第2回電王戦/第5局「三浦八段、相矢倉で完敗」 | 柔らかい手~個人的将棋ブログ

第2回電王戦/第5局「三浦八段、相矢倉で完敗」

第2回将棋電王戦公式サイト


プロ棋士と将棋ソフトによる5対5団体戦

第2回将棋電王戦。


3月23日の開幕戦から

毎週土曜日に対局は重ねられ

ここまで4局を消化し、将棋ソフト側の2勝1敗1分。


残り1局を残し、すでにプロ棋士側の勝ち越しの目はなく

団体戦のみどころとしては、将棋ソフトが勝ち越すか

プロ棋士が引き分けに持ち込むかの一点のみ。。


しかし、大将戦/第5局には

団体戦とは別次元での威信をかけた大きなテーマと

それを背負うに値する、大物同士による真っ向勝負が実現し

ここからがクライマックス、熱気と興奮が沸点を超えます。。




柔らかい手~個人的将棋ブログ-ファイナル



電王戦/第5局・直前レビュー



第5局の先手・三浦八段の初手は

角道を開ける▲7六歩。。




柔らかい手~個人的将棋ブログ-2


2手目△8四歩。


上図での持ち駒


▲三浦八段: なし

△GPS将棋: なし



対する、後手・GPS将棋の2手目は

飛車先の歩を突く△8四歩。。


自らの居飛車を早々と明示するとともに

生粋の居飛車党である三浦八段に対して

「戦型はお好きなものをどうぞご自由にお選びください」と

選択戦を委ねる、強気の一手。。




柔らかい手~個人的将棋ブログ-3


3手目▲6八銀。


上図での持ち駒


▲三浦八段: なし

△GPS将棋: なし


「では、矢倉はいかがですか?」



一流棋士の証である「A級棋士」の座を

12期つとめるバリバリのトッププレーヤーである三浦八段は

故・米長邦雄永世棋聖が「将棋の純文学」と表現した

居飛車の看板戦法「矢倉」を明示し、GPS将棋に問いかけます。




柔らかい手~個人的将棋ブログ-10

10手目△4二銀。


上図での持ち駒


▲三浦八段: なし

△GPS将棋: なし


「いいでしょう、望むところです。」



最高学府・東京大学が生み出したモンスターマシーン

GPS将棋はその問いかけを受けて立ち

第2回電王戦/大将戦は「相矢倉」となりました。




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26手目△6四角。


上図での持ち駒


▲三浦八段: なし

△GPS将棋: なし



定跡手順を踏襲しながら

「相矢倉」模様でしばらく進行しましたが

上図26手目の局面で、まずGPS将棋が動きます。。



三浦八段が右の銀を3七の地点に上げた(25手目▲3七銀)

次の瞬間、GPS将棋は角を6四の地点までせり出し

先手に角の態度を決めさせます。



ここで先手に▲6八角にとどめながら、穏やかに入城を目指し

現代矢倉の主流である「▲4六銀3七桂」型に持ち込まれると

専守防衛を余儀なくされるだけに、GPS将棋としては

のんびりと追随はしていられない、最初の分かれ道。。




柔らかい手~個人的将棋ブログ-21



三浦八段にとっても作戦の岐路となるだけに

しばし時間を使い熟考。。




柔らかい手~個人的将棋ブログ-27



27手目▲4六角。


上図での持ち駒


▲三浦八段: なし

△GPS将棋: なし


そして指された三浦八段、決断の27手目は

角には角を合わせる▲4六角。。


この形は

前期のA級順位戦・対羽生三冠戦 でも採用された

研究の鬼・三浦八段が得意としている「脇システム」。。




柔らかい手~個人的将棋ブログ-39


38手目△4三金右。


上図での持ち駒


▲三浦八段: なし

△GPS将棋: なし



あえて三浦八段の得意な戦型へと導いたGPS将棋。

相当の研究と自信の程がうかがえ、恐ろしさを感じます。。


「脇システム」の特徴の一つである

角が天王山の位をはさんでにらみ合いながら

ほぼ先後同型の模様へと進行。。


互いに入城を果たし

美しい「相矢倉」模様が描き出されました。。



三浦八段は次の39手目に

お役御免と角を引きます(▲6八角)




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40手目△7五歩。


上図での持ち駒


▲三浦八段: なし

△GPS将棋: なし


すると、GPS将棋は7筋で歩をぶつけ

いよいよ開戦の時を迎えました。。


以下

▲同歩~△8四銀~▲7四歩~△7五銀~

GPS将棋はまず右の銀の活用を計ります。。





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45手目▲7六銀。


上図での持ち駒


▲三浦八段: 歩

△GPS将棋: なし



三浦八段は後手の銀の進攻に対して

「矢倉囲い」をブレイクし、一歩も引かずに駒を捌きに前に出ます。


以下、△同銀~▲同金~△7五銀~▲同金~△同角~

一直線に駒を捌き合う、激しい展開となりました。。





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53手目▲7六銀打。


上図での持ち駒


▲三浦八段: 歩

△GPS将棋: 金


いきなり「矢倉囲い」の屋根となる

歩と二枚の銀を剥がされた三浦八段ですが

回転して入手にした二枚の銀をすかさず7筋に投入し

縦に並べてリフォームに着手。。



この辺りの出し引きは

さすが、A級棋士の貫禄を示します。



柔らかい手~個人的将棋ブログ-63


63手目▲8六歩。


上図での持ち駒


▲三浦八段: なし

△GPS将棋: 歩


三浦八段のリフォームは

玉周りを囲い直し局面をおさめる消極的なものではなく

「矢倉囲い」そのものを一段上に作り直す画期的な形に。。


さらに、GPSの飛車が8筋を離れた瞬間(62手目△7二飛)

玉頭の歩を自ら突き合わせ、後手の攻め駒を押さえ込みます。





柔らかい手~個人的将棋ブログ-69



69手目▲7五金。


上図での持ち駒


▲三浦八段: 歩2

△GPS将棋: 歩


三浦矢倉はもはや攻め駒と化し

自玉を置いてきぼりにしてGPS陣営へと闘志満々の攻め上がり。。


上図から△7四金~▲同金~△同飛~▲7五歩~△7一飛~

守りの要である金も5段目で躊躇なく捌かれました。。



そして



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75手目▲8三金。


上図での持ち駒


▲三浦八段: 歩

△GPS将棋: 金、歩2


三浦八段は手にした金を

角の頭上に直接、ガツンと投下。。



しかし。。。



柔らかい手~個人的将棋ブログ-80


80手目△8八歩。


上図での持ち駒


▲三浦八段: なし

△GPS将棋: 歩


桂馬は詰まれたGPS将棋ですが

手持ちの金で味をつけ、三浦玉を吊り上げてから

同じく桂取りを仕掛け反撃開始。。


三浦八段はわが道を行き

上図から▲8一歩成~△同飛~▲7三金で

桂馬とともにGPS将棋の角を捕獲。駒得となりました。




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89手目▲8一金。


上図での持ち駒


▲三浦八段: 飛、角、桂

△GPS将棋: 銀、桂、歩2



さらに飛車をもゲットした三浦八段は

玉の上部脱出にとりかかりますが。。。



柔らかい手~個人的将棋ブログ-91


91手目▲9五銀。


上図での持ち駒


▲三浦八段: 飛、角、桂

△GPS将棋: 桂、歩



囲いで攻め上がるという

画期的な作戦は刺激的ではあったものの、やはり

リスクは大きかったか、GPS将棋の90手目△9四銀で

形勢は後手へと大きく振れます。。。


三浦八段の次の手は

これしかない上図91手目▲9五銀。。。




柔らかい手~個人的将棋ブログ-93


持ち時間も少なくなり

いよいよ苦しくなってきました。。




柔らかい手~個人的将棋ブログ-93



93手目▲4一角。


上図での持ち駒


▲三浦八段: 飛、桂

△GPS将棋: 歩2


優勢であるはずのGPS将棋が放った

92手目△7三桂は、この土壇場にきての意外な一手。。

三浦八段は4一の地点に攻防の角を投入。


三浦八段の勝利を願いつつ見守る

多くの将棋ファンを大いに湧かせましたが。。


【 投了図・102手目△9四香 】



柔らかい手~個人的将棋ブログ-102



投了図での持ち駒


▲三浦八段: 飛、銀、香

△GPS将棋: 歩


しかし

その手さえも好手であり形勢は揺るがず。


終盤は三浦八段、全くなす術無し。。。

上図102手目の局面で無念の投了となりました。



注目の大将戦はGPS将棋の完勝となり

第2回電王戦は将棋ソフトの3勝1敗1分け。


コンピュータ将棋プログラムの

完成度の高さと強さが、全世界へと発信されました。。