フォックスキャッチャー
鑑賞日: 2015年2月14日(土)
映画館: 渋谷シネマライズ
原題: Foxcatcher
製作年/国: 2014年/アメリカ
上映時間: 135分
監督: ベネット・ミラー
脚本: E・マックス・フライ、ダン・ファターマン
撮影: グレッグ・フレイザー
出演: スティーブ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロ、他
あらすじ: 金持ちのおじさんがレスリングアメリカ代表のスポンサーになります。
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好き度: ★★★★☆ 4.5/5.0点
みんな誰かに認められたい。
『フォックスキャッチャー』、ベネット・ミラー作品好きだし、アカデミーにも絡んでるし、なにより大好きなスティーヴ・カレルが激変してる(゚д゚)!ということで、楽しみにしてたんで、ノリノリで観に行ってきたらすげぇどーんよりした気持ちになりました、ともかく素晴らしかったです!(´Д`)
ベネット・ミラー作品は「孤独な男」というテーマで一貫してるけど、今回はその業の深さが行くとこまで行った感があって、めちゃくちゃ洗練されまくった映画だったな~という印象。劇盤も最小限で無音のシーンも多くて、あと画面の緊張感がとてつもないんですよね。
主演は金持ちのジョン(スティーヴ・カレル)と、
ジョンがスポンサーになってくれたアマレス選手のマーク(チャニング・テイタム)、そして、
とにかく大富豪のジョンを演じたスティーヴ・カレルがものすごく怖かったです。怖かったと同時にとにかくとてもかわいそうな人で見てられないくらいだったんですよ。僕この映画ずっとジョンに感情移入して観てたんですよね。印象的だったのはマーク・ラファロ側の家族に会いに行くけど、その団らんとした空気に耐え切れなくてすぐに部屋を出るというシーン。あそこにその後の事件もすべて集約されたんじゃないかなと思う。なんでも手に入ってきたけど、どんなにお金を出しても手に入れられないのが人の心で、だからこそ強く求め、求めれば求めるほど遠くにいってしまう。この底なし沼のようなどうしようもなさ、どんずまり感がとても悲しかったです。ジョンはどうすればよかったんだろう。どの時点で、どうすれば、このような結果にならなかったのだろう…。考えれば考えるほど、ジョンという人間の悲しみをジワジワと感じてくるそんな映画でした。人間、究極はやっぱり「誰かに認められたい」っていう欲求なんだなぁと思うんですよね。それを強く求め、でもそのすべを知る機会も、教わる機会も、そして味わうこともなく、ああいうことを最終的にやっちゃったジョン…。確かに最悪のことをしたし、悪人なんだけど、でも僕はこのジョンを突き放せないのです(´Д⊂ヽ
ここから抜け出せば、新しい何かが開けたかもしれない。でも、大金で作られたこの屋敷にここまでいちゃった、いれちゃったこと時点で、もう積んでたのかもしれないです。『ワイルドカード』のステイサムのように、そこから抜け出さなければ人間ダメなんですよねたぶん。お金と、そして母親という麻薬に囚われつづけた男の悲劇なんだと思います。それにしてもあの母親の圧がすごかったですね。
悲しい男なんですよ
シュルツ兄弟を演じた2人もとっても素晴らしかったですね。チャニング・テイタムのなんというか、もはや身体性なんですけど、あの絶妙なノソノソ感と不機嫌な顔。『ディス・イズ・ジ・エンド』の奴隷姿が嘘のようですよねw
そして兄を演じたマーク・ラファロもほんと素晴らしかった!このマーク・ラファロの包容力がほんとすごくて、でもその包容力こそがのちの悲劇に繋がっていくような気がしたり…まぁでもこのマーク・ラファロがこの映画の軸としてしっかりいることでチャニング・テイタムもスティーヴ・カレルも引き立つわけで、助演男優ノミネートも納得かなぁと思いました。
こんなことを言っちゃうと怒られそうですが、僕は長男だからなのか正直比べられるキツさとかはわからない…というか、チャニング・テイタムがどうしてここまで兄に対してコンプレックスを持ってるのか、イマイチわからなかったりしました。一緒にやっていけばええやん!とずっと思ってましたが、やはりそうはいかない…!!
お兄ちゃんが完璧すぎるんですよね。
ジョン・デュポンという霊に憑りつかれちゃった弟が、兄の犠牲によって解放されるという物語にも見えるな~と思いました。ジョンもまた、母親とお金という霊に憑りつかれてるんですよね。
銃器マニアでもあります
あと銃とか、戦車とか銃器マニアでもあるんですよね。ボンクラなんですよねこいつ。ただ金がめちゃくちゃある。なんでも手に入るヲタクですよ。それっておもしろいですか?ってことだと思うんですよね。なんでも手に入ってきたけど、人間の心だけは手に入らなかった、哀しき男の悲劇でした。
おわり
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