明日は第83期棋聖戦5番勝負/第3局。。
羽生善治棋聖に
中村太地六段が挑戦する第83期棋聖戦5番勝負。
ここまで2局を終え、羽生棋聖の2連勝。
棋聖戦5連覇に王手がかけられてむかえる注目の第3局が
明日、島根県は江津市「旅館ぬしや 」にて行われます。
史上2位となる高勝利率(47戦40勝7敗.851)を記録。
順位戦もC級2組を10戦全勝 で昇級を決めた中村六段。
今シーズンも
開幕から順調に白星を重ね16戦11勝5敗(.688)。
対局数、勝利数ともに全棋士中2位となっています。
今期の白星の中には
森内俊之名人からあげたものも含まれており
棋聖戦挑戦者決定戦では
昨年まで2年連続棋聖戦登場、今期より順位戦A級復帰の
実力者・深浦康市九段に勝利。
また、第60期王座戦挑戦決定トーナメント でも
一次予選から勝ちあがり、準決勝で行方尚史八段を下し
見事、決勝まで駒を進めている中村六段。
昨シーズンの快進撃が、一時の勢いではないことを
お釣りがくるほどしっかりとした結果を残し、証明しています。
しかし、羽生棋聖には苦戦中。
今期喫した5つの黒星のうち、羽生棋聖戦が3つ。
初手合いとなった5月の大和証券杯 から勝ち星なしの3連敗。
【 棋聖戦/第1局 】
15手目▲3四歩。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 歩3
△中村六段: 歩2
6月6日に行われた棋聖戦/開幕第1局は
羽生棋聖の先手で中村六段の十八番「横歩取り」に。。
35手目▲3六飛。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 歩3
△中村六段: 歩2
タイトル戦であろうと、誰が相手であろうと
分かれの局面では強く、リスクが背負ってでも一番強い手で
踏み込むのが羽生棋聖一流の勝負術。
「羽生棋聖の▲3六飛はいちばん強気な一手と言えます。
なぜなら本譜の△8八飛成から△5五角打の強襲が
見えているからです。
私も引くに引けずに飛車を切っていきました。」
と、将棋世界8月号に掲載された自戦記で
中村六段自身が触れたように、開幕戦でも強く踏み込み
タイトル戦初登場の中村六段にプレッシャーをかけます。。
しかし
強く踏み込んだ時には必ず研究の裏づけがみてとれる
渡辺明二冠や森内俊之名人とは違い
強く踏み込んだからといって
必ずしも次の予定があるわけではなく、むしろ
予定の変更、アドリブ勝負となる場合が多いのも羽生棋聖流。
本局でも
難解な中盤戦で良く辛抱した中村六段が盛り返し
終盤戦は中村六段有利との声も聞かれましたが。。。
【 投了図・101手目▲5三金 】
投了図での持ち駒
▲羽生棋聖: 歩2
△中村六段: 角、銀2、歩2
初のタイトル戦で向かい合う
羽生棋聖の老獪な指し回しは、想像以上に中村六段を消耗させ
終盤のキレを奪い、際どいところで羽生棋聖がうっちゃり。
逆転で開幕戦を制しました 。
中村六段にとっては
悔やまれるというか、流れを掴み損ねた痛い黒星に。。
【 棋聖戦/第2局 】
10手目△7七角成。
上図での持ち駒
▲中村六段: なし
△羽生棋聖: 角
6月22日に行われた第2局目は
後手・羽生棋聖が「注文」をつける格好で「角換わり」に。
48手目△9二飛。
上図での持ち駒
▲中村六段: 角
△羽生棋聖: 角
その後は最善形を築きあげた羽生棋聖が
渋く中村六段に手を渡しながら、つけいる隙を与えない
中村六段にとっては辛い展開となりました。
70手目△3五歩。
上図での持ち駒
▲中村六段: 歩3
△羽生棋聖: 歩
羽生棋聖の上図70手目△3五歩をみて
中村六段は長考に沈みます。。
「受けを探していたんですが、どう指したらいいかわからなくて
少し苦しいかなと思いました。」
と、終局後のインタビュー で答えた中村六段。
終始、本意ではない展開を強いられたまま
第2局は完封負け 。。。羽生棋聖の強さばかりが際立つ結果に。
雰囲気的には
羽生棋聖が完全に中村六段を飲みこみ、ガッチリと
流れを掴んだ今シリーズ。
明日の第3局も中村六段が
追い風を感じる瞬間は、訪れないかもしれませんが
今後につなげるためにも、まずは一矢報いたいところ。。
明日の手番は羽生棋聖が先手。
となると戦型は、再びの「横歩取り」が有力ではありますが
ここ2戦 、羽生棋聖は「振り飛車模様」の出だしをみせており
月曜日に行われた達人戦・谷川浩司九段戦 では
実際に「先手中飛車」を採用しており、明日もひょっとすると
羽生棋聖の趣向がみられるかも知れません。
羽生棋聖の今期ここまでの成績は
18戦13勝5敗(.722)。
対局数、勝利数はともに
全棋士中トップとなっています。