こんばんは。


 【投影性同一視】とは、精神分析理論における対象関係学派のメラニー・クラインによって1946年に初めて紹介された用語で、【防衛機制】の一種です。


 【投影性同一視】を分かりやすい表現で言えば、『他人を利用した自己愛や、他人を利用した自己嫌悪』です。


 【防衛機制】は、欲求不満などによって適応が出来ない状態に陥った時に、不安が動機となって行われる自我の再適応のメカニズムで、少しは人間にとって必要なものですが、過剰な【防衛機制】を行う人は【境界性人格障害】です。 




 過剰な【投影性同一視】を行っている例は、会社でも見ることがあると思います。




 例えば、部下に「お前は、自分勝手で自己中心的だ」という非難を浴びせている上司を見ることがあると思います。
 よく知っている人から見ると、「自分勝手で自己中心的なのは、他でもない自分自身のことではないか」ということになるのですが、【投影性同一視】はそういう自分のいやな部分を見ようとはせずに、そのいやな部分を他人に押しつけるのです。
 そして、いやな部分を押しつけた他人に向かって「お前は、自分勝手だ」と言って非難するのです。


 このように自分のことを棚に上げて、他人を非難することで、自分の中にある嫌悪すべき部分と直面することを避けているのです。
 つまり、自分自身と向き合う代わりに、他人という鏡と向き合って、他人を攻撃するのです。
 ですから、【投影性同一視】を行っている人が、「お前は、×××だ!」と言ったとき、「お前は」という部分を「私は」に置き換えてみれば、言っていることがそっくりそのまま患者自身にぴったりと当てはまることがあるのです。
 しかし、【投影性同一視】を行っている人は「私は、自分勝手だ!」とは言いません。
 その代わりに「お前は、自分勝手だ!」「お前は、自分のことしか考えていないじゃないか!」と言って、周囲の人たちを非難するのです。




 【投影性同一視】による攻撃は、このように直接本人に向けられるだけではなくて、そこにいない第三者の悪口を言うという形でも現われてきます。


 これは、
 ・【
モンスターサラリーマン 】が使う【誣告 】の例
 ・【Office Politics】を悪用する例
 ・【
二人羽織 】で、自分が言いたい悪口を「あいつが言っていた」と、言っている人をすり替えて言う例
 ・【
間接的逆ギレ 】で、まともな人を悪い人に仕立て上げる例
 で示したものです。


 このようなことが繰り返されていきますと、やがて社員同士が互いに根深い不信感を抱くようになります。
 そして、社内の人間関係が非常に混乱したものになっていきます。
 【投影性同一視】による攻撃によって、会社の体制が崩壊の危機にさらせれます。



 このような事態にならないようにするためには、【境界性人格障害】の人の感情に共感的に接したときであっても、絶対に【境界性人格障害】の人の前で同僚の悪口を言ったりしないことです。
 そして、社員同士が互いに信頼関係を維持できるような、チームワークの取れた体制を作る必要があります。
 また、【投影性同一視】によって、周りの人は自分でも気づかないうちに、【境界性人格障害】の人から割り振られた悪役を演じさせられてしまうことがありますので、ときどき自分自身の言動もチェックする必要があります。
 また、同僚同士でお互いの問題点を、気兼ねなく直接的に指摘しあえるような雰囲気を作ることも大切です。




 【境界性同一視】による操作で社内の風紀を乱されないように、気をつけましょう!