殴られ、側頭部から出血する杏子。
「こンのッ…野郎ッ!!」
激昂した杏子はフェイトの胸ぐらを掴み、頭突きを食らわせた。
「あうッ!?」
「へっ、ざま見ろ!」
その隙に、杏子はフェイトから間合いを遠ざけようとするが、
「ライトニング・バインドッ!!」
フェイトは右の掌を大きく開き突き出した。
「何ッ!?」杏子の四肢を、金色の輪が拘束する。
「う、動けねえ!」
大の字の状態で完全に動きを封じられてしまった。
「バルディッシュ!」
【Charge Stand by.】
フェイトはバルディッシュの切っ先を杏子へと定め、魔力をチャージし始めた。
「チッ、えげつねえ事すンじゃねえか…!」
動けない杏子へ向けて、魔力を最大限にまでチャージした攻撃で狙い撃とうと言うのだ。
「死なないように、手加減はします」
「どうだか…! 信用出来ねえな!」
もがく杏子だったが、拘束はビクともしない。
「チッ、仕方無え。この技はあんま使いたかないんだが、死ぬよりゃマシか…!」
「何をする気?」
「ロッソッ! ファンタズマッ!!」
「!?」
杏子の魔力の特性は「幻惑」。杏子は5人の分身を生み出した。
「これは…!」
「だああああああああああッ!!」
それぞれ実体を持つ杏子の分身達はフェイトの元へと飛んで行き、
今まさにチャージした魔力を発射しようとしているバルディッシュ目掛け、槍を突き立てた。