「恥ずかしいだろ、普通……。」
ガードレールに腰掛ける俺の前を、車のヘッドライトが通り過ぎる。
電話の向こうではライターを点ける音。
「じゃ、愛してるって言ってよ。」
足元を見つめ、そう言うと、
「愛してる。潤。」
すぐに返ってくる返事。
「あはは。それは言ってくれるんだ。俺も愛してるよ。」
俺は安心して携帯にキスして、通話を切る。
大丈夫。
今、リーダーは一人だ。
俺とリーダーは付き合ってる。
と言っても、無理やり俺が付き合わせたみたいなもので……。
それでもリーダーはOKしてくれた。
今しかない。
今ならまだ間に合う。
そう思っての告白。
そう、今ならまだ……自分の気持ちに気づいてない……。
だから、俺は猛烈アピール。
二人っきりの時はもちろん、楽屋でも。
俺のこと、可愛がってくれてるのもわかってるし、
拒まないのもわかってる。
ほら、こうやって手を握っても、リーダーは絶対嫌がらない。
ニノと相葉ちゃんは気を付けろって、耳にタコができるくらい言うけど、
そんなことはどうでもいい。
俺はバレたって構わない。
むしろ、バレたら本当にリーダーが俺のものになるなら、喜んでバラすよ。
だから、アピール。
リーダーと付き合ってるのは俺だって。
こんなに愛してるよって。
だって、そうしないと……。
リーダーの目は、ぼーっと宙を泳いで、最後は必ず新聞で止まる。
すぐに視線を外すけど……。
ねぇ、リーダー。
本当は気づいてる?自分の気持ち?
だから、俺はリーダーの腰を抱く。
肩を抱く。
手を握る。
耳元で囁く。
リーダーと付き合ってるのは俺だよって。
愛してるのは俺だよって。
リーダーと……翔さんに向かって。
たまに、ニノと相葉ちゃんが、切なそうな顔をするけど、いいんだ。
リーダーが俺のことを好きになってくれるなら、なんだってする。
付き合ってから半年が過ぎた頃、リーダーが不機嫌な日が続いた。
こんなに長いことリーダーが不機嫌なんて、付き合って初めてだ。
一緒の仕事になった雑誌の取材でも……。
「ね、リーダー、これさ……。」
「ん……。」
話しかけても生返事。
いつもだったら顔を上げて笑ってくれるのに、
今日は二人っきりだっていうのに、携帯から顔も上げてくれない。
「今日……家に行ってもいい?」
「ん……気分じゃない。」
「いいじゃん……ここんとこ、全然、行ってないし。」
「ダメだ。来んな。」
ゲームを続けながら返事するリーダー。
俺と……目も合わせてくれないの?
「リーダー……ゲーム止めて……。」
「…………。」
「リーダー……。」
その時、リーダーの携帯がブルッと震えた。
メール着信の知らせ。
リーダーが慌てて携帯を隠す。
誰?誰からのメール?
俺に隠れてメールを確認するリーダー。
「……リーダー、誰から?」
「あぁ……個展の時、お世話になったスタッフの人……。」
がっかりした顔で、俺に向かってメールを見せる。
……リーダーは誰からのメールを待ってるの?
その日の撮影は、いつも以上にくっついて、いつも以上に大きな声で笑った。
リーダーは、ずっと、作った顔で笑ってた。
仕事が終わって、別々の仕事に向かった。
リーダーは何も言わず、俺も……何も聞けなかった。
でも、やっぱり気になって……。
仕事が終わってから、電話してみる。
プルルル……プルルル……。
呼び出し音は鳴ってるのに、電話に出てくれない。
あんまりしつこくしたら嫌われる。
わかってる。
でも……。
少し時間を置いて、もう一度かけて、やっぱりダメで……。
リーダーのことを考えると、どんどん俺の嫌いな男になっていきそうで、
友達誘って飲みに行った。
バカな話をして、大きな声で笑っても、リーダーのことが頭から離れない。
「何?どうしたんだよ。」
「何が?」
「心配ごと……それとも、恋煩い?」
「……恋煩いって……。」
「お前はさ、何にでも一直線なとこがいいとこじゃん。
思ったらすぐ言っちゃう、すぐ行動しちゃう。
それで誤解されることもあるけど、俺は、そういうとこ好きだよ。」
……やっぱり行こう。
そう思って席を立つ。
「ありがと。」
「おー。頑張って来いよ。」
笑って手を振ってくれる……いい奴だよ。
俺は店を出て、すぐタクシーを捕まえる。
タクシーの中からも電話したけど、繋がることはなかった。
20分ほどで、タクシーはリーダーのマンションの前に止まる。
俺達は恋人同士だけど……。
合鍵を持ってるわけじゃない。
だから、恐る恐る部屋番号を押す。
出てくれなかったら……。
いや、家にいないかもしれないし……。
思いつめて来ちゃったけど……。
いろんな不安が頭を過る。
……やっぱりダメか……。
そう思った時、インターフォンからリーダーの声がした。
「……潤…………?」
「リーダー!」
出てくれたことが嬉しくて、俺はインターフォンにへばりついた。
「俺……リーダーが心配で……。」
しばらく沈黙が流れて……。
ゆっくりとドアが開いた。