執念と謎掛けの名勝負。。第64期王将戦7番勝負/第7局「郷田九段完勝、王将位奪取!」
3連覇を目指す渡辺明王将に
無頼な剣豪・郷田真隆九段が挑戦する
第64期王将戦7番勝負。
ここまで6局を消化し
白熱の展開で互いに譲らず3勝3敗のイーブン。
フルセットの決着戦となった第7局が、昨日より
青森県弘前市「弘前市民会館」にて開幕。。
振り駒で決まる
最終戦で先手を得たのは、郷田九段。
その初手は飛車先の歩を突く▲2六歩から。。
2手目△8四歩。
上図での持ち駒
▲郷田九段: なし
△渡辺王将: なし
対する渡辺王将も2手目に
飛車先を突く△8四歩と返して対局はスタート。。
「相掛かり」を受けて立つ意志を示した後手に対し
先手の意向が明らかとなる次の3手目。。
3手目▲2五歩。
上図での持ち駒
▲郷田九段: なし
△渡辺王将: なし
前局/第6局でも
同じ手番で同じ出だしとなりましたが
その時の郷田九段は3手目▲7六歩として
「相掛かり」を拒み「角換わり」へと進行しました。。
しかし、タイトルの懸かった大一番
本局では3手目にそのまま飛車先の歩を突き出し
「相掛かり」での勝負を明示。。
郷田九段が飛車先を決めたのをみて
渡辺王将も4手目に飛車先の歩を突き越します。。
(4手目△8五歩)
7手目▲2四歩。
上図での持ち駒
▲郷田九段: なし
△渡辺王将: なし
双方、丸い角頭を金で受けてから
まずは定跡通りに郷田九段から飛車先の歩を
切りに出ました。。
以下、△同歩~▲同飛~△2三歩に
下図11手目▲2八飛車と進行。。
11手目▲2八飛。
上図での持ち駒
▲郷田九段: 歩
△渡辺王将: なし
一歩を手にした郷田九段は
飛車を元居た2八の地点まで引き戻すと。。
17手目▲2七銀。
上図での持ち駒
▲郷田九段: 歩
△渡辺王将: なし
右の銀を飛車の頭上に乗せて
ここ数年、「相掛かり」の主流となっている
「引き飛車棒銀」に構えました。
この手をみて
渡辺王将は次に自らの飛車先で
歩を突き合わせます(18手目△8六歩)。。
22手目△8四飛。
上図での持ち駒
▲郷田九段: 歩
△渡辺王将: 歩
先手と同じく飛車先で歩を交換し一歩を手にした
渡辺王将の飛車の引き場所は△8四の地点。。
こちらは浮き飛車に構えました。
31手目▲3三角成。
上図での持ち駒
▲郷田九段: 角、歩
△渡辺王将: 歩
郷田九段は「引き飛車棒銀」の一つの形である
▲3六銀(23手目)に決めて後手の出方をうかがうと
上図31手目の局面で自ら角交換を敢行。。
42手目△5五歩。
上図での持ち駒
▲郷田九段: 角、歩
△渡辺王将: 角、歩
角交換成立後
渡辺王将は「中原囲い」に玉を固めてから
積極的に駒を前に運ぶ動きをみせますが
中央5筋の位を張った上図から、次に。。
43手目▲6六角。
上図での持ち駒
▲郷田九段: 歩
△渡辺王将: 角、歩
郷田九段はいきなり
手持ちの角を6六の地点に投入。。
代えて▲6六銀と繰り出す手もありそうですが
郷田九段は敢えてこの局面で形を決めました。。
【 一日目終了図・45手目▲5五角 】
上図での持ち駒
▲郷田九段: 歩2
△渡辺王将: 角、歩
一日目は上図45手目まで進行。
郷田九段が角で5五の歩を払った局面で
渡辺王将が次の手を封じて終了となりました。。
一夜が明けて
迎えた本日、決着の二日目。
46手目△4二金上。
上図での持ち駒
▲郷田九段: 歩2
△渡辺王将: 角、歩
手の広い局面で注目された
渡辺王将の「封じ手」は自陣の上部を厚くする
△4二金上でした。。
この「封じ手」をみて
郷田九段は手を止め、いきなりの長考へ。。
47手目▲8六銀。
上図での持ち駒
▲郷田九段: 歩2
△渡辺王将: 角、歩
1時間と7分の長考の末
郷田九段は▲8六銀と指しました。。
一目では
代えて▲6六角や▲7五歩なども見えますが
郷田九段はその先の局面に思いをめぐらせる
柔らかな指し手で二日目のスタートを飾りました。
この手に対して
渡辺王将が次に7筋の歩を取り込むと。。
(48手目△7五歩)
49手目▲1五歩。
上図での持ち駒
▲郷田九段: 歩2
△渡辺王将: 角、歩2
郷田九段は1筋の歩を突き合わせ
端から開戦の火ぶたを切ります。。
渡辺王将が△同歩(50手目)と応じて、以下
▲1三歩~△同香~▲1二歩(53手目)と進行。。
郷田九段が1筋に味を付けますが。。
54手目△5三角。
上図での持ち駒
▲郷田九段: なし
△渡辺王将: 歩4
渡辺王将は
桂取りに構うことなく自陣に手持ちの角を投入。。
前方に広がる郷田陣営を広角に捉えます。
この局面で切り良く午前の対局は終了。
お昼休憩突入となりました。
【 お昼のメニュー 】
郷田九段: いくら丼
渡辺王将: カニのトマトクリームスパゲティ
午後の対局開始の一手で
郷田九段が1筋に垂らした歩を成り込むと。。
(55手目▲1一歩成)
56手目△8六角。
上図での持ち駒
▲郷田九段: なし
△渡辺王将: 銀、歩4
渡辺王将は間髪入れずに
8筋に繰り出した先手の銀目掛けて角が突進。。
投入から瞬く間に、角切りを敢行しました。。
圧倒的な研究量と徹底的に合理化された構想に加え
類稀なる終盤力と、持って生まれた天性の勝負勘で
10代の頃より頭角を現しトップ棋士となった渡辺王将。
ここ数年は円熟味をグッと増し
昭和の巨星・大山康晴十五世名人を彷彿とさせる
絶品の受け将棋に強味を発揮していましたが。。
不可思議な負けを喫した第6局に続き
いかにもらしくない急激なアクセルの踏み込みは
即座に羽生善治名人の負けパターンを連想させます。。
果たして、タイトルの懸かった大一番で
渡辺王将は何を表現し、結果をもたらすのか。。
開幕前の胸騒ぎが脳裏を過ります。。
59手目▲8七角。
上図での持ち駒
▲郷田九段: なし
△渡辺王将: 銀、歩5
一方、郷田九段は払った角で(57手目▲同歩)
渡辺飛車の突進を受け止めます。。
手持ちの駒はなく
一見、苦しそうにも見えますが、流れとしては
先手の方にチャンスが来ているムードが鮮明に。。
64手目△7七銀。
上図での持ち駒
▲郷田九段: 桂
△渡辺王将: 歩5
踏み込んだからには
力づくでも形勢を引き寄せねばならぬと
渡辺王将は露骨にたたみ掛け先手陣に迫ります。。
上図から次に
郷田九段が玉を危険地帯から逃がすと(65手目▲5九玉)
以下、△6六銀成~▲同歩~△3九角~▲3八飛~に
▲5七角成(70手目)と渡辺王将が踏み込みますが。。
71手目▲5四桂。
上図での持ち駒
▲郷田九段: 銀
△渡辺王将: 歩6
郷田九段は唯一にして絶対の切り札である
手持ちの桂馬を5四の地点に投入。。
金と銀の両取りから
反動を利しての攻勢に全てを託しました。。
80手目△6二歩。
上図での持ち駒
▲郷田九段: 桂、歩
△渡辺王将: 歩4
郷田九段の桂馬の打ち込みを境に
渡辺王将猛攻の気配は一気に陰をひそめ
かわりに渾身の受けで先手の攻め手を凌ぎに出ます。。
89手目▲5五桂。
上図での持ち駒
▲郷田九段: 銀、歩
△渡辺王将: 桂、歩4
しかし、こうなると郷田九段は力を発揮。。
牛歩のあゆみのようにしっかりと大地を踏みしめ
ゆっくりと、そして確実に、渡辺玉を仕留めに行きます。
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【 投了図・99手目▲3二銀成 】
投了図での持ち駒
▲郷田九段: 金、歩
△渡辺王将: 角、桂、歩5
上図99手目の局面をみて
渡辺王将は成す術を無くし、無念の投了。。
気高き自負と凄まじい闘争本能を全開にした
郷田九段が執念の打倒・渡辺王将を成し遂げ
見事、王将位奪取に成功しました!
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【 序 章 】
「私と将棋界」
柔らかブログ誕生のきっかけとなった
第21期竜王戦以降の将棋界を熱く振り返ります。
【 第一章 】
「愛知女子将棋界の駒音」
山口真子さん/中澤沙耶さんインタビュー
【 第二章 】
「明日咲く花」
今泉健司さんへのエール&ミニインタビュー