人類の滅亡、もしくは文明の消滅の時期が近づいているのだろうか?
この宇宙に地球という惑星が生まれたのは約46億年前とされている。
さまざまな変遷をへて、人類の最初の祖先であるサヘラントロプス=チャデンシスという霊長類がアフリカ中部に出現したのは、600万から700万年前だという。
46億年に比べると、人類の歩んできた歴史はあまりにも短い。
700万年より以前の地球には、約45億9300万年にわたって、人そのものがいなかったことになる。
人のいる地球より、人のいない地球のほうが、地球本来の姿といえるわけだ。
地球を、よく磨かれた銅球としようか。
神は銅球を愛して、長いあいだ日々の手入れを忘れなかった。
ところが、あるとき、どうしてもでかけなければならない用事ができて、しばらくのあいだ家をあけてしまった。
手入れされなくなった銅球には、やがて緑青がわいて、全体に広がっていった。
人類という名の緑青は、いまや地球という名の銅球をなめつくさんばかりに広がって、本来の姿をすっかり損なわせている。
いま、地球には、神の目が届いていない。
人はなぜ、人を殺すのだろうか。
たとえば家のなかにペットの犬が複数頭いて、仲間を殺して喜ぶやつがでてきたら、飼い主はどんな気持ちになるだろう。
いくらしつけても、そんな凶暴性を抑えられない犬は、どうすればいいだろう。
どの犬も等しくえさを与えられているはずなのに、自分の分だけでは満足できなくて、力にまかせて弱い仲間からひたすら奪い取っては食い散らかして、決して反省しようとはしない犬は、どうすればいいだろう。
ほら、ドアの向こうに気配がする。
ご主人様が、家に帰ってきたみたいだ。