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 十月二十九日、マトゥサラはトルトサに行った。そこは港町であった。そして彼女は船でクマエに向かった。

 その翌日、十月三十日に、クマエに着いた。彼女は珍しい草を見つけてつまみ上げると、それは水草であった。そこは水面を水草でびっしりと覆われた池であった。その時、魚か両生類のような動物が、水草の間から顔を出していた。マトゥサラはその奇妙な生き物に手を伸ばした。するとその生き物は水面の下に引っ込んで、そのすぐ後に、少し離れた場所から顔を出した。マトゥサラはまたその生き物に手を伸ばした。するとその生き物はまた引っ込んで、そのすぐ近くから再び顔を出した。それらの動作を何回が繰り返した。その時、バトラーチェが腕を長く伸ばして、水の中に腕を突っ込んだ。するとその奇妙な生き物が、大勢で、一斉に顔を出した。

 マトゥサラは洞窟の前に来た。その洞窟の入り口には戸があった。彼女が戸をノックすると、一人の少女が出て来た。マトゥサラは驚いて「シビュラさん! 永遠の若さを持ってるそうですね! あなたは私より二十一歳年上だけど、私と同じ歳に見えるわ!」と言った。するとその少女は「私はオルフネ。シビュラの女中です。どうぞ入って」と言った。そしてマトゥサラはオルフネの後に続いた。それから、一人の老婆が出て来た。その老婆が、予言者シビュラであった。マトゥサラは驚いて「シビュラさん! あなたは永遠の命を持っているそうね! どうしてそんなに老けたのかしら! 私より二十一歳だけ年上なんでしょう!」と言った。シビュラは「その通りじゃ。私は永遠の命を持っておる。しかし永遠の若さは持ってないんじゃ。私は死なぬ。ティトノスやストラルドブラグの様に、老いるのじゃ。しかし汝は永遠の若さは持つが、永遠の命を持っていない。エンデュミオンやガニュメデスの様に。汝は殺されぬ限り、行き続けるであろう。しかし神々は永遠の若さと命を両方持っておる」と言った。マトゥサラは「今の世界が水で滅びるなら、次の世界は何で滅びるのかしら」と尋ねた。シビュラは「次の世界は、禁じられた第三の火で滅びるだろう。その火はギガントマキアで使われたのじゃ。その火は体ごと、魂までも滅ぼすのじゃ。そして生き残った者は末代まで呪われる。神々はその火の使い方を封印したが、終わりの日に人々はその使い方を知るであろう。だが聞け。洪水の日は迫っている。千六百五十七年第二の月第十七日、エフライムは噴き出して、マナセは開かれる。ユダは四十日四十夜ヨセフに戦いを挑む。彼らの傷は百五十日で癒える。そよしヨセフはレビの下に置かれ、ユダはレビの上に置かれ、二人の間に平和が訪れる」と言った。マトゥサラは「エフライムは地球、マナセは月。だけどユダが太陽だとは聞いた事が無いわ。レビは太陽。そして多分、ダンが火星でベニヤミンが金星ね。伝説では、土星より遠い惑星が三つあるわ。だけどそれでも惑星の数が足りないわ。見えない惑星がもう一つあるのかしら。それは対地球かしら」と言った。シビュラは「ユダ は、地球によく似た星じゃ。それは地球より、ほんの少しだけ大きくて、衛星を持たず、常に地球から見て太陽の向こう側にある、対地球じゃ」と言った。マトゥサラは「ニコラウスが言った様に、太陽が中心ね。だけどそのユダという星は実在するのかしら」と言った。シビュラは「私もそれは知らぬ。古の書物に書かれておったのじゃ」と言った。マトゥサラは「オリハルコンってどうやって作るのかしら。それが書かれた者はあるの」と言った。するとシビュラは、一枚の粘土板を持って来た。それは、無数の破片を、元通りにくっつけてあった。マトゥサラはその粘土板を読み始めた。バトラーチェが「月に代わってお仕置きよとでも書いてるんだろう」と言った。マトゥサラは「そんなことは書いてないわ。オン・ビハーフ・オヴ・ザ・ムーン・アイ・ウィル・ファイト・エヴィル・アンド・ミーンズ・ユーと書いてるわ。分かるかしら」と言った。するとシビュラが「英語で同じ事言いなさんな」と言った。マトゥサラきゃははと笑った後、その粘土板に書かれている事を読み上げた。

 「クロムを鉄に加えて、そして・・・」

 そして彼女は吹き出した。そして「これってステンレスの作り方じゃないの! 昔の人がどうやって知ったのかしら!」と叫んだ。そしてまた彼女は「シビュラさん。火星と木星の間を回るメティデスという惑星が七月三十日に爆発したのよ。もう私たちは引き返せないわ。私は洪水がどのようにして起こるかを知りたいわ」と言った。するとシビュラは「これが予言の書じゃ」と言って、半分焼け焦げた本を、マトゥサラに渡した。そしてマトゥサラはその本を読み始めた。