危ぶめば道は無し。。第61期王座戦5番勝負/第4局「終盤戦を振り返ろう」
【 千日手成立局面・51手目▲4六角 】
上図での持ち駒
▲羽生王座: 歩2
△中村六段: 歩
昨日行われました
羽生善治王座に中村太地六段が挑戦する
第61期王座戦5番勝負/第4局は、午後2時56分。
上図51手目の局面で千日手が成立。
1勝2敗のカド番で本局に臨む羽生王座にとっては
先手番で打開の術なく、痛恨の千日手。。
30分後の指し直し局では手番が入替わり
後手番となるだけに、ますます追い詰められた格好に。。。
一方、攻めの姿勢を示した上で
先手番をものにした中村六段には、さわやかな追い風が
吹いているように感じられました、が。。。
初手▲1六歩。
▲中村六段: なし
△羽生王座: なし
午後3時26分に始まりました指し直し局。
先手となった中村六段の初手は飛車先の歩を突く
▲2六歩から。
中村六段のここまでの躍進を支えているのが
「横歩取り」と「角換わり」。。
勝てばタイトル奪取が決まる
大一番で掴み取った先手番のアドバンテージを活かすべく
果たしてどのような戦型に導くのか。。。
4手目△8八角成。
上図での持ち駒
▲中村六段: なし
△羽生王座: 角
しかし、百戦錬磨の絶対王者
羽生王座は戦型の選択肢を中村六段に与えず。
初手▲2六歩~△3四歩~▲7六歩~の進行から
上図4手目に中村角を強襲。。
「4手目一手損角換わり」を投入し
半ば強引に、戦型とその後の指向を定めました。
23手目▲3七桂。
上図での持ち駒
▲中村六段: 角
△羽生王座: 角
角交換成立後
両者は用心深く駒組みを進めます。。
戦型を決めた代償として
後手番の上にさらに一手損した羽生王座が右の銀を
中央5筋に繰り上げ、中央を手厚く構えたのに対し
中村六段は右の銀の態度を保留し、先に右の桂馬を跳躍。
今シリーズは強靭な受けの強さを見せつける
中村六段ですが、本来は攻め将棋こそが最大の魅力。
指し直し局でも、積極的に駒が前に出ます。
37手目▲4五歩。
上図での持ち駒
▲中村六段: 角
△羽生王座: 角
その後
右の銀を後手と同じく5筋へと繰り出し腰掛銀に構えた
中村六段は1筋の位を確保してから、4筋で歩を突きあわせ
仕掛けを開始しました。。
49手目▲2六飛。
上図での持ち駒
▲中村六段: 角、歩
△羽生王座: 歩3
中村六段が飛車先の歩を切った上図49手目の局面で
夕食休憩となり、両者最後のインターバル。。
50手目△5五銀直。
上図での持ち駒
▲中村六段: 角、歩
△羽生王座: 歩3
夕食休憩明けの一手で
羽生王座は4段目に並んでいた自軍の銀の一枚を
ガツンと前に出し、中村六段の銀に直接ぶつけて反撃を開始。。
上図から、▲同銀~△同角~▲5六歩~と進行。
銀交換成立直後に中村六段は天王山の位に迫り出した
羽生角の頭上を歩で叩き、移動を勧告。。
すると
54手目△7七角成。
上図での持ち駒
▲中村六段: 角、銀、歩
△羽生王座: 銀2、歩3
ここで△4五歩と引いているようでは
活用の見込みが薄い上に先手に桂跳ねと銀打ちの足場となる
▲4五歩を許してしまう。。
ということで羽生王座は決断の角切り。
7七の地点へと飛び込み、先手の銀と刺し違えました。。
58手目△4七銀。
上図での持ち駒
▲中村六段: 角2、銀、歩
△羽生王座: 銀、歩2
中村六段が飛び込んできた角を桂馬で払うと
羽生王座は先手の拠点となりそうだった4筋を押しつぶし
角と交換したばかりの銀を投入し、離れ駒となっている
4八の金を露骨に狙います。。
中村六段は次にグッと金を引き(59手目▲4九金)
羽生王座は5筋で成銀を作りました(60手目△5六銀成)。
61手目▲1二銀。
上図での持ち駒
▲中村六段: 角2、歩
△羽生王座: 銀、歩3
するとすかさず中村六段が反撃。。
狭いスペースに銀を打ち込みましたが、これは次に
▲2三銀成をみている積極的かつ厳しい一着。
この瞬間
後手に思わしい受けは見当たりませんが。。
62手目△6七成銀。
上図での持ち駒
▲中村六段: 角2、歩
△羽生王座: 銀、歩4
ならば、攻撃こそ最大の防御なり
となりましたが、羽生王座はその中でももっとも激しいと
思われる、6七成銀を選択。。
以下、▲同金~△6六歩~の進行で手番を握った
中村六段は65手目▲2三銀成と飛車先の主導権を握り
後手玉には「詰めろ」がかかりました。。
70手目△2三銀。
上図での持ち駒
▲中村六段: 角、金、銀、歩2
△羽生王座: 銀、歩3
羽生玉は非常に危険な状態。。
チャンスが到来した中村六段は詰めろを連発し
我武者羅に勝利を目指します。。
何とか
「詰めろ」を振りほどこうとする羽生王座ですが
上図から▲同飛成~△同歩~▲2四歩~の進行で
以下
▲2三角成~△4三玉~▲3二角~△4二玉~▲4一金
までの「詰めろ」
と、いうことで4二玉と逃げますが(74手目△4二玉)
中村六段の次の75手目▲2三角成で
以下
▲4一金~△4三玉~▲3二角までのまた「詰めろ」。。
羽生王座が追い詰められます。
83手目▲6四飛。
上図での持ち駒
▲中村六段: 金、銀2、歩
△羽生王座: 飛、金、歩4
ギリギリの線でしのぎ続ける羽生王座に対し
若き挑戦者・中村六段も攻め手をゆるめることなく
必死に羽生玉を追い込みます。。
上図83手目は一つのクライマックス。。
羽生玉はついに絶体絶命かに思われましたが。。
84手目△6三金。
上図での持ち駒
▲中村六段: 金、銀2、歩
△羽生王座: 飛、金、歩4
ここで羽生王座はこれしかない、絶妙の金合い。。
ピンチをしのぎます。。
114手目△5四玉。
上図での持ち駒
▲中村六段: 金、銀、桂2、歩2
△羽生王座: 飛、角、銀、歩3
羽生玉は何とか上部脱出まで漕ぎつけましたが
主導権を握っているのは一貫して、中村六段。
粘り強い差し回しで
勝利を着実に引き寄せているように思われましたが。。
上図から次の115手目が、痛恨の一着に。。
「▲5五歩で負けでしたよね」と
羽生王座が感想戦で語った局面での中村六段の指し手は
115手目▲4三銀。。。
次に羽生王座が△5五玉と一歩前に出た瞬間。。
形勢の針は静かに、羽生王座へと振れ始めました。。
【 投了図・128手目△8九飛 】
投了図での持ち駒
▲中村六段: 金
△羽生王座: 角、銀、桂、歩6
最後は「打ち歩詰め」の筋まで登場し
羽生王座が辛くも逃げ切り、大逆転勝利。。
値千金の白星により今シリーズの成績は2勝2敗となり
名勝負の決着は最終戦/第5局までもつれ込みました。