フランス代表選手にインタビューしてみた | 欧州野球狂の詩

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日本生まれイギリス育ちの野球マニアが、第2の故郷ヨーロッパの野球や自分の好きな音楽などについて、ざっくばらんな口調で熱く語ります♪

 昨日、寒い中でも大いに盛り上がった、野球狂の会によるチャリティーマッチ。普段は別々の舞台で戦う選手たちが、同じフィールドに一堂に会して、白球を追いかけた一日は、参加した誰にとっても、かけがえのないものになったはずです。


 その試合終了後、一部メンバーで行った食事会の場で、自分と同じテーブルに座っていた、フェリックス・ブラウン、フレデリック・アンヴィ、エロア・セクレップの3人に、この日の試合の感想を含めた即席インタビューをしてきました。パリ第7大学で日本語を専攻しているエロアは、日常会話レベルの日本語も喋れるものの、インタビュー中は完全に英語のみ。ヨーロッパの次代を担う、3人の若武者たちの率直な思いをお伝えします。


―:今日の試合は本当にお疲れ様。実際にプレーしてみてどうだった?

フェリックス:とても楽しかったよ。参加者は皆、お互いのことをよく理解していて、非常にいい雰囲気の中でプレーできた。風も強かったし寒かったけど、本当に有意義な時間だった。

フレッド・エロア:僕らも同意見だ。


―:日本の野球ファンは、ヨーロッパの人々がどういうきっかけで野球を始めたのかということに、非常に興味を持っている。君たちが野球を始めた理由というのは、なんだったのかな?

エロア:僕はずっと、人とは違うスポーツをやりたいと思っていた。フランスには、サッカーやラグビーや柔道をやっている人は大勢いるけど、野球はあまり多くない。だからやってみようと思ったんだ。

フレッド:自分の友達が、以前アメリカに行った時に野球に出会った。それで、帰国した後に僕にも教えてくれた。実際にやってみたら、自分でもハマって、今でも続けているってわけさ。

フェリックス:もともとは違うスポーツ(どの種目かは忘れてしまいました)をやっていたんだけど、飽きを感じていたんだ。その時に、たまたま野球に出会った。やってみたら非常に面白くて、虜になっちゃったんだよね。


―:3人とも、始めたきっかけは全く違うんだね。

エロア:その通り。今、僕らは同じ国の代表として、同じユニフォームを着ているけれど、出身地は3人とも全然違うしね。フェリックスは、本国ではなくカリブ出身だし。


―:サンマルタンだよね?

フェリックス:そう。俺の出身地はもちろんフランス領だから、基本的にはフランス文化が中心なんだけど、地理的な関係でアメリカの影響も強いんだ。色々な文化が混ざりあっているんだよ。


―:今回、トライアウトや練習に参加してみて、日本とフランスの野球の違いについてどう思った?

フェリックス:日本人にとって、野球は生活の一部なんだということがよく分かった。それは非常に印象的な点だったね。フランス人にとってはそうじゃないから。

エロア:そうだね。もちろん、フランス人も「野球がアメリカのスポーツだ」ということは知っている。ただ、それ以上のことは知らない人も多いんだ。今、僕は大学で「日本とフランスの文化の違い」について研究しているんだけど、担当教授には「君はせっかく野球をプレーしているんだから、野球を題材にしてみたらどうだ」と言われたよ。


―:さて、来年はWBC予選という一大イベントがあるね。多分、君たちも代表には呼ばれるだろう。予選といえど、非常に強い国が集まっているので、フランスはおそらくチャレンジャーという立場になると思うけど、フランスはいったいどんな戦いができると思う?

エロア:うーん。代表のことよりも、まずは自分のことをしっかりやりたいという意識の方が強いかな。1人の選手としてしっかりとプレーして、結果を出すこと。そうすれば、自分も代表に呼んでもらえるだろうし、いいピッチングもできると思う。

フレッド:まだだいぶ先のことだし、メンバーについてもアメリカ人選手が入るだろうから、まだどうなるかは具体的にイメージはできないな。ただ、もちろん出られればいいプレーはしたいと思っているよ。

フェリックス:俺が思うに、まず来年のカギを握るのはヨーロッパ選手権だね。そこでいい結果を残せれば、WBC予選にもいいモチベーションを保ったまま臨めるだろう。


―:なるほど。最後に個人的な考えを述べさせてもらうと、今回のWBC予選は、フランスをはじめヨーロッパ球界全体にとっての、大きなチャンスだと思っている。なぜなら、日本人の多くはまだ、ヨーロッパの野球シーンで何が起こっているのか知らないからね。ただ、今回の予選でいい結果を残せれば…。

エロア:皆に僕たちのことを知ってもらえる。


―:そう。そして、フランスにもその可能性はあると思うよ。なぜなら、現時点でも君たちのような、若く有望な才能が揃っているわけだからね。2013年の本大会で、君たちがプレーしているところを見られるのを、楽しみにしてるよ。今日は本当にありがとう。


 今回食事を共にした3人のうち、エロアはまだ20歳。フレッドとフェリックスも22歳で、いずれも俺より年下の選手たちです。食事中も、エロアとフレッドは常に笑顔を絶やさない、いたって普通の明るい青年でした。一方で、インタビュー中は皆真剣なまなざしで、真摯に自分の質問に答えてくれたのも、非常に印象に残っています。話を聞いたのはわずか10分かそこらでしたが、国家代表選手としての自覚や誇り、野球というスポーツに対する真剣さが、肌で感じられる貴重な時間になりました。


 なお、フレッドとフェリックスについては、実は非常にビッグなニュースがあるのですが、事情により現段階で公にすることはできません。公開できる時期が来るまで、もうしばらくお待ちいただければと思います。何はともあれ、今回3人に直接話を聞けたことは、本当に大きな収穫でした。これからも、彼らにはヨーロッパの野球シーンを盛り上げる期待の若手として、大いに頑張って欲しいですね。いつまでも応援しています。