前門の虎。。本日、羽生三冠登場。150回目の佐藤九段戦 | 柔らかい手~個人的将棋ブログ

前門の虎。。本日、羽生三冠登場。150回目の佐藤九段戦

大物棋士の対局 から

次代を担うべき若き精鋭同士の激突 まで

気になる対局目白押しとなった本日の将棋界。


しかし、その中にあっても

別格の期待と注目を集める黄金カードが

佳境を迎えた竜王戦ランキング戦/1組を舞台に

行われています。。



第26期竜王戦ランキング戦1組トーナメント /準決勝>


羽生善治三冠-佐藤康光九段




柔らかい手~個人的将棋ブログ-パンダ先生



20年以上に渡り将棋の最先端で切磋琢磨しながら

タイトル戦を中心にシノギを削ってきた両雄の記念すべき

150回目の対局がここに実現。


勝った方が1組トーナメント/決勝戦進出と同時に

決勝トーナメント出場が決まり、負けた方は1組3位決定戦に

回らなければならいという、勝てば天国、負ければ地獄。。


超一流の勝負師同士が、区切りの対局を行うにふさわしい

緊張感あふれる状況での、対局となりました。


しかし、まず何といっても注目されるのは

現在、名人戦真っ只中の羽生三冠のコンディション。。


先週の火曜(9日)-水曜(10日)に行われた

開幕戦では、振り駒で先手を得たにもかかわらず

初手▲2六歩からの「相掛かり」 を志向し、痛恨の完敗



先手番勝利率の極めて高い森内俊之名人を相手に

絶対に先に落としたくなかった先手番をあっさりと落とし

2年前の名人戦 を連想させる嫌な出だしとなった羽生三冠。



本日は、その名人戦/第1局以来の公式戦。。

来週の火曜日より行われる名人戦/第2局を目前にひかえ

「永遠のライバル」佐藤九段相手に、どのような戦いぶりを

見せてくれるのでしょうか。。。




柔らかい手~個人的将棋ブログ-2


2手目▲8四歩。


上図での持ち駒


▲佐藤九段: なし

△羽生三冠: なし


ほぼ全ての意味で

気になることだらけの羽生三冠の本日の手番は

名人戦/第2局と同じ、後手。


佐藤九段の初手は角道を開ける▲7六歩。


森内名人も9割方、名人戦/第2局の初手は▲7六歩と

予想されるだけに、羽生三冠の2手目に俄然注目が

集まる中、指された2手目は飛車先の歩を突く△8四歩。。


これは居飛車を明示すると同時に

戦型の選択権を先手に与える、居飛車党拘りの一手。。


ちなみに△3四歩ならば「横歩取り」への進行が有力に。


戦型の選択戦を委ねられた先手は

佐藤九段も森内名人の居飛車党ということで、ほぼ2択。


▲6八銀から「矢倉」、▲2六歩なら「角換わり」




柔らかい手~個人的将棋ブログ-3


3手目▲6八銀。


上図での持ち駒


▲佐藤九段: なし

△羽生三冠: なし



本局の佐藤九段の選択は▲6八銀で「矢倉」志向。。


個人的には

羽生三冠は「角換わり」での構想に研究の深さはともかく

興味と自信を持っているように感じています。


しかし、森内名人は名人戦で先手となる第2局と4局で

「矢倉」と「角換わり」を1局ずつ採用するか、もしくは

第2局で勝利をおさめた場合、第4局でも第2局と同じ

戦型を採用するパターンをとるはず。。


なので、名人戦の開幕戦を落としている羽生三冠には

「角換わり」、あるいは「矢倉」に拘れる余裕はすでになく

どちらを森内名人が投入してきても、必勝が求められます。




柔らかい手~個人的将棋ブログ-16


16手目△5二金。


上図での持ち駒


▲佐藤九段: なし

△羽生三冠: なし


佐藤九段の「矢倉」志向に

羽生三冠はもちろん、追随し「相矢倉」模様へと進行。。


上図16手目の局面では

△7四歩~△5三銀右~でおなじみの「阿久津流急戦」も

考えられましたが、羽生三冠は持久戦調に駒組みを進めます。




柔らかい手~個人的将棋ブログ-30


30手目△9五歩。


上図での持ち駒


▲佐藤九段: なし

△羽生三冠: なし



しかし、先に仕掛けたのは羽生三冠。


定跡形からガッチリと

「矢倉囲い」の中に玉の入城を果たした佐藤九段と

歩調を合わせることなく、羽生三冠は角を自陣最下段に

引いたまま、9筋の端歩を突き越す趣向を披露。。




柔らかい手~個人的将棋ブログ-34


34手目△7五歩。


上図での持ち駒


▲佐藤九段: なし

△羽生三冠: なし


さらに右の銀を「矢倉」に連動させることなく

飛車側から繰り出す準備をして7筋の歩を突きあわる

急戦志向に打って出ました。。





柔らかい手~個人的将棋ブログ-55


55手目▲7七金寄。


上図での持ち駒


▲佐藤九段: 歩

△羽生三冠: なし


しかし、その手に乗るつもりなどない

佐藤九段は「矢倉」を解体し、「穴熊」へとシフト。


一方の羽生三冠は

慎重に回り道をしながら、「矢倉囲い」の中に玉を入城。


前期のA級順位戦を中心に

定跡の最先端を多くのトップ棋士が試し、競い合った

「相矢倉」の後手番には、相当の工夫と準備が要求されることを

象徴するような序盤戦となりました。



対局は現在も行われていますが

羽生三冠とすれば、勝って竜王戦決勝トーナメント進出を

すっきりと決めると同時に、後手番「矢倉」で勝利をおさめて

森内名人にそのイメージを残したいところ。。


前門の虎・佐藤九段の先に

後門の狼・森内名人を見据える羽生三冠の

ヒリヒリする戦いは、続きます。。