今日は、公立の中高一貫校(適性検査)でよく出題される「水よう液 もののとけ方に関する問題」についてです。
最初に最低限おさえてほしい用語・ポイントをまとめてみました。
■水よう液とは?
水に食塩を入れると,食塩のつぶはしだいに小さくなり見えなくなる。このとき食塩は,水にとけ液はすきとおってとうめいになっている。このように,ものが水にとけている液を水よう液という。食塩の水溶液は,食塩水という。
□水溶液の特ちょう(性質)
① すきとおっている。(とうめいである。)
② とけたものが水全体に広がっている。
③ 時間がたっても,とけたものは水とわかれない。(ろ紙でこしとることができない。)
■水よう液の種類とよくでる物質
水よう液には,液体がとけた水よう液,気体がとけた水よう液,固体がとけた水よう液がある。
□食塩 …… 塩化ナトリウムともよばれる白色の固体。調味料して使われ,海水には約2.7%の食塩が含まれている。
□ミョウバン …… 白色の固体で,ナスの漬物の発色剤などに使われる。
□ホウ酸 …… 白色の固体で,温泉などに多く含まれ,殺菌剤,殺虫剤,医薬品などに使われる。
★適性検査ででるのは,ほぼこの3つで占められる。
■水よう液の重さと体積
① ものを水にとかす前ととかした後では全体の重さは同じ。
② ものをとかす前の水の体積はとものをとかした後の水よう液の体積とほぼ同じ。
■ものがとける量と水の量
① どんな固体でも一定量の水にとけるものの量には限度がある。 ホウ酸や食塩を水の中にどんどんとかしていくと,しだいにとけにくくなり,どんなにかきまぜてもそれ以上とけなくなる。
このように,一定量の水に,ものがとけるだけとけていることをほう和といい,このような水溶液をほう和水溶液という。
② ものがとける量は水の量に比例する。水の量が2倍,3倍……になると,とける量も2倍,3倍……になる。
■ものがとける量と温度
① 水の温度によって,もののとける量には限度がある。
② 水の温度が上がると,ホウ酸やミョウバンなどの多くの固体はとける量が多くなるが,食塩はとける量はあまり変わらない。
③ 水の温度が変化すると,とける量も変化し,それまで溶けていたものがつぶ(結晶)となってでてくることもある。
■とけたもののとり出し方
水よう液にとけているもののとり出し方には,主に下記のように2つの方法がある。
しかし,これらは固体がとけた水よう液の場合となる。
□水よう液を熱する(水を蒸発させる)
食塩やホウ酸などの固体がとけている水よう液を熱すると水は蒸発していくが,とけている食塩やホウ酸は蒸発しない。このため,水だけが減り,とけきれなくなったもの(食
塩やホウ酸)が出てくる。
特に,食塩のように水の温度を変えてもとける量がほとんど変わらないものはこの方法が適している。
□水よう液を冷やす
ホウ酸やミョウバンは水の温度が下がると,とける量も少なくなる。よって,ホウ酸やミョウバンの水よう液の温度を下げていくと,とけきれなくなったもの(ホウ酸やミョウバン)が出てくる。
この液をろ過することで,とり出すことができる。
ホウ酸やミョウバンは温度によってとける量が大きく変わるのでこの方法で取り出すことができる。
しかし,食塩のように水の温度を変えてもとける量がほとんど変わらないものは,この方法ではほとんどとりだすことはできない。
■見分ける方法
見た目が同じいくつか粉があり,それがどの粉なのかわからない場合,水へのとけかたの違いを利用して見分ける方法がある。例題を通して解説する。
□解答例
水を40℃に加熱して100mLずつ 3つのコップにわける。そのコップに食塩,ミョウバン,ホウ酸を少しずつ加えていき,よくかきまぜる。
最初にとけ残り(つぶ)が出たのがホウ酸,次ににとけ残りが出たのがミョウバン,最後までとけ残りが出ないのが食塩であることがわかる。
★グラフより,100mLの水にとける量は,ホウ酸,ミョウバン,食塩の順に多くなるため。
■ろ過
水にとけている物質ととけていない物質をこして分ける方法をろ過という。
ろ過により得られた液体をろ液という。
例えば,食塩水に砂が混じっている場合,ろ過することによって,砂がろ紙に残り分離することができる。
砂が水にとけない固体であることがポイントである!
ろ過の操作については,実験図をもとにした問題が頻出なので,手順をしっかり覚えよう!
□ろ過の操作
① 下図のようにろ紙を折り円すい形に広げ,ろ紙を水でぬらし,ろうとにぴったりくっつくようにとりつける。
② ろうとを右図のようにろうと台に置き,ろうとの先のとがって いる方をビーカーの内側のかべにつける。
③ 液体をガラス棒に伝わらせながら,ろ紙にゆっくり注ぐ。
■食塩と砂をわける方法
食塩(水にとけるもの)と砂(水にとけないもの)をわける場合は,「とけているものをとり出す」方法と「水よう液をろ過する」方法を利用してとり出すことができる。
ろ過の操作の手順は下記のようになる。
① 水に食塩と砂を加え,食塩をすべてとかす。
② ろ過をして砂をわける。
③ ろ液(食塩がとけている)をなべなどに入れて加熱し,水を蒸発させる。
④ なべに食塩だけが残りとり出せる。
------------------------------------------------------
特に適性検査で出題されているのが
とけたもの(ほとんどが食塩,ミョウバン,ホウ酸の3つ)のとり出し方に関する問題
見た目が同じいくつかの粉(とかす前で,ほとんどが食塩,ミョウバン,ホウ酸の3つ)を見わける方法に関する問題
食塩と砂をわける方法に関する問題
ろ過の操作に関する問題
です。
過去問題の例を紹介します。
------------------------------------------
■問題(2013年 香川県立高松北中学校)
物のとけ方について調べました。これに関して,次の問いに答えなさい。
1 次のグラフは水にとける食塩とホウ酸の量を調べた結果です。これについて,あとの(1),(2)の問いに答えなさい。
(1) 図のように,2つのビーカーに50℃の水を入れ,それぞれ食塩とホウ酸をとけるだけとかしました。しばらくたって水よう液の温度が下がると,片方の水よう液からは,とけていた物が出てきたことが観察できました。それは食塩とホウ酸のどちらですか。出てきた物と,そう考えた理由を書きなさい。
(2) グラフから,食塩とホウ酸のとけ方には同じところやちがうところがあることがわかります。そのうち,同じところを1つ書きなさい。
2 海水から食塩をつくることができます。たとえば,海水を砂浜に何度もまき,日光でかわかして塩がたくさんついた砂をつくり,その塩がついた砂から塩のつぶを取り出すことができます。
塩がついた砂から砂を取りのぞき,塩のつぶを取り出すには,どのような方法が考えられますか。その方法を1つ書きなさい。
------------------------------------------
□解答
1 (1)
右のグラフから,水の温度を上げると,ホウ酸はとける量が多くなっていますが,食塩はほとんど変わっていません。
よって,ホウ酸は水の温度が下がるほど,とける量も少なくなるので,とけきれなくなったホウ酸
がでてきます。一方,食塩は水の温度が下がっても,とける量がほとんど変わらないので,ほとんど変化はありません。
出てきた物 …… ホウ酸
理由 …… 食塩は温度が下がってもとける量はほとんど変わらないが,ホウ酸は温度が下がるほどとける量も少なくなるので,とけきれなくなったホウ酸が出てきたから。
1 (2)
左のグラフから,水の量が多くなると,ホウ酸,食塩ともにとける量が多くなっていることがわかります。
水の量が多くなると,とける量も多くなる。 ……(答え)
2
塩(水にとけるもの)と砂(水にとけないもの)をわける場合は,「とけているものをとり出す」方法と「水よう液をろ過する」方法を利用してとり出すことができます。
砂がついた塩に水を加えてよくかきまぜると,塩だけがとけた状態になります。
この液体を,ろ過すると,ろ紙上に砂が残り,ろ液は塩がとけた水よう液となります。
このろ液を加熱すると,水は蒸発していきますが,とけていた塩は蒸発しません。
このため水の量だけが減り,とけきれなくなった塩がでてきます。
砂がついた塩に水を加えて塩をとかし,ろ過する。ろ過した液の水分を蒸発させると塩のつぶを取り出すことができる。 ……(答え)
※他に,砂を取り除く方法としては,砂がついた塩に水を加えてよくかき混ぜます。そのあとしばらくすると,砂はつぶが大きく重いので次第に沈んでいきます。そして,うわずみ液を取れば,塩がとけた水溶液を取り出すことができます。あとの操作は上記と同じです。
------------------------------------
その他の問題(茨城県共通、石川県立金沢錦丘中学校、香川県立高松北中学校、京都府立園部高等学校附属中学校、岡山県立岡山大安寺中等教育学校、和歌山県立向陽中学校、埼玉県立伊奈学園中学校、宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校、広島県立広島中学校、徳島県共通、滋賀県共通)の詳しい解説とまとめ集は,「自宅でできる受験対策ショップワカルー!」
にて販売しております。
★こちらでは,頻出の「見た目が同じいくつかの粉(とかす前で,ほとんどが食塩,ミョウバン,ホウ酸の3つ)を見わける方法に関する問題」など参考書よりも詳しく解説しています。
2013年から2019年までに出題された問題はココに公開しています。
是非、挑戦してみてください!