薄氷の殺人
鑑賞日: 2015年1月12日(月)
映画館: ヒューマントラストシネマ有楽町
原題: 白日烟火 Black Coal, Thin Ice
製作年/国: 2014年/中国・香港合作
上映時間: 106分
監督: ディアオ・イーナン
脚本: ディアオ・イーナン
出演: リャオ・ファン、グイ・ルンメイ、ワン・シュエピン、ワン・ジンチュン
あらすじ: 得体のしれない美女が男を魅了します。
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好き度: ★★★☆☆ 3.0/5.0点
村木と名美、in 中国
『薄氷の殺人』、ベルリンでグランプリ。信頼している評論家・ライター陣の評判も良かったので観てきましたよ~。すげぇ不思議な映画でした…!(゚Д゚)
この映画とにかく撮影と画面設計がすごくおもしろいし魅力的でした。舞台は中国の田舎町なのですが、積もってる真っ白な雪と、白い息、そして印象的に出てくる美しいネオン。異世界感が常に漂い、とても幻想的な画面になってました!とても艶めかしいんだけど、ものすごーくドライでもあるというとにかく不思議な画面でした。
ネオンっていつみてもいいよね。
あとこの映画、なにより不思議なのが編集なのですよね。とにかく映画のテンポというか編集のタイミングがものすごく独特。こっちが考える一歩も二歩も前で突然ブツッと切れたり、はたまた一歩二歩向こう側でブツりと切れたり、とにかくこの独特な映画のテンポが不思議なグルーヴになって画面から目が離せない緊張感がものすごくありました。
ギョっとした唐突な打ち合い。100点!
とにかく変だが、なんだこの映画気持ちいい~となった一番のつかみはこの突如始まる撃ちあいシーン。一番鮮烈に頭に残ってるかもしれません。なにげない日常と同じ平行線に暴力というものはたしかに存在して、唐突に人が死んじゃったりするじゃない。この撃ちあいとか、ほんとそれを象徴するような、日常が一気に映画的になった瞬間をじりじりと見せられましたね。フィックスでの長回しもすげぇ効いててすっげぇ好きなシーン。
みんな大好きグイ・ルンメイがとてつもなく美しいです…。
お話は、ひとりの男の切断された死体が、6つの都市にまたがる15カ所の石炭工場で次々と発見されるという事件が発生。刑事のジャンが捜査を担当するが、容疑者の兄弟が逮捕時に抵抗して射殺されてしまい(上の撃ちあいにて)、真相は闇の中に葬られてしまう。それから5年、警察を辞め、しがない警備員として暮らしていたジャンは、警察が5年前と似た手口の事件を追っていると知り、独自に調査を開始。被害者はいずれも若く美しいウー(グイ・ルンメイ)という未亡人と親密な関係にあり、ジャンもまたウーにひかれていく…というお話。
現代中国版フィルムノワールという感じで、お話はある種オーソドックスではあるんですが、上に書いた画面と編集で唯一無二のものにしっかりなってる感じがしました。物語の中心、ファムファタールにみんな大好きグイ・ルンメイが美しく美しくそして美しく佇んでおります…。この映画、観終わってまず思ったのが、「石井隆の村木と名美の物語みたいだ!」とまず率直に思いました。男を巡る業を背負った美しい女がいて、そこに触れ引っ張られる男、日常とシームレスに存在するバイオレンス、そしてネオン。まさに石井隆の世界観がそのまま中国の田舎町で繰り広げられてる感じがしました。そりゃ大好物ですよ(´Д`)
スケートリンクは印象的ですな~
ジャンは事件を追い、彼女に近づくことで核心に迫っていきますが、同時に彼女に惹かれていく。正直型どおりに進んでいくので、お話・サスペンス的なビックリは無いんですが、セリフに頼らず、丁寧に時に大胆に積み上げられていく男女の艶めかしく、しかしドライな駆け引きはとても緊張感がありました。ラストシーンなんかは、意外にもすごくすっきりとした晴れやかなラストだったし、エンドロールと入る同時に鳴り響くあの音楽…という流れのキレもとても好きでした。サスペンスとして推してますが、やはりどちらかというと悲恋の物語。原題にも納得です。
というわけで、薄氷の殺人、おもしろかったですよー!とにかく、不思議なテンポを持った映画なのでぜひ劇場でこのグルーヴを味わってください。
おわり
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