福井県知事や県議会、おおい町は「ストレステストは机上の計算にすぎない」「福島原発事故を反映した新たな安全基準が必要」と、早期の原発再稼働に執念を燃やす、保安院や枝野経産相を苛立たせている。

 そして、枝野経産相は、原発の安全などそっちのけで、「最終的に動かすという判断は政治の責任でやる」と、完全に原子力村の一員に成り下がってしまい、地元の合意がなくても大飯原発の再稼働を力技でゴリ押しする構えのようだ。

 福井新聞より
【関西電力大飯原発3、4号機をめぐり、経済産業省原子力安全・保安院がストレステスト(耐性評価)の
1次評価を「妥当」とする審査書の素案を提示。
23日には国際原子力機関(IAEA)による検証作業が始まったことから、再稼働をにらんだ今後の手続きが
焦点となってきた。

枝野幸男経済産業相は2月上旬にも審査結果を地元に説明する見通しを示し、地方議会の日程を念頭に置いて地元了承を得ていく考えも示唆。

2月から3月にかけ一つの“ヤマ場”となる可能性もある。ただ、県や県会、おおい町は東京電力福島第1原発事故の知見を反映した新たな安全基準が必要との姿勢。政府の想定通りに運ぶのは厳しい情勢だ。

 保安院は大飯3、4号機の1次評価結果を「妥当」と判断。素案を18日の専門家による意見聴取会に示した。審議は継続され、2月8日に再び意見聴取会が開かれる。

 国は耐性評価を再稼働の前提と位置付けるが、県は「ストレステストは机上の計算にすぎない」(西川知事)との姿勢を崩さず、あくまでも暫定的な安全基準の明示を国に求めている。時岡忍おおい町長も県と歩調を合わせている。

 ただ、両者とも再稼働の問題とエネルギー政策見直しは切り離して判断する考えで、県の求めに国がどう応じるかが鍵とみられている。

  ■  ■  ■

 再稼働に向け枝野経産相はこれまで、安全確保の確認が大前提としつつも「地方政治のカレンダーが頭の片隅にあることは否定しない」と説明。2~3月の県会、おおい町会で同意を得たいとの期待感を示してきた。

 1月末まで続くIAEAの検証では、26日の現地視察も踏まえ一定の見解、助言が示されるもよう。一方で、保安院の審査に続いて原子力安全委員会のダブルチェックを受け、結果が出た後か、または並行して福井県や地元おおい町に説明する―との日程を国は思い描いているようだ。

 定例県会は2月24日に開会予定。おおい町会は3月1日に始まる。県会最大会派の自民党県政会は知事の姿勢を支持。ある幹部は「安全基準を示さない限り再稼働は認められない」と強調する。ただ「ストレステストがどういうものか現場を見て、説明を受ける必要はある」とし、2月9日に会派で大飯原発を視察すると決めている。

  ■  ■  ■

 原子力安全規制の再編により4月には、原子力安全庁が発足して保安院や原子力安全委は吸収される。地震や津波に関する最新の知見を技術基準に取り入れて既存原発への適合を義務付ける「バックフィット」制度の導入なども決まっている。

 このため「現行体制下の年度内判断は難しいのでは」との指摘もある。県は新たな安全規制をおおむね評価するものの、安全庁発足の前後で再稼働判断のプロセスや責任の所在が変わるのか、はっきりしないからだ。

 深野弘行保安院長は「残された期間、全力を挙げて課題に取り組む」と訴え、枝野経産相も「最終的に動かすという判断は政治の責任でやる」と強調するが、「スケジュールありき」とも批判される国の思惑通りに進むかは不透明だ。】

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