A級の「相矢倉」を振り返ろう。。「羽生三冠-郷田棋王」の場合 後編
昨日で
年内の公式戦取組みが一段落した将棋界。
残す対局は30日(日)に予定されています
第71期C級2組順位戦/7回戦一斉対局で延期された
「佐藤紳哉六段-長岡裕也五段」のみとなりました。
年末ムードが高まります。。
昨日のエントリー にて
注目カードとしてご紹介させていただきました
第61期王座戦予選「藤井猛九段-松尾歩七段」は
後手・藤井九段が勝利。
一方、この年末にプロデビュー戦を戦った
森内俊之名人門下の14歳、噂の美少女・竹俣紅女流2級は
高群佐知子女流三段の前に敗れ、残念ながらデビュー戦を白星で
飾ることは出来ませんでした。
高群女流三段と言えば
今年の5月に海外アマチュア女流棋士のカロリーナさんに白星を献上 。
話題の引き立て役となってしまいましたが、今回は
前評判の高い新人女流棋士を相手に、貫禄を示しほっと一息。。
気分よくお正月を迎えられそうです。
また、一昨日のエントリー でご紹介させていただきました
今期絶好調の行方八段は、A級棋士・高橋道雄九段に勝利。
この結果、行方八段の今期ここまでの成績は
33戦27勝6敗(.818)となり、事実上、全棋士中トップの勝率で
大活躍の一年をおさめました。
(現在、勝利率で行方八段より上 にいるのは
清水上徹アマに勝利し、デビュー戦を飾った石田直裕四段のみ。
1戦1勝。1.000)
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【 第71期A級順位戦/2回戦 】
59手目▲1二歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 銀
△郷田棋王: 銀、歩3
昨日より柔らかくスタートしました
第71期A級順位戦での「相矢倉」を振り返るシリーズの第1回目
「羽生善治三冠-郷田真隆棋王」。
羽生三冠の先手で
▲7六歩~△8四歩~▲6八銀~の出だしから
一路、「相矢倉」へ。。
双方の玉が入城を果たした後
羽生三冠が現代矢倉の主戦「▲4六銀3七桂」型に構えると
郷田棋王は先手の「穴熊」をけん制する「△9五歩」型で対抗。
郷田棋王の△9五歩をみて
羽生三冠はすかさず▲6五歩と突く常套手段の「宮田新手」から
3筋で銀交換。。
徐々に局面は煮詰まり
迎えた上図59手目までを昨日、ご紹介させていただきました。
本日はその続きから。
63手目▲1三銀。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 歩
△郷田棋王: 銀、香、歩4
羽生三冠の1筋での歩のたたき(59手目▲1二歩)に対し
郷田棋王は△同香と応じます。。
後手の香車が一段繰り上がった、この一手をみて
羽生三冠は香車を走らせます(60手目▲1五香)。
△同香(61手目)と取らせて
戦地から遠く離れた砂漠地帯に後手の香車を釣り上げてから
あいたスペースに銀を投入。。
2五の桂馬も利いていますが
その先で1三の地点を見据えている6八の角
さらには浮いた飛車の活用がのちのち脅威となりそうな匂いが
プンプンと漂う危険な一手に、さすがの郷田棋王も△同桂とはとれず。
玉を3一の地点へと引き下げました(64手目△3一玉)
72手目△8六歩。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 金、歩4
△郷田棋王: 銀、香、歩3
郷田玉の下がりをみて
羽生三冠は1三の銀を金との交換で捌き
郷田矢倉を力強く崩しにかかります。。
矢倉の屋根をなしていた歩をバリバリとはがされ
先手の飛車、角、桂馬が自陣に直通となってしまった
郷田棋王は、ここで8筋の歩を突き合わせ反撃に。。
ここで▲同歩とすると
手筋の△8七歩が飛んできて、形が乱されるのを避け
羽生三冠は▲同銀と受けました(73手目▲8六同銀)。
74手目△8三香。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 金、歩5
△郷田棋王: 銀、歩3
すかさず郷田棋王は飛車先に
1筋で駒得となった香車を配置、反攻を強めます。
75手目▲6五角。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 金、歩4
△郷田棋王: 銀、歩3
しかし、羽生三冠は怖くないと言わんばかりに
8六の銀を逃げることなく、6四の地点に出しゃばる
郷田角の頭上に歩を突きつけました。
次に△8六角や△5三角では響きが薄く
不本意ながらも郷田棋王は、羽生陣営へと角を成り込み。。
(76手目△3七角成)
この▲6五歩~△3七角成~が勝負の肝となり
1筋の香車の時と同様に、角が戦地から姿を消した瞬間
形勢は大きく先手へと傾いた模様です。。
以下
▲3三歩のたたきから、△同桂を呼んで
下図79手目△1三桂成。。
79手目△1三桂成。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 金、歩3
△郷田棋王: 銀、歩4
後手の桂馬を跳躍させて利きの外れた1三の地点へ
味良く2五の桂馬を成り込ませた羽生三冠。
郷田棋王は次に
持ち駒の銀を長らく浮いたままの羽生飛車に直撃させますが
(80手目△4三銀打)
羽生飛車は微動だにせず。
▲2三成桂~△同金~▲2四金~と、駒を剥がしに出ます。
90手目△9四桂。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 金、歩2
△郷田棋王: 飛、歩4
手が途切れることなく攻め続ける羽生三冠の前に
防戦一方となった郷田棋王は、このままじり貧となるぐらいなら、と
9筋に桂馬を投入し、いかにも郷田棋王らしく攻め合う姿勢を示します。。
この態度に対し
羽生三冠は次に▲4四銀成と持ち駒を補充し
郷田棋王の捨て身の反撃を、受けて立ちます。。
103手目▲4四桂。
上図での持ち駒
▲羽生三冠: 銀2、香、歩3
△郷田棋王: 飛、金、歩3
必死に攻める郷田棋王。
しかし、羽生矢倉は固く、突破口は見いだせず。
さすがの郷田棋王も馬を守りに利かせるようでは苦しいそう。。
ここで羽生三冠は桂馬を投入。
郷田棋王は同馬と応じざるをえず、馬も抜かれて万事休す。
(上図から△同馬~▲同成銀~)
後は羽生三冠が、一直線の寄せへ。。
【 投了図・115手目▲1三角成 】
投了図での持ち駒
▲羽生三冠: 角、香、歩3
△郷田棋王: 飛、金2、桂、歩5
最後の最後に6八の地点で出番を待っていた角が
最初から最後まで先手の攻撃の起点となった1三の地点に
飛び込み馬となったところで、郷田棋王無念の投了。
やっぱり矢倉は端を制するものが勝負を制するのでしょうか。
1筋を破ってからは、羽生三冠の一方的な展開となりました。