①篠笛教室の選び方 ~横笛にもいくつか種類があること、知ってる?~ | 篠笛奏者:朱鷺たたら 笛吹き道中記

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これから笛をやってみたいな、
という方のために

教室の選び方について、お話します。

西洋楽器と違って、邦楽の世界というのは、
「まるで見当がつかない。お金がものすごくかかるのではないか?」
と、おっしゃる方が多いです。
いや~、わからんと言いながら、ようわかってはるじゃないですかー。


今回は笛を吹いてみたい、でも、どこで習えるん?
邦楽って敷居高そうで怖い・・という方々のために、
経験談も入れつつ、ちょこっとアドバイスできたらな、と思います。

さて、日本の横笛に心を奪われてしまいました。
さあ、どうしよう。
習いたいな~
ところが、日本の横笛には実は大きく3種類あるんですよ。

順不同で並べます。

1.竜笛 りゅうてき
2.能管  のうかん
3.篠笛  しのぶえ

竜笛は「雅楽gagaku」で使う横笛。
能管は「能楽nougaku」で使う横笛。(ドラマだと幽霊が出るときに、めっちゃ活躍している)
篠笛は各地のお囃子や歌舞伎の音楽、さらに最近のアニメやドラマ、ポップスなどでも聴かれるようになった横笛。


これ、なにが違うって、ジャンルが違うんです。
スポーツにたとえれば、バスケ、サッカー、バレーって感じ。
全部、球技なんだけど、ルールも違うし、使うボールもちょっとづつ違う。
選手は、みんな運動選手であるのは同じですけど、
今日はサッカーして、明日はバスケってことはない。
それぞれ専門性を備えていますよね。
それと同じで、横笛と一口にいっても、
それぞれ別の、違う世界なんですね。
記譜法も違うので、畑違いのジャンルの笛の譜面は、まさに暗号です。
読めません。


ですから、自分がなにを吹きたいのか、でまずジャンルを(楽器の種類)を選んでくださいね。

①の竜笛は雅楽で使われる横笛です。
雅楽はその昔、中国から伝わってきた音楽で、結婚式で流れるのを聴く機会があるかもしれません。
本格的には、宮内庁楽部で演奏されています。
結婚式で奏されるあれは、越天楽という曲で、
「黒田節」の元といわれ、黒田節をながーく引き延ばしたように、ゆっくり奏した感じの曲です。

合奏で、リズム楽器のほか、管楽器があと2種類、弦楽器もあります。
ちょっと聞くと、大陸っぽい、エキゾチックな響きで、
あまり日本的な感じはしないかも、です。
知っているメロディ吹きたいなーというのには、あまり適した笛ではありません。
古物商などで、古い笛が出るとしたら、大抵はこの竜笛です。
義経や敦盛といった、歴史的に名手として知られる人物の笛がいまも残されていますが、
すべてこの竜笛なんですよ。
また、神社や天理教でもよく奏されています。


②の能管は能楽囃子で使われる横笛です。
これはかなり特殊な響きを持っていて、
知っているメロディを吹きたいな~という方には
全く向いていません。
めちゃくちゃテクニックを持つ吹き手なら、吹けますが、
あえて、チャレンジする方以外は、馴染みのある曲吹きたいという人に、
お勧めする笛ではありません。

ドラマで幽霊が登場するシーンで聴くことができますが、
それより、能楽堂でぜひ本物を聴いてくださいませ。

ドレミの音階とは無縁の律を持ち、
しかも笛一管、一管ごとに律が微妙に違いますので、
能管持ち寄って合奏しよう、という訳にはいきません。
古典では、大小の鼓と太鼓、そして謡とともに合奏しており、
唯一の旋律楽器です。

③の篠笛が、知っているメロディを吹くのに適した横笛です。
とはいえ、古典的にはそうでもないので、
それは次回の項で詳しくお話ししますね。


さて、わたしは、全く笛のことを知らないのに、とにかく篠笛だー!(篠笛という楽器名だけは、突き止めていた)
絶対、篠笛吹きたいっ!!の一心で燃え上がっていたのですが、
さて、どこで習えるねん?
周りの人に聞こうにも、誰も知りません。
とにかく、電話帳開きました。
(ネット、なかったんでしょうか・・?覚えてません)

そこは住まいが京都だったこともあってか、「邦楽器博物館」なるものが近所にあることがわかり、早速電話して、原付バイクで行ってみましたよ。

個人宅でして、おじいちゃんが迎えてくださいました。
身動き取れないなかで、丁寧にいろいろな楽器を説明いただきましたが、
うすうす、
これ、篠笛ちゃうんちゃう・・?
と気づいていました。
おじいちゃんは、山田全一先生という雅楽の笛を作る職人さんで、
かなり高名な方だというのが、だんだんわかってきました。
雅楽の笛には管楽器が3種類あり、横笛である竜笛のほか、
ダブルリードの篳篥、吹いても吸っても鳴る、パイプオルガンのような笙があります。
それらすべてを作ってる方だったのです。

とても面白かったのですが、しかしわたしは篠笛に興味があったんですね。
で、伺ってみましたところ、
「日本の笛には習う順番がありましてな、竜笛、能管、最後に篠笛ですにゃ」
と言われました。
確か、そのように聞いた気がしていますが、ずいぶん前の話です。
篠笛は最後?
なんという・・と思いましたが、なにがなんでも吹きたいもんだから、
竜笛をせなしゃあない、という訳で、
ほな、竜笛はどこで習えるんでしょうか?と伺ってみたら、
わしが教えとる!
・・・・で、入門させていただいたわけです。

いまから思えば、学んだこと多く、とても有意義な時間でしたが、
篠笛が横笛のなかで最後に学ぶもの、というのは、違います。
ジャンルが違うのですから、べつに最初から篠笛したって全然、誰も困りませんのです。
わたしの聞き間違いだったのかなあ・・
いまとなってはもうそれはどうでもよく、雅楽をちょっとかじれたことは、
とてもいい経験になっています。

さて、これから篠笛したい!と思っているみなさん。
みなさんはどうぞ最初から篠笛を手にしてくださって構わないんですよ。
篠笛といっても、またこれがいくつか流れがございまして、
目指す流れを見間違うと、あれよあれよとまったく違う目的地に向かっていきます。
どこの門を叩くのか。
ここからがご用心ですよ。

次回、篠笛のなかのいくつかの流れ(流儀といってもいいかな)について
お話しましょう。