寵児の所以を。。明日は第54期王位戦挑戦者決定戦「佐藤九段-行方八段」 | 柔らかい手~個人的将棋ブログ

寵児の所以を。。明日は第54期王位戦挑戦者決定戦「佐藤九段-行方八段」

団先生と知り合ったのは21年前、

僕は16歳でまだ初段だった。


性的な関心が旺盛な年代にも関わらず、

学校も辞めて異性とのかすかな接点もなくした僕にとって


「官能小説の巨匠」という響きはあまりにも刺激的なもの

であったが、実際にお付き合いさせていただくと


少しも偉ぶることのない、

こういってはなんだかチャーミングな方だった。



(将棋世界2011年7月号。「団鬼六追悼特集」より

行方尚史八段の寄稿より一部抜粋)


□□□



今から2年前

2011年の5月にこの世を去った、最後の文豪・団鬼六。


自ら専門誌を発行するほどの愛棋家として知られ

将棋界との関わりが深かった鬼六氏が、特に可愛がったのが

将棋世界2011年7月号の追悼特集に追悼文を寄せた

行方尚史八段。


10代で「鬼六ファミリー」の一員となった

行方八段は鬼六氏の豪邸で奥様特製のカレーを食し

鬼六氏と角落ちの将棋を指して小遣いをもらっていたという。



将棋界きっての愛されキャラである行方八段。


将棋界が純然たる才能の世界であることに

疑いの余地はありませんが、人柄ももまた才能であり

特に自然と人に好かれる人というのは、社会生活で形成された

人格とはまた別の、持って生まれた不思議な魅力があるもの。。



「羽生さんに勝って、いい女を抱きたい」


twitterで定期的に回ってくる botの

第7期竜王戦挑戦者決定戦を前に行方八段が発したという

名言もまた、本人は「周りに言わされた」と供述しているそうですが

当然、言って良い人悪い人があるわけで


行方八段がいかに周囲に愛されているのかを示す

エピソードに思えてなりません。。


鬼六氏の死去から2年、竜王戦挑決から20年。

昨年より、目を見張る快進撃を開始した、行方八段が

明日、羽生善治王位への挑戦権獲得を目指し

王位戦/挑戦者決定戦に挑みます。。



第54期王位戦中継サイト

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<第54期王位戦/挑戦者決定戦>


佐藤康光九段-行方尚史八段



柔らかい手~個人的将棋ブログ-パンダ先生


行方八段の今期ここまでの成績は

7戦6勝1敗(.857)。


前期は43戦32勝11敗(.744)

順位戦はB級1組で開幕から怒涛の11連勝と突っ走り

優勝とA級復帰 を早々に決めるなど大活躍をおさめた

行方八段は勢いそのままに、今期も快調に白星を積み上げます。



王位戦は

挑戦者決定リーグ戦 ・紅組で全勝優勝。


4回戦で

前期の王位戦挑戦者・藤井猛九段に勝利

単独首位で迎えた最終戦で、星ひとつの差で追ってきた

松尾歩七段と直接対決。。





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3手目▲5六歩。


上図での持ち駒


▲松尾七段: なし

△行方八段: なし


今月13日に行われた最終戦・一斉対局は

先手・松尾七段が意表の出だし。。


居飛車の実力者同士の対戦ということで

初手▲7六歩~△8四歩から、3手目は▲6八銀、▲2六歩が

有力に思われましたが、松尾七段は中央5筋の歩を突き

居飛車とも、振り飛車ともとれる意味有り気な3手目を用意。。





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8手目△6二銀。


上図での持ち駒


▲松尾七段: なし

△行方八段: なし


しかし、行方八段はとりあわず

4手目に飛車先を決め、角で受けさせると(5手目▲7七角)

△5四歩~▲8八銀~と進行し、松尾七段は居飛車を明示。。


行方八段は逆に

急戦含みの居飛車も、また振り飛車もありの構えで

駒組みの主導権争いをリードします。。




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35手目▲2二角成。


上図での持ち駒


▲松尾七段: 角、歩2

△行方八段: なし


羽生三冠主宰の研究会のメンバーにも名を連ねる

テクニシャン・松尾七段は飛車先の歩を切った後も

浮き飛車に構えたままで駒組みを続行。。


難しい力将棋模様となる中

上図の局面で、角交換を仕掛けました。。




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58手目△5八角。


上図での持ち駒


▲松尾七段: 金、歩4

△行方八段: 歩2


二枚矢倉に玉をおさめた行方八段は

飛車を巧妙に使いこなし、手番を握った上図の局面で

まだ囲いきれて居ない松尾玉に直接、持ち駒の角をぶつけ

ケレン味なく、勝負に出ます。。


次に、松尾七段は玉を6八の地点に逃がし

終盤戦に突入。。



「行方八段-松尾七段」の棋譜中継はこちら


【 投了図・90手目△6七成銀 】



柔らかい手~個人的将棋ブログ-90



投了図での持ち駒


▲松尾七段: 金、桂、歩4

△行方八段: 角、金、歩


最後はきれいに寄せ切り

行方八段は紅組全勝優勝を飾り

満を持して、挑戦者決定戦進出が決定しました。



しかし


強い思いをこめて、大一番にのぞむのは

行方八段だけにあらず。



挑戦者決定リーグ戦・白組を制し

明日の挑戦者決定戦に姿を現す、もう一人の雄は

われらの闘将・佐藤康光九段。



佐藤九段の今期ここまでの成績は

6戦5勝1敗(.833)。


年明けに行われた王将戦で

タイトル防衛は叶わなかった佐藤九段ですが

今期は第26期竜王戦ランキング戦1組で優勝 を飾るなど

落ち込むことなく、好調をキープ。


王位戦は行方八段と同様に

挑戦者決定リーグ戦・白組で全勝優勝。



柔らかい手~個人的将棋ブログ-12


12手目△2二飛。


上図での持ち駒


▲佐藤九段: 角

△澤田五段: 角



同じく今月13日に行われた

白組最終戦では、リーグ戦であの渡辺三冠に土 をつけるなど

快進撃を続け、台風の目となった澤田真吾五段と全勝対決。


佐藤九段は先手で

若き新鋭・澤田五段が「康光流ダイレクト向かい飛車」を

投入するという大胆不敵なご挨拶 を受けましたが。。



「佐藤九段-澤田五段」の棋譜中継はこちら





柔らかい手~個人的将棋ブログ-69


69手目▲2一飛成。


上図での持ち駒


▲佐藤九段: 桂

△澤田五段: 角、銀、歩3


佐藤九段は超トップ棋士の貫禄充分な指し回しで

徐々に差を広げ、圧倒していきます。。



【 投了図・107手目▲3二同龍 】



柔らかい手~個人的将棋ブログ-107



投了図での持ち駒


▲佐藤九段: 角、金、歩3

△澤田五段: 角、桂、香、歩4



堂々の全勝優勝を飾り

久しぶりとなる羽生王位とのタイトル戦に向け

最後の関門・挑戦者決定戦へと駒を進めました。。



柔らかい手~個人的将棋ブログ-決戦



王位戦/挑戦者決定戦の棋譜中継はこちら



ということで

今期の将棋界を占うことになるかも知れない

好調棋士同士による、大注目の王位戦/挑戦者決定戦。


両者の対戦成績は

ここまで17戦して、佐藤九段の10勝7敗。

しかしこのところは佐藤九段が5連勝中と圧倒しています。。



果たして、羽生王位の挑戦者に名乗りをあげるのは

どちらの棋士となりますでしょうか。。開始は明日午前10時より

どうぞお見逃しなく!