日経ビジネスの特集記事(116) 次はiPS 富士フイルム 古森重隆、本業を培養する(2) | 藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ

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<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の
概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>



日経ビジネスの特集記事(116)

次はiPS
富士フイルム
古森重隆、本業を培養する

2015.07.20



テーマ

今週号の特集のテーマは

富士フイルムホールディングスの総帥、
古森重隆が最後の大勝負に打って出た。
見据えるのは、医薬業界の秩序を根底から覆すiPS 細胞。
100兆円市場の覇権を握るためなら、ノーベル賞学者とも
別の道を行く。
次々と新たな事業を創出し、本業喪失の苦境から復活した
富士フイルムは、競合ひしめく医薬・医療業界で新たな本業を
「培養」できるか。
先駆者の新たな挑戦は、日本企業にとって指針となる

 (『日経ビジネス』 2015.07.20 号 P.024)

ということです。






次はiPS<br />富士フイルム<br />古森重隆、本業を培養する

次はiPS
富士フイルム
古森重隆、本業を培養する

(『日経ビジネス』 2015.07.20 号 表紙)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20




今特集のスタートページ

今特集のスタートページ

(『日経ビジネス』 2015.07.20号 PP.024-025)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20







第1回は、
「PROLOGUE 勝算は見えている
 古森重隆、最後の大勝負」
「PART.1 iPS創薬の覇権を握れ
 京大を抜き去り 狙う100兆円市場」 
を取り上げました。


第2回は、
「PART.2 異分野攻略の決め手
 革新生み出すフィルム進化論」 
を取り上げます。


最終回は、
「PART.3 中嶋社長が見せた意地
 古森が去っても大丈夫なのか」
をご紹介します。




今特集のキーワードは次の5つです。

キーワード

 iPS細胞 
 再生医療 
 革新 
 異分野攻略 
 古森以後 


今週号の編集長インタビューは、特集のPART.4
「次に次まで読む 6割の勝算で十分」のタイトルで、
古森重隆富士フイルムホールディングス会長兼
CEO(最高経営責任者)でした。


インタビューの詳細は下記をご覧ください。

日経ビジネスのインタビュー(180)
次の次まで読む 6割の勝算で十分





では、本題に入りましょう!


 PART.2 異分野攻略の決め手 
 革新生み出すフィルム進化論 

このパートでは、富士フイルムがなぜ、異業種に参入し、
確固たる地位を築くことができるのか、を中心にお伝え
していきます。


富士フイルムは、自社の基礎技術とコア技術に絶対の
自信があることが、窺えます。


iPS細胞が世界的に注目されていますが、安全性が高く、
大量に作製する技術はまだ確立されていません。


非常に競争の激しい分野です。


 iPS細胞の作製に必要な作業の大半は、

 まだ自動化されていない。

 技術者の経験や勘を頼りに手作業で

 進めるケースが多い。

 例えば、人から取り出した細胞への

 遺伝子注入、低品質細胞の除去、

 培養液やシャーレなどの取り換え、

 細胞の数を100万倍以上に増やす…。

 複雑な工程を経る中で、どうしても品質

 にばらつきが生まれてしまう。

 問題を解決するためのブレークスルーを、

 写真フィルム技術に求めたのだ。
 

  (P.035)



写真フィルム技術が多くの製品を生み出した<br />・事業展開とベースになった写真技術

写真フィルム技術が多くの製品を生み出した
・事業展開とベースになった写真技術

(『日経ビジネス』 2015.07.20号 PP.034-035)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20



具体的に、富士フイルムは自社独自のどのような
技術を応用しようとしているのでしょうか?


 提案したのが、機械を使って、ナノレベルの

 サイズの粒子を均一に混ぜ合わせる技術、

 どんな環境でも温度を一定に保つ技術、

 微細物質の状態を分析する技術だ。

 いずれも、写真フィルムを作るのに欠かせない。

 これらの技術を組み合わせれば、工程のある

 部分をロボットでの作業に代替し、細胞の品質

 や生産性を上げられるはずだ。
 

  (P.035)


もう少し、写真フィルムの生産技術について解説を
読んでみましょう。


 写真フィルムの生産技術の根幹は、薄い層を

 正確に重ね合わせることにある。

 フィルムの厚みは髪の毛とほぼ同じ。

 表面部分は、20マイクロメートル(マイクロは

 100万分の1)の厚みの中に、細かな粒子を

 ちりばめた約20の層が積み重なっている。

 各層は、光に反応する、色あせを防ぐなど、

 役割に応じた機能がある。
 

  (P.035)


写真フィルムの生産技術にはナノ技術がぎっしり
詰まっているのですね。


20年くらい前、写真撮影に凝ったことがありました。
富士フイルムやコダックのフィルム(ネガとポジ)を
よく使ったものです。

「超微粒子」という言葉が流行ったのもその頃だった
気がします。


当時、世界の写真フィルム業界は、イーストマン・
コダック(コダック)、富士フイルム、独アグファ、
コニカ(小西六)の4社の寡占状態でした。


ところが、その後、写真フィルム業界で残ったのは
富士フイルム1社だけでした。


 歴史をひもとくと、写真フィルムは富士フイルムの

 ほか、米イーストマン・コダックと独アグファ、

 日本のコニカミノルタと、世界で4社しか作らない

 寡占市場だった。

 汎用的な機械が使えないため、富士フイルムは

 自前で製造設備を設計・開発したほどだ。

 だが、デジタルカメラへの移行が急速に進み、

 2000年をピークに写真フィルムの市場規模が激減。

 コニカミノルタは写真フィルムから撤退し、複合機

 など別の事業に力を入れた。

 2012年には、業界の盟主だったコダックが経営破綻

 した。

 その中で、富士フイルムだけが、写真フィルムの生産

 技術にこだわり続けた。

 蓄積した技術を徹底的に洗い出し、全く違う分野にでも

 使えるよう、磨き上げた上で、整理した。

 そこには、将来必ず役に立つ、ほかにはない技術に

 なるはずだという技術者らの確信と、経営者の理解が

 あった。
 

  (P.036)


次のケースは、女性には馴染み深い話でしょう。
「アスタリフト」シリーズという化粧品です。


最初は、富士フイルムが化粧品(?)と驚きの反応が
強かったように思います。


ですが、その技術を知ると、納得します。
ちゃんと写真フィルムの生産技術が応用されているの
です。


 化粧品も、写真フィルムから生まれた技術が

 ふんだんに盛り込まれている。

 写真フィルムの素材として使っていたコラーゲンと、

 微細な粒子を配合する写真フィルム由来の技術

 を組み合わせ、他の化粧品メーカーにはできない

 スキンケア製品を数々開発。売り上げを伸ばした。

 スキンケア製品の開発メンバーの中核にいる一人が、

 医薬品・ヘルスケア研究所の田代朋子。

 以前は写真印刷用のインクジェットペーパーという

 化粧品とは全くの異分野で、酸化防止剤に取り組ん

 でいた研究者だ。
 

  (P.036)


医療品・ヘルスケア研究所の田代 朋子 氏

医療品・ヘルスケア研究所の田代 朋子 氏

(『日経ビジネス』 2015.07.20号 P.036)
「日経ビジネスDigital」 2015.07.20



どんな独自技術が応用されていると思いますか?
アスタキサンチンです。よく耳にしますね。


 酸化防止は、写真プリントの「色あせ」を防ぐ技術。

 これが、化粧品を開発するうえで、重要な技術へ

 と生まれ変わった。酸化によって老化する仕組みは、

 人の肌と写真でよく似ているからだ。


 エビやカニなどに含まれる色素成分の「アスタキ

 サンチン」には、老化の原因になる物質を除去する

 機能があることは知られていた。

 だが、スキンケア製品には使われてこなかった。

 水に溶けにくいため、肌に浸透しづらかったのだ。

 そこで、田代ら研究チームは写真フィルムで使われ

 ていた技術を活用。

 アスタキサンチン粒子を非常に細かく加工し、

 分散させ、水に溶けるようにした。

 この技術で作り出した化粧品を、「アスタリフト」

 シリーズとして売り出した。
 

  (P.036)


「同ブランドの売り上げは年100億円を超えた」(P.037)
そうです。


医療分野への進出で欠かせないのは、デジタルX線
システムでしょう。


 富士フイルムは世界で初めてデジタルX線システム

 を発売し、医療機器事業を強化。

 年間4000億円規模の、ヘルスケア事業の軸として

 育っている。
 

  (P.037)


この分野で更に強くなるため、米医療IT企業を買収
しました。


 5月には米医療IT企業のテラメディカを買収。

 病院内の医療画像や診療情報を一元管理

 できるシステムの強化に乗り出した。

 「コア技術は地下水脈という形で生き残っており、

 事業に合わせてそれを引き出し、組み合わせ

 られる」。専務の戸田(雄三)は言う。

 

  (P.037)



独自技術を安易に捨ててはいけない、という事実は
富士フイルムが証明しています。


 市場がなくなったからといって簡単には写真フィルム

 を捨てず、将来必ず花が開く技術の集積であること

 を信じ、育て上げてきた。そうして多くの製品・事業へ

 と姿を変えていった。
 

  (P.037)







ポイント

基礎技術とコア技術を応用する

独自性の強い技術を持ち、優位性があると確信できる
ものであるならば、時間をかけ磨き上げていくと、
際立った差別化に結実することが分かります。


富士フイルムの独自技術である、基礎技術とコア技術
を組み合わせることによって、他社製品とは全く異なる
性質の製品を生産し、市場を創出することができること
を証明しています。





今特集のキーワードを確認しておきましょう。

キーワード

 iPS細胞 
 再生医療 
 革新 
 異分野攻略 
 古森以後 





最終回は、
「PART.3 中嶋社長が見せた意地
 古森が去っても大丈夫なのか」
をお伝えします。


ご期待下さい!





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