連勝と連敗と。。序盤戦の明暗について
もうすぐ7月。
新年度がスタートしてから
はやくも3ヶ月が過ぎようとしています。
年間カレンダーの中心軸となる
第71期順位戦も各組で開幕した将棋界では
連勝街道を突っ走る棋士、逆に連敗地獄に苦しむ棋士と
シーズン序盤戦の明暗がハッキリと浮き彫りになってきました。。
今期、快心のロケットスタートを決めた棋士といえば
まずは「西の怪物」糸谷哲郎六段。
現在、開幕から無傷の7連勝中。
猛烈な早指しで強豪棋士をなで斬り
2年連続NHK杯決勝進出 の実績を誇る糸谷五段。
昨年度も
同じく早指し棋戦である第19回銀河戦で決勝戦進出
を果たしました。
しかし
NHK杯/決勝では2度とも羽生善治二冠の前に涙を飲み
銀河戦/決勝も、渡辺明二冠の軍門に下った 糸谷六段。
つまりは全部、準優勝。。
タイトルを持つ者と持たない者の間には
決して埋めることの出来ない大きな溝があるのと同様に
棋戦優勝者と、「準」優勝者の間にも天と地ほどの差が当然存在。
敗れた相手が現代将棋を代表する大物棋士二人であっただけに
「引き立て役」感は時が経つにつれ、ことさら大きくなっており
「準優勝」が実績として後何年、将棋ファンの記憶に残っているのか。。
その現実の厳しさ、悔しさは
糸谷六段自身が一番自覚し、実感しているはず。
大阪大学大学院文学研究科に籍を置く
現代的なインテリ棋士でもある糸谷六段は現在23歳。
早指しが得意な反面
持ち時間の長い棋戦では集中力が続かない、波があると指摘される
課題を克服してタイトル戦線で大暴れし、存在感を示したい今シーズン。
まだトップクラスの棋士とは対戦しておらず
今後、各タイトル戦の予選を勝ちあがっていった時にこそ
真価が問われます。。
そして、そこで
糸谷六段の代名詞として、とても良く似合う
「大物食い」をみせて欲しいところであります。。それも連発で。
糸谷六段と同じく
「関西若手四天王」の一角を占める豊島将之七段も
好調なスタートを切ったひとり。
今シーズンはここまで10戦して9勝1敗(.900)。
現在は7連勝中。
まだ22歳になったばかりながら
2度の最多勝利 (09年度、11年度)、勝利率1位 (09年度)
を獲得。20歳だった10年度には第60期王将戦に挑戦 するなど
すでにトップクラスの実績を積み上げる逸材中の逸材。
07年の4月。16歳でデビューを果たして以来
ここまでのプロ通算成績が263戦192勝71敗(.730)。
今期もすでに
屋敷伸之九段(4月に二度対戦して1勝1敗)や
橋本祟載八段 とA級棋士とも手をあわせ、互角以上の戦跡を残します。
今後も、豊島七段なら
白星をどんどん積み上げていくはずであり
「まだ、今シーズンの序の口である」と、言えるのかも知れません。
上記の2名以外で目をひく、好調棋士としましては。。
結婚して年貢を納めたことにより、ついに私生活が安定したのか
青森が生んだロック・スター・行方尚史八段も今期ここまで7勝1敗。
好スタートを切っています。
パワフルな振り飛車から、最近は居飛車も指しこなし
芸域を広げる鈴木大介八段も7戦6勝1敗。
その鈴木八段に憧れ、「将棋世界」誌で対談も果たした
永瀬拓矢五段も9勝2敗とロケットダッシュ。。
などなど
逆に
不本意なスタートとなり、心配される棋士といえば
何といっても、久保利明九段の名前があがります。。
今期ここまで4戦して1勝3敗。
昨年度は
さらに順位戦でもA級陥落とトリプルパンチを食らった久保九段。
年明けから7連敗で開幕をむかえた
今シーズンも連敗スタート。。
第71期順位戦B級1組/開幕戦・鈴木大介八段戦も落とし
黒星スタートと、全く元気がありません。。
「石田流三間飛車」「ゴキゲン中飛車」の二枚看板で
勝ちまくり、二冠を手にした反動があまりにも大きくのしかかっている
印象の久保九段。。
順位戦/開幕戦では居飛車を指すなど
試行錯誤は見て取れますが、苦悩はまだしばらく続きそうな気配も。。
それでも一時代を築いた振り飛車党の雄として
今後の巻き返しに期待したいところであります。。