言わずと知れた、かきふらい原作の大人気テレビアニメ、待望の映画化。卒業を間近に控えた軽音部の3年生4人が、唯一の後輩部員とともに訪れた卒業旅行先のロンドンで繰り広げる、ゆるやかな青春の姿を描く。
実は小生自身、テレビシリーズは1期と2期の1話しか観ておらず、ネット等で騒がれているほどハマってもいないのだが、一応話題作ではあるし、「気になったらとりあえず観ておけ」のスローガンに従い、鑑賞に至った本作。
ために、いわゆる熱狂的ファンの人達からすれば「あのシーンは〇〇話の〇〇の場面に繋がってるんだよ」とか、「あれは××の××にかかってんだよJKそんな事も知らねぇのか」とか思われる部分も多少なりあるかもしれないが、正直
さておき。
ロンドン旅行と卒業式前後という、映画ならではの要素はあるにせよ、みんなで集まってお茶を飲み、お菓子を食べながら談笑し、のんびりまったりしつつ、時々練習という流れは、テレビシリーズとほぼ同じ。
(あくまで1stシーズンを観た限りでは)
特別特殊でもない女子高生達の、ゆるやかな日常を描いた作品だけに、突然テロリストに学校を占拠されるだの、マフィアに命を狙われるだの、国家存亡の鍵となる重大な秘密を握るだの劇的なドラマ性は一切なく、ただひたすらに、騒がしくも楽しい、当たり前の日々を追う事に終始。
今から十数年前、某専門学校に通っている頃、講師の方に「実は物語で一番難しいのは、普通の人間同士を描く事だ」と言われた事がある。
普段の彼女らの何気ない会話や、他愛のないじゃれ合い。そうしたいわば、普通なら物語を構築していく過程で可能な限りそぎ落としていく部分をあえて汲み上げ、繊細に積み重ねていく事で、あたかも彼女らの生活を切り取り、ダイジェストで観ているかのようなリアリズムを生み出している。
俗な例えでアレだが、通常ならツモと同時に切っていくような牌を揃えて作る、国士無双のような作成法。一見簡単なようだが、ヘタをすれば愚にもつかない平凡、陳腐な代物に成り下がってしまうため、非常に扱いは難しい。入念なキャラクターの彫り下げと、細部に神経を行き届かせる繊細さが求められる高等技術である。
まあ、国士無双は少々褒めすぎとしても、純チャン三色ぐらいの完成度は充分にあると評したい。
途中、HTTメンバーがハプニングに見舞われる、いわゆる山場もそれなりに登場するが、劇的な場面展開などは一切せずに、むしろシームレスに「いつのまにかそういう事になってた」的に展開していくのも、非常に面白い。
見た目プニッとした登場人物に対し、恐ろしいまでに描き込まれた背景、フェティシズム溢れるキャメラワーク等もまた、アニメであるはずの彼女らに実体感をもたらし、アニメの語源どおり「命を吹き込む」要因として、お互いを相乗させている点も見逃せない。
1期2期合わせて40話、何でもない毎日の積み重ねのうちに育まれてきたそれぞれの想いが、1つの歌に託され、後輩のあずにゃんへと届けられるラストシーンは、長い間本作を応援してきたファンにとっては感涙必至の、まさに本作を締めくくるに相応しい秀逸のカット。
過度な演出を施さず、あくまで「いつもの」の先に、それがあったという終わり方。誰もがどこかで成長し、どこかで変化し、どこかで離れていってしまうけど、今ここにある気持ちは不滅なんだと、雄弁に物語ってくれたと感じた。
時折、本作を「変化も成長も拒否した少女たちの物語」あるいは「閉じられた楽園」と評する人もいるようだが、このラストを観る限り、彼女達は自分の手で楽園に別れを告げるために、あの曲をあずにゃんにプレゼントしたのではないかと察する。
同時に、それこそが、彼女たちにとって最大の成長と変化(もしくは、その兆候)ではなかったのかと、小生は思いたい。
ファンの人は嫌な顔をするだろうが、ために小生は本作、少なくともHTT4人の物語は、ここで終決を見るのが最も美しいと断ずる。
高校と同時に「けいおん!」という物語からも卒業した彼女等は、いわば登場人物として役割を十全に果たした者達。我ながらおかしな表現だが、あずにゃんに歌を託した時点で、彼女達の「物語としての物語」は決着を迎えており、これ以上は我々の目の届かない場所、せめてファンの心の中か、作者の頭の中にあればいい。
言い換えればあの歌は、あずにゃんというフィルターを通して、本作を愛してくれた人達へと向けられた、感謝とサヨナラを伝える歌だったとも受け取れる。
既に「大学編」なるモノがあるそうだが、少なくともアニメシリーズは、ここが最良の着地点であり、最高の到達点であると断ずる。
さて、相変わらず感想だかなんだかさっぱり分からん文章を並べたところで、少々苦言を。
テレビシリーズの映画化という事で、多少なり本編を視聴していないと分かりづらい部分があるのは詮方ないとして、本作を初めて観る人のため、せめて冒頭に主要メンバーの名前をテロップで出す、ぐらいの配慮は欲しかったところ。
まあ、そういった不自然な演出の類は、極力排したかったのかと察するし、そもそもテレビシリーズを観てない人は、本作を観に来ないかもしれないが…。
それから、これはどのアニメ映画にも言える事だが、果たして本作をヲタク以外の人(ここでは「日常的にアニメを複数本観ていない、または金を払ってまで観ようとしない人」と定義する)が観たとして、この世界観について来れるのかと、少々疑問を抱いてしまった。
世の中には「日常系アニメなんて、実写でやればいいじゃん。アニメでやる意味が分からん」などと言う輩も少なくなく、もちろん本作は、アニメでしか表現しえない要素を多分に含んではいるのだが、そういった連中をも黙らせるだけの許容が本作にあるかと聞かれれば、正直微妙といわざるを得ない。
ヒットが約束されているような作品だけに、その辺をもう少しうまくやっていただきたかった気もするが、本作を「長年見続けてきたファンのためのボーナストラック」だと考えると…。うーん。
熱烈ファンほど過大評価も、アンチほど過小評価もせずに、あくまで個人的な見解のみを書いたつもりだが、はてさて反応はいかに。
とりあえず本作での一番印象に残ったのは、澪はぱんつはいてない!という点。これに尽きるな、ウン(違)。
そんなわけで、小生の、この映画に対する評価は…、
☆☆☆★★++
星3つプラスプラス!!
最後にもう一つだけ。
ネット上でも噂になっている、例の「半券シート」。前々から言っている事だが、「半券集めてオリジナルグッズ云々」というのは、作品作りに携わる者にとって、絶対にやってはいけない愚行である。
客に複数回鑑賞を強要するこの行為は、「まず商売ありき、金儲けありき」という印象を客に植え付け、結果、作品の出来如何に関わらず自らを貶める要因ともなりえる。
金儲けが悪い事とは言わないが、それに嫌悪感を覚える人も少なくない。これはアニメ業界、否、映画業界全体を蝕む、実に悪しき習慣の一つである。
同じ映画を作るのならば、何度も観なきゃいけない作品より、何度も観たくなる作品作りを心がけていただくよう、お願い申し上げたい。
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