を提案し実現できる人材を組織の中で育成することが求められていると考えている。
そのためにはいくつか解決すべき課題や構築すべき仕組みがある。
1.いかにHRコンサルタントを育てるか?
上記の様に、組織全体をヒト資源の視点から問題を捉えるというのは言葉で言うほど容易なことではない。寧ろ、これまでの役割別に分けられていた各担当者に求められる能力よりも遥かに高いものが要求される。そのため、はじめはやはり個々人の分野を限定し、HRコンサルタントとしての能力を徐々に高めていく必要がある。
ただ、分野の限定の仕方は、役割(採用・研修・評価など)ではなく、事業部・部門(営業・開発・管理部など)やグループ単位で分けるべきだ。つまり「組織」の概念を段階的に高めていく事で、HRコンサルタントとしての能力を高めていくことが求められる。冒頭にも書いたように、人事担当者としての専門知識を高めるために、一部の分野担当を割り振ることも有効だ。
また、HRコンサルタントとしてのキャリアパスは中長期的に考えられなければならない。これまで人事関連の担当は3~5年程度の一時的なキャリアとして設けられていることが多い。しかし、HRコンサルタントとして育成していくのであれば、3~5年程度の短期的なキャリアスパンで育成するのではなく、10~20年の中長期的なキャリアスパンで育成してはじめて、組織全体を見渡し全社的な視点で課題を解決できる人材を育成できる。そのためにも企業は「人事部門」の位置づけを改めて人材開発の戦略部門としてとらえ、人材を配置しなくてはならない。
2.優秀な人材を人事部門に起用できるか?
今でこそ人事部門に優秀な人材をおく会社も増えてきたが、未だ多くの会社では人事部門への優秀な人材配置ができていない。言葉を選ばずに言うと、「現場で通用しなかった人」を管理部門に配置する会社は少なくないのが現実だ。しかし、上記のとおり、HRコンサルタントに求められる能力な高く、誰でも担当できるものではない。
また、人事担当部門には現場を知らない人が多く起用される。現場を知らない人事担当者は、抽象論にとらわれ、本質的な問題に気付けないリスクと常に背中合わせだ。
現場経験を積み、次期経営層として育成したいと思うような人材を配置できるかが大きな課題だ。
3.HRコンサルタントが学べる場を組織内外に作る
HRコンサルタントを育成する仕組みをどう作るか、については上記1の通りだけれど、HRコンサルタントが学ぶ場(環境)を組織の内外に設けることも重要だ。
特に、事業部担当間の事例検討会などは非常に有効だ。なげなら
•お互いの気づきを共有することになるだけでなく
•担当事業部単位ではなく、会社全体で取り組むべき課題を認識し、対策がうてる
という意味でも開催の価値は大きいからだ。
またこのような事例検討の場は組織の外で参加することも重要だ。
これらの課題を解決し、組織の中にプロフェッショナルを育てること、それが僕ら人材開発業界がクライアントに提供すべき価値あるソリューションなのではないか、と。
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・パフォーマンス・コンサルティング~人材開発部門は研修提供から成果創造にシフトする~
・組織を横断的に見渡し課題に取り組む人材がいなければ組織変革は進むわけがない。
・組織はもっと問題意識を共有する場を設ける必要がある。
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