~ アメリカとイランの協力が進む一方でイスラエルの孤立が浮き彫りに~


イランと諸大国が7月14日に合意した、イランの核開発をめぐる包括的な協定は歴史的な意義を持っている。なぜ歴史的なのだろうか。また、この合意によって中東を中心とする国際情勢は、どう変わるのだろうか。


本論に入る前に、合意の内容に簡単に触れておきたい。まずイランは保有する濃縮ウランの量の削減、ウラン濃縮活動の制限、核関連施設への厳しい査察の受け入れなどを承諾した。こうした条件が10年以上にわたってイランに科される。これらが履行されれば、短期間でイランが秘密裏に核兵器を製造することはできなくなる。逆に大国側はイランにこれまで科してきたさまざまな経済制裁を解除する。


イランと交渉した諸大国は6カ国である。国際連合の安保理の常任理事国の5カ国とドイツである。アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の常任理事国5カ国を英語でパーマネント・メンバーズとかパーマネント・ファイブとか呼ぶので、パーマネントPermanentの頭文字をとってP5として言及される。それにドイツを加えてP5+1として6カ国が言及されているわけである。ドイツが、この交渉に参加したのは、経済的な関係ばかりでなく歴史的にイランから多くの留学生を受け入れるなど、深いつながりを維持してきたからである。長年イランと深い外交・経済関係を維持してきた日本が参加していないのは残念である。日本の外交関係者に考慮してほしい点である。


>>次回 につづく


月刊『公明』2015年11月号46~51ページ掲載の論考です。


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