メビウス (カリコレ2014)
6月13日(金) 21:00~ 新宿シネマカリテ
好き度: ★★★★★ 5/5点
男という生き物のどうしようもなさ。
キム・ギドクの新作、カリコレ2014のクロージング作品として上映されるということで観てきましたがとてつもない映画でした!!! ネットでたまたま見たあらすじが壮絶すぎてものすごく気になっていたのですが、映倫に、国内上映不可能と診断を受け紆余曲折ありましたがなんとか通ったらしく、このタイミングで観れてとてもうれしかったです。
この映画、全編セリフがゼロなのですが序盤からこの映画いきなり異常事態!ざっと書くと…
<母親、息子のチンコを切り取る の巻>
夫の浮気を知った妻がとち狂い、寝てる夫のチンコを切り落とそうとするが気付かれ失敗!
→妻、オナニーしてる息子を発見!
→八つ当たり!息子のチンコをナイフで切除!
→夫と切り取ったチンコを取り合い揉みあった末…
→妻、切り取った息子のチンコを食べる
こっから物語がはじまります。まず、チンコを切り取る描写は今までいろいろ観てきましたがそのあと食べるっていうのはビックリしましたwとにかく、この妻の風貌がもう普通じゃなく、明らかにイッてる感じですっげぇ怖かったです。
怖すぎ!
<息子、チンコがなくて悩む の巻>
チンコがなくなった息子はろくに小便もできず、じょろじょろ靴にこぼれてしまい、この辺も笑っていいのかダメなのか独特のブラックなユーモアを入れてくる感じ、キム・ギドクだなぁという感じ。チンコがないことでいろいろと苛められたり、辱めにあったりで、もう散々(´・ω・`)
夫の愛人に会い、向こうからなぜか唐突に誘惑されたりするんですが、やりたくてもできない!('A`)
アメーバのフィルタリングに引っかかるので乳首は出せませ~ん(ざまあ!)
そっからなんやかんやあって町のヤンキーたち3人に会い、町のヤンキーたち3人はその愛人をレイプ!「おい、お前も男見せろよ!やれやれ」とSEXやるように言われますがチンコがないからできない('A`)
腰振ってその場をやりすごしますが、レイプ犯と間違えられ逮捕。父親が「いや、こいつチンコないからレイプとかできないっす」と言い(セリフはゼロだがわかる)、みんなの前でないチンコを出さなければならず、男としてのプライドはズタボロに('A`)
<親子で、新たなオナニー研究 の巻>
まず、言っちゃえば自分のせいで息子のチンコが切り取られちゃったわけで、その罪悪感から自分も去勢を決意!拳銃でチンコを撃とう…と思いきや、「いや~やっぱそんな勇気ないわ…」と病院に行って手術。この辺も微妙なユーモアですなw そこからどうしても性欲からは離れられないのが人間というもの。親子二人三脚の新たな性の探究の旅がはじまるのです。。
父親、息子のため「ノーチンコ オナニー」でネット検索
→石で腕や足をゴッシゴシこすり痛みの向こう側にオーガズムがくることを発見
→父親、試す
→射精に成功、性的快感を得る。
→とりあえず息子に情報提供
→息子、試す
→射精に成功、性的快感を得。
→オナニーきっかけで親子中が改善
と、まぁこの辺はほんとに笑っていいのかなんなのか、な、キム・ギドク的な笑いの入れ方でおもしろかったですw 痛みの向こう側にオーガズムがあるというのもおもしろかったのですが、そこのノーチンコオナニーがほんとにイタイ!石を思いっきり足にこすり付けて、痛いのを必死に我慢。血まみれになりながらも、オーガズムを求めて必死に足に石をこすりつける。このシーンがめちゃくちゃイタイんだけど、すげぇ滑稽なんですよね。自分の身体を傷つけてまでも快感をもとめてしまう、しかも父と子が。それがエスカレートして…
→ナイフを肩に刺しクチュクチュ動かすという自傷オナニーを発見
これを初めてやるシーンがほんと唐突で、劇場でも「ハッ」と声が漏れていました。ナイフを持ったあの愛人のもとにきた息子。「うん」とうなずき合うといきなり息子の肩にブシュっとナイフを突き刺す愛人。そのままおっぱいをまさぐったりキスしたりしながら、愛人は息子の肩にささったナイフをクチュクチュ動かし、息子は昇天!イッちゃいまして、イッた直後は気持ちいいんだけど、直後に激痛が襲う!(あたりまえ!w) 快感を得るためにここまでやっちゃうのか人間は、という滑稽さと、ナイフが明らかにチンコのメタファーで音もぶっちゃけセックスに寄せてるんですよね。ここの痛みの向こう側に快感があるという概念や、セックスの入れる・受け止めるの関係が逆転している感じも象徴的。そのあとも男の滑稽さがあらわになるシーンが満載で…
→さっきのレイプヤンキー出所
→愛人、レイプヤンキーを誘惑
→セックスに持ち込み、あらわになったチンコを切除!
→息子、切り取られたチンコを持って逃走
→追いかけっこ、からの揉みあいの末…
→チンコが車にひかれる
この辺の流れは爆笑でしたw あと、中村うさぎさんが、「レイプ犯はムショから出す前に全員去勢させるべき」って言っててそれを思い出しました。「その通り」ですよね。レイプ犯は全員チンコを切るべきですよ!!
<母親、帰ってくる の巻>
父親は、自分のチンコを息子に移植します(手術で)。この時何が大事か、勃起ですよね。手術後、先生たちに囲まれAVをみながら勃起テストをするというのもすげぇシュール&超気まずい描写でおもしろかったです。
でも、AV観ても勃起せず…('A`)
愛人のところに行ってフェラしてもらっても勃起せず…('A`)
しょぼーんと家に帰ると、母親が帰ってきてた!どこにいってたんだよ…。いきなり帰ってくるとぐーすかぐーすか眠りにつきます。
息子と父親が雑魚寝していると、そこに母親が割り込んできて息子と母親が一緒にベットに。母親は息子の頭をナデナデ、息子も「こいつ俺のチンコ切ったけど、まぁ悪くないかも」っていう顔をしていると、ビクン!!なんとなにしてもダメだったチンコが勃起!この時の3人の顔は爆笑です。息子は愛人のところに行ってたぶんセックス(編集点が不自然で明らかにセックスシーンはカットされたっぽい) その後帰ってくると、唐突に母親が息子を誘惑!まんざらでもない風の息子!いやダメだろと父親。勃起したチンコを手にした息子よりも、チンコのない父親など弱者ですから、母親はそっちにいっちゃうのです。息子をテコキで射精させる母親。おなじような描写が嘆きのピエタでもありましたな。そこから何度も近親相姦を重ねていた風(この辺も編集点が不自然。セックスシーンカットされてるのは間違いないと思われる)。男としてのプライド、嫉妬が爆発した父親は息子のチンコ=移植した自分のチンコを取り戻すべく、ナイフを手に息子に襲い掛かりますが…
もうごっちゃごちゃになった家族。銃により両親は死亡。息子は銃で自分のチンコを撃ちぬく。という感じで映画は終わりました。
<人間の性欲って気持ち悪い>
今回はキム・ギドクによるセックス論の映画だと思いました。生殖機能を失ってもなお性的快感を求め続ける男たちの滑稽さ、気持ち悪さ、ヤバさをバイオレンスの向こう側に快感があるんだということを提示することで、引いて見たときの滑稽さがものすごく露わになっているですよね~。
あと、チンコがなくなった男のしょうもなさ、どうしようもなさ、もう男という生物は機能していないんじゃないかという恐らくキム・ギドクの恐怖ですよね。ナイフを肩に刺すセックスはものすごく象徴的ですが、あの気持ち悪さ異常さ、引いて見たときのセックスというものそのものなんですよね。
本当に人間の性欲というものの気持ち悪さと、滑稽さ。男という生物の危うさと、罪悪感。このすべてをチンコに集約させて、異常なテンションで描き、キム・ギドクしかありえないだろうというバランスで撮った今作。キム・ギドクの集大成といっても良いと思います。
観た後に思い出したのはこの映画。
「メビウス」と裏表というか、姉妹作品と言ってもいいのでは

メビウス、今年の冬公開らしいので、ぜひ。
そうとうエグいというのは言っておきます。
でも笑えちゃうんですよ。ものすごくブラックなコメディ。
こんなのキム・ギドクしか撮らないよ。
ほんっと変な映画だな~!!
おわり。