開幕迫る第54期王位戦。。行方八段のA級開幕戦を振り返ろう | 柔らかい手~個人的将棋ブログ

開幕迫る第54期王位戦。。行方八段のA級開幕戦を振り返ろう

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羽生善治王位に

行方尚史八段が挑戦する、第54期王位戦7番勝負が

いよいよ今週の水曜日(10日)に開幕の時を迎えます。。




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名人戦棋聖戦 に続き3タイトル戦連続登場となる

羽生王位の今期ここまでの対局は、ほぼ全て

ご紹介させていただきておりますので、今回は開幕に先立ち

将棋界のトリックスター・行方八段の対局を振り返らせて頂きます。





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2手目△8四歩。


上図での持ち駒


▲郷田九段: なし

△行方八段: なし


今回ご紹介させていただきますのは

6月14日に行われました第72期A級順位戦の1回戦

郷田真隆九段戦。


今期よりA級復帰を果たした行方八段は後手番で

純然たる居飛車の本格正統派・郷田九段の初手▲7六歩に対し

飛車先の歩を突く△8四歩と返し、居飛車を明示するとともに

戦型の選択権を、郷田九段に預けました。。





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10手目△7七角成。


上図での持ち駒


▲郷田九段: なし

△行方八段: 角



戦型選択を委ねられた

郷田九段の3手目は▲2六歩から「角換わり」を目指します。



行方八段も追随し、以後定跡手順の進行で

上図10手目に、行方八段から手損のない角交換へ。。




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31手目▲5六銀。


上図での持ち駒


▲郷田九段: 角

△行方八段: 角


角交換成立後

互いに細かくけん制し合いながら駒組みは進行し

戦型は先週の土曜日に行われた棋聖戦/第3局と同じく

「角換わり相腰掛銀」となりました。


行方八段も生粋の居飛車党。腕が鳴ります。。





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42手目△6五歩。


上図での持ち駒


▲郷田九段: 角

△行方八段: 角


「相矢倉」と並ぶ居飛車の看板戦法である「角換わり」は

定跡が整備され、序盤が長いのも特徴の一つ。。



端歩を突き合い、双方玉の入城の果たしてから

行方八段が6筋の歩を突きあわせて、開戦を促しました。。





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43手目▲6四角。


上図での持ち駒


▲郷田九段: 角

△行方八段: 角



すると、次の瞬間

郷田九段は突かれた歩の裏を取り、角を投入。。

上図から以下、△9二飛~▲4五歩~△同歩~▲3五歩~

と郷田九段は次々の歩の突き捨てをいれ仕掛けを開始。。




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60手目△3七歩成。


上図での持ち駒


▲郷田九段: 歩

△行方八段: 角



先手の▲6四角の仕掛けは以前からある形ですが

なかなか打ち込んだ角が捌けないのが難しいところ。。


本局でもうまく角の面倒をみた行方八段の方が

逆にペースを握り、先に敵陣へと進攻を果たしました。。


先手は桂馬も事実上詰まれており

攻め合いを目指すには一目、次に▲5三桂成からの

踏み込みが考えられますが。。。



「斬れるものなら斬ってみろ」と

分かれの局面では躊躇なく剣を抜き、真っ向勝負を挑む

無頼な剣豪・郷田九段の次の手は、「と」金を払う▲同角。。


この手をみて

行方八段が4筋の歩を突き、桂馬を詰ますと(62手目△4四歩)

郷田九段はすかさず、飛車を3筋へと振り(63手目▲3八飛)

やはり猛攻の意志を明示しました。。。



以下

△4五歩~▲9一角成~△同飛~下図67手目▲3四飛。。




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67手目▲3四飛。


上図での持ち駒


▲郷田九段: 銀、香、歩2

△行方八段: 角2、桂



郷田九段は角を捌いて剛直に飛車を前進させました。

さらに、行方八段が3三金と飛車取りをかけると(68手目△3三金)

飛車がそのまま突進し、金との交換で飛車も切ります。。




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74手目△3八飛。


上図での持ち駒


▲郷田九段: 金、銀、歩3

△行方八段: 角2、桂、歩


郷田九段は5筋に香車を配置し

さらなる戦力補強を目指しますが、行方八段も

終盤のねじり合いには自信あり。8筋で歩を突き捨ててから

3筋に攻守に利かせる飛車を打ち込み形を決めます。。





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82手目△8七歩。


上図での持ち駒


▲郷田九段: 金、銀、歩2

△行方八段: 角2、桂


前期の成績が

43戦32勝11敗(.744)


今期ここまでの成績が

12戦11勝1敗(.917)


絶好調という表現ではもう、収まらない

一皮抜け、ワンランク上の世界へと足を踏み入れた行方八段は

郷田九段が玉頭の銀を剥がしにきた(81手目▲3五歩)

際どい瞬間を手抜いて、先手玉の頭上を叩いてご挨拶。


「俺が勝ちますよ」と、不遜にもみえる宣言に

しかし、目には見えない迫力の前に、さすがの郷田九段も

この歩を払えず(83手目▲9八玉)、形勢が大きく傾きました。。




【 投了図・110手目△9五飛 】




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投了図での持ち駒


▲郷田九段: 飛、銀2、桂、歩3

△行方八段: 金、歩3



最後は華麗に郷田玉を仕留め上げ

行方八段が上図110手目までで完勝。。

A級の開幕戦を見事白星で飾りました。



間違いなく

現在の将棋界でトップクラスの実力を保持する行方八段。

羽生王位との王位戦が実に楽しみであります。。