東電の総合特別事業計画について | たまき雄一郎ブログ

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5月9日、東京電力の再生計画を定めた総合特別事業計画が、経済産業大臣に認定された。原子力損害賠償支援機構法に基づく計画であり、上場を維持したまま、東電に、電力の安定供給に加えて賠償及び各種債務の支払いを行わせようとする現在の支援スキームの下では、「ギリギリの合格点」というのが私の率直な評価だ。

ただ、除染費用や廃炉の費用も全部はカウントされておらず、ましてや、福島第2原発をどうするかは全く考慮されていない。また、大口顧客で約17%、家庭用で約10%の電力料金の値上げも折り込んでいるが、これらはあくまで債務超過を避けるための値上げであり、賠償のために必要資金をファイナンスするための値上げは“まだ”盛り込まれていない。その意味で、「ガラス細工」の計画であることは否定できない。

今回の計画は、ギリギリの合格点だとは思うが、私は、昨年来主張しているように、現在の支援スキームそのものに限界と問題があると思っている。早急に、原子力損害賠償支援機構法および原子力損害の賠償に関する法律をはじめ、関連法令の改正を急ぐべきだと考えている。現在のスキームを続ければ、少なくとも、次に掲げる3つの問題の発生が懸念される。

詳細は、これまでの記事に譲るが、まず、①株主や銀行について全く責任を問わないことで、市場のルール、ガバナンス機能の低下が懸念される。次に、②多額かつ不確定な債務を抱えたままでは、新規投資が困難になり新たなイノベーションが阻害される、最後に、とりわけ問題と考えるのは、③社員のモチベーションの低下である。賠償債務を支払うためだけに存在しているような会社では、社員のやる気は生まれない。

今後、法改正を行う際の最大のポイントは、原子力政策に対する国の責任を、もっと明確にすることだ。そうしなければ、東電処理の問題だけでなく、今後、原子力政策そのものを進めることが、事実上不可能になると思っている。原発の立地・建設には多額の税金をつぎ込んでいる以上、何かあったときの対応についても、国が一義的な責任を負うのが筋だと思う。

そもそも、一旦、原子力災害が発生すれば、これだけの経済的負担と大混乱に見舞われることが分かった以上、原子力発電事業に新たに参入する民間企業はないだろう。既存の電力会社さえ、「経済合理的な判断として」、原子力発電事業から撤退していくことさえ想定できる。

仮に、経済安全保障等の観点から、原子力発電事業を維持しようとするなら、国の関与と責任を一層明確にした法体系を用意すべきである。一義的な責任は、東電にあると言って、東電を悪者にし続けても、なんら本質的問題は解決しない。

現在の再稼働をめぐる混乱も、国の責任をあいまいにしながら進めてきた、これまでの原子力政策の結果だと考えている。

続けるなら責任をとる仕組みを作る。

責任をとる覚悟がないなら止める。

原子力の問題は、国が腹をくくらない限り、進むことも退くこともできない段階にまで来ていると思っている。