シリア前回 のつづき)


春に始まったシリアでの大規模な抗議行動は冬に入っても終わる気配がない。厳しい弾圧にもかかわらず、抗議運動はシリア各地に広がっている。これほど長期にわたり抗議活動が続き、しかも、これほど各地に抗議活動が広がったという事実に、民衆の政権に対して抱く不満の強さが表れている。


政権側は2011年末までの複数政党制の選挙を約束するなど譲歩の姿勢を見せた。だが民衆側は弾圧による犠牲の大きさもあって、現政権の退陣という要求を引き下げようとはしていない。そもそも、アサド政権が信用できるとは思っていない。


同時に、これほど長い、これほど広範な抗議行動にもかかわらず、政権の倒れる気配はない。軍や治安当局に大規模な反乱の兆候はない。弾圧に主として動員されているのは、アラウィー派だけで構成される陸軍の第4師団などであると報道されている。軍の動向に政権が神経質になっているのが推測される。一方では政権には抗議活動を押さえ込む力はなく、他方では大衆には政権を倒す力はない。バース党政権と民衆の力いっぱいの綱引きが、しばらくは続きそうである。


>>次回 につづく


※『石油・天然ガスレビュー』2012年1月号に掲載されたものです。


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