はじめに・・・


平成22年度 集中ケア学科



問題 14 大動脈バルーンパンピング(Intraaortic Balloon Pump;IABP)

について正しいものはどれか


a,IABPは左室前負荷の軽減と冠血流増加により心拍出量が増加する。


b,バルーンは心室拡張末期に膨らませることで、大動脈基部の拡張気圧が上昇し、冠血流が増加する。


c,絶対的禁忌には、動脈瘤の存在、大動脈解離、重篤な末梢血管閉塞、大動脈弁閉鎖不全がある。


d,下肢の虚血を生じやすいため、下肢の脈の触知、皮膚色、温度、動きを定期的に観察する。


e,突然の尿量減少、側腹部の疼痛、腸蠕動音の減少や消失は、バルーン留置による一時的な症状であるため変化を観察することが優先される。


1,a,b,c 2,a,b,e 3a,d,e 4,b,c,d 5,c,d,e



心原性ショック、重症心不全に使用される

大動脈バルーンパンピング=IABP、通称バルパン。

うちの病院はPCPSは無いけど、IABPはやっている。


患者を死の淵から復活させるための、ICU,CCUの三種の神器的な武器の一つ。重要だ。


MEが、ありえない位にいないうちの病院は、ほぼ看護師がずべて管理している。


解いてみよ~


a,×だね。後負荷の軽減が、心拍出量をあげてるんだね。バルーンが収縮した時だね。


b,これは○だね。役目の1つだ。


c,これも○でしょう。危ないことは一目瞭然


d,これも○だね。機械を大動脈にいれてるわけだから、その危険は高いね。


e,これは×でしょう・・・・対処しなかったら・・・・死んじゃうぞ。。。

虚血で臓器がいかれちゃうね。


よって・・・・4番かな。


調べてみよ~


IABP=補助循環カテーテル


心臓を補助して、痛んだ心臓を休ませるイメージ。

開心術後のポンプ失調、あるいは急性心筋梗塞(AMI)などによる重症心不全(フォレスター分類4群)に対して、薬物療法に加えて行われる。


効果は主に2つ

1.拡張期の冠状動脈潅流を増加させる効果(心筋虚血の改善)

2、左室の後負荷を軽減させる効果(昇圧効果)


キーワードは・・・・


・心電図、動脈圧波形、ディクロティックノッチ

・ダイアストリック・オーギュメンテンション

・シストリック・アンローディング



まず、IABPを理解する前に・・・・

基本的な心臓の解剖、生理学を知らないと理解できない。


IABPはソーセージのようなビニールの袋が、膨らんだり、閉じたりして心臓に影響を与えるのだけど、それがどんな意味をもつのか・・・・・どのタイミングで膨らんだり、閉じたりするのか・・・・・


心臓は収縮期と拡張期がある。(あたりまえだ・・・・)


では、心電図や動脈圧波形のどの部分が、収縮なのか、拡張なのか知らないといけない。


心電図の場合だと・・・・

R波からT波の終了までが、心臓の収縮期となる。

T波の終了からR波までが心臓の拡張期となる。


動脈圧波形だと・・・・


その前に、学生さんや、異動者さんは動脈圧波形を知らない人が結構多い。実際に見たことないことも多いと思う。


なので、教科書を見たほうがいいんだけど・・・言葉では説明しにくい。


まず、大きな山と、ちょこっとの山があるんだけど・・・・



動脈圧波形は、心電図よりほんのわずかに遅れて、収縮期波形と拡張期波形がでる。


最初の大きな山が、心臓の収縮期

その次のちょこっとしたなだらかな山が、心臓の拡張期。


でその収縮期から拡張期に変わる点を


重複切痕=Dicrotic notch=DN=ディクロティックノッチ



ICU看護師の語り~四年目のノート~


という。この点が実は重要なのだ。心電図だとT波の末端になる。


IABPは・・・・


心臓の拡張期(T波の末端)=DN点→バルーンを拡張(インフレート)させる

すると、DN点から大きな山ができる。


これを、ダイアストリック・オーグメンテンションという。


イメージで言うと・・・・大動脈内の血液をちょっとせきとめて、冠動脈への血流が増加し、心筋により多くの酸素が供給される。


そして・・・


心臓の収縮期の直前(Q派の直前)=大動脈圧波形の立ち上がり

→バルーンを収縮させる(ディフレート)


すると・・・立ち上がる前に、下側にUの字の谷が少しできる。

(言葉だと難しい・・・)

これを、シストリック・アンローディング という。


バルーンを収縮させると、大動脈内の圧が急激に下がって、勢いよく血液が流れる。

すると・・・

心仕事量が軽減し、心拍出量は増加し、ダメージを受けた心臓を回復させる。


まとめると・・・・


①ダイアストリック・オーギュメンテンション(バルーンの拡張)

・冠動脈への血流(酸素供給量)の増加

・脳・腎血流量の増加


②シストリック・アンローディング(バルーンの収縮)

・後負荷(アフターロード)の軽減

・心仕事量の軽減、心拍出量の増加

・心筋酸素消費量の低下



ICU看護師の語り~四年目のノート~


となって、心臓を助ける機械なわけだ。


適応は・・・

・心原性ショック

・重症心不全

・開心術後の低心拍出量症候群

・薬物治療抵抗性の狭心症

・PCI後の急性冠閉塞予防


などなど


禁忌

・大動脈弁閉鎖不全症

・大動脈瘤

・血液凝固異常

・高度な石灰化を伴う大動脈疾患および血管走行異常


合併症


挿入前

・動脈壁の損傷、解離、穿孔

・血栓・塞栓症

・骨盤空内出血


挿入後

・下肢の虚血

・感染

・穿刺部位の出血

・血小板減少

・バルーンの破裂、ヘリウムの塞栓

・抜去後に生ずる穿刺部位の仮性動脈瘤


など


よって・・・・

a,は・・・・なんかまぜこぜになってるね。


後負荷が軽減して、心拍出量が増加するんだね。

冠血流量の増加は、心筋の虚血を改善させるんだね。


よって×かな


bはダイアストリック・オーギュメンテンションだね。○


cは禁忌、これは○だね。


d,は 合併症だね。 ○


eはこれは・・・・塞栓症や虚血の症状だね。ほっとくと・・・腐っちゃうぞ・・・

すぐに報告だね  だから×


よって・・・・4番かな


IABPについては、またいずれ・・・・


重要な観察は、バルパンのタイミングがあってるかどうか・・・・

そして、合併症はないかの観察、安楽な体位など。

あとは機械のトラブル。そしてACTかな


またいつか・・・・気が向いた時にでも。。