美花です♪


大変に賑わっている蓮キョ☆メロキュン推進!「ラブコラボ研究所」ですが、お楽しみ頂けているでしょうか?


リレーに引き続き、研究所ではお題でお話を研究員が書くという研究発表が開始されました音譜


蓮キョ☆メロキュン推進!「ラブコラボ研究所」


   桜お題テーマ「桜」桜


第一弾 <夜桜・風月様作>  4月10日アップ


第二弾 <桜の檻・sei様作>  4月11日アップ


第三弾 <幻想桜・ピコ様作>  4月12日アップ


第四弾 <そのはなびら、つかまえた。・マックちゃん様作>  4月13日アップ


桜というあっと言う間に見頃を逃してしまうテーマの為、こちらは更新が続くまで毎日更新されるという、とっても旬なネタです桜


その第5弾を私美花が書かせて頂きました!


皆様が素敵なお話を書かれているので、この辺で私が少し雰囲気をドタバタ風味にしてみても大丈夫よね…?と1人どきどき。


あんまり甘さを意識していなかった上、メロキュン度もそれほどないような気がします(^▽^;)

最初に謝っておきます、ごごご、ごめんなさい~><


それでもいいよ!という素敵な方、どうぞ♪


***


*花曇の午後に* 



「…あーあ、お花が全部散っちゃうわ…」

昼下がりの所属事務所LMEの廊下。

窓の外に目を遣り、ラブミー部の部室に向かう足を止めたキョーコはひとりごちる。

そんな彼女の目線の先には、強い風を受ける桜の並木があった。

4月の半ばを向かえ一斉に咲き綻んだ桜だったが、今日の天気は曇りの上に、風がとても強かった。

訪れた事務所前の桜並木は、気がつけば満開を迎え、いつの間にか見頃の時期を過ぎていたのだ。

今も桜並木は強風に晒され、薄紅色の花びらを無残に散らしている。
並木道には散ってしまった花びらが山となって重なり合い、桜の可愛らしさもその情緒も、そこにはかけらだって残していなかった。

桜の淡いピンクと空の水色の綺麗なコントラストを、桜の木の下から見上げることが春の楽しみの一つでもあるキョーコにとっては、この強風はかなり恨めしいものだった。

この風のせいで、都内の桜の大半は今日のうちに散ってしまいそうだ。

しかも、そんな桜を見下ろす空は、今にも雨が降りそうな空模様で…
キョーコは眉尻を下げ、頭上に広がる曇天を不満げに仰ぎ見る。

雲の立ち込める暗い空も、花びらを散らす強い風も、全てが憂鬱で気が滅入ることこの上ない。

今年は忙しくて、ろくにお花見も出来なかった。

お仕事をたくさん頂けることは、勿論とってもありがたいことなのだけど…
春も盛りのこの時期、桜に目を向ける余裕もなかったなんて、少し切ないことだと思う。

桜をまったく堪能出来ていないまま過ぎる春を思って、キョーコが1人、小さく溜息を漏らしていたら。

「最上さん。廊下で1人で溜息なんて、どうしたの?」

いきなり背後からそんな声を掛けられて。

聞き覚えのありすぎるその艶やかな声に、キョーコは慌てて振り返って…
そこに想像通りの相手を見つけて、驚きに目を瞠ってしまう。

背後には華やかな美貌に笑みを浮かべた、先輩俳優の長身があったのだ。

「お疲れ様です、敦賀さん…!え、でも、どうしてこちらに…?帰国は確か、明日のはずでしたよね?」

その姿は、本当だったらここにあるはずのない姿なのだ、だからキョーコは、目の前の彼にそう問い掛ける。

先週末に顔を合わせた時、アルマンディの写真撮影で1週間ほど海外に出ると言う予定を彼から直接聞いていたのだ。

海外の生活で環境が変わる中、ただでさえ食に執着のない彼の食生活を思い、ものすごく心配をした自分をキョーコはよく覚えている。

蓮は素晴らしい先輩だけど、こと食事に関してキョーコの彼への信頼は0に等しかった。

どうしてそんな敦賀さんが、今、ここにいるのかしら?

不思議に思って瞳を瞬かせるキョーコに、蓮は柔らかく微笑んで、

「お疲れ様、最上さん。撮影のスケジュールが予定よりもずっと順調に進んだんだ、そのお陰で1日早く帰れたんだよ。午前中に日本に着いて、今はその報告に事務所に顔を出したところ」

薄手のシャツにジャケットとジーンズと言う、言われてみればいかにも移動用のラフな姿の彼はそう言うと、隣に並んで一緒に窓から外を眺める。

「窓の外がどうかした?随分、深刻そうに見ていたけど」

逆に不思議そうに聞かれて、キョーコは苦笑を零す。

「いえ、たいしたことはないんですけど…この風で、桜が散っちゃうなーって思いまして」
「桜?ああ、そうか…確かに。この風では、桜はもたないだろうね」

つられるように蓮も桜に目線を落とす。

桜並木は強い風を受け、花びらの雨を盛んに降らせていた。
その様子を間近で見ているからか、朝見た時よりも桜の薄紅色が減り、葉と茎が多く見えてきているように思えてしまう。

満開だった時の桜の見事な姿は、今はもう、残念なことに見る影もなかった。


蓮の言葉に、キョーコは肩を落とす。

「ですよねえ…がっかりです、私、今年はちゃんとしたお花見を一度もしていません」

そうしてもう一度大きく溜息を吐くのに、

「そうなんだ?でも言われてみれば、俺はむしろ、桜を見るのも今年は今が初めてかも」

隣の蓮が思いついたようにそんなことを言うのに、キョーコはそうか!と思い至る。

1週間前に国外に出た蓮を追うようにして、都内の桜が綻び始めたのだ。
今日海外から日本に帰って来たばかりの彼がそう言うのも、当然のことだった。

「私達、お互い残念ですね…日本人なのに、桜の見頃を見逃してしまうなんて」

本当に残念に思ったキョーコが眉尻を下げて蓮を見上げると、窓枠に頬杖をついた蓮は暫し考えるような素振りを見せて。

「最上さんは、明日の仕事の予定はどんな感じ?」

いきなり、そんなことを聞いてきた。

唐突の話題の変化にきょとんとなったキョーコは、その質問に小首を傾げる。

「仕事の予定、ですか?明日は午前中がドラマ撮影で、午後からはお休みです」

久々のお休みなのでそのまま学校に行こうかとも思ったのだけれど、スタジオが少し離れたところにあるため、移動時間を考えるとろくに授業を受けられないまま帰ることになりそうで諦めたのだ。

そんなふうに答えると…

「よかった、それじゃ明日は俺と一緒にお花見に行こうか。俺も明日は休みなんだ、撮影が早く終わったお陰でね」

そう言った蓮は、キョーコを見つめて嬉しそうにふわりと笑みを零した。

その笑顔は、蓮がTVや雑誌などで見せる余所行きの笑顔ではない、限られた人だけに見せる人懐こい笑顔だった。

華やかだけど温かみのあるその笑顔に、思わずどきりとなる。
次いでそんな自分に大きく焦り、慌てたキョーコは窓の外に目線を逸らして。

「で、でも、お花見って…桜はもう、この通り散っちゃってますよ?桜以外でってことですか…?」

妙に逸る心を抱えながら蓮に問うと、隣で微笑む気配がして。

「ほら、うちのマンションの前に大きな公園があるだろう?あそこにも桜があるんだけど、いつも1週間くらい開花が遅れるんだ。種類の違いなのかな。きっと今頃も、まだまだ三分咲きくらいだと思うよ」

そんな蓮の言葉に、キョーコはぱあっと表情を輝かせてしまう。

「え、そうなんですか!?じゃあ、明日は凄く温かいって言うから、もしかしたら満開になるかも…!?」

温かな日差しの中でのんびりと見上げる満開の桜を想像し、キョーコの心は瞬く間にうきうきと高揚してくる。

考えただけでも嬉しくて堪らず、その気持ちを伝えたくて何も考えないまま隣を振り仰ぐと、そこには楽しそうな表情で自分を見つめる蓮がいて…

キョーコは不意のことに、身構えることもできずにそのまま頬をほわんと染めてしまう。
そしてそういう自分にも動揺し余計に顔が赤くなってきてしまって、軽いパニックを起こしてしまう。

わ、私ったら、何をこんなに過剰反応しているの!?

…敦賀さんに様子がおかしいって、怪しまれちゃうじゃない…!!

動揺を抱えたまま、キョーコがわたわたしているのに。

「うん、多分そうなると思うよ。明日は平日だし、人もそう多くないだろうから、芸能人だって見つかる心配もないだろうし」

気にする様子もなくそう言った蓮は、

「最上さん、明日はどこのスタジオで撮影なの?」

自然な調子で問い掛けてくる。

「え、あ、Dスタジオですけど…」
「Dスタジオか、じゃあ、12時過ぎぐらいに迎えに行くよ」

ぽろりと答えると、あっさり返ってきた台詞にキョーコは仰天する。

「迎え!?そ、そんな、いけません!敦賀さんが私をお迎えなんて…恐れ多い!!でしたら私がそちらに行きます、だから明日はゆっくりなさっていて下さい。帰国したばかりで久し振りのご自宅なんですから」
「遠慮しないで。たまの休みに家にいるのもつまらないし、車も一週間置きっ放しだったから、動かしたいしね」
「え、あ、そ、そう言うものなんですか?」

車を動かしたい…じゃあ、私のお迎えは、そのついでなのね?
だったら、お言葉に甘えてしまってもいいのかしら…?

車になんて詳しくないキョーコは、蓮の言葉をそのまま信じてしまう。

蓮はそんなキョーコを目元を細めて見つめ、

「うん、そうなんです。じゃあ、明日はスタジオに着いたら連絡を入れるから」
「は、はい!」

そうして、お花見の予定は瞬く間に決定して。

これから社長室に用があると言う蓮を見送るキョーコに、彼は「ああ、そうそう」と思いついたように振り返った。

「最上さん、明日は可愛い格好で来てね?」
「え…か、可愛い格好…??」

更に唐突な彼の言葉に瞬きを繰り返すと、

「ほら、せっかくのデートだろう?だから、そういう格好で来て」

悪戯っぽい表情を白皙の美貌にひらめかせ、楽しそうに唇を引き上げて、蓮はそんなことを言ったのだ。

驚くべき言葉に目を瞠ったキョーコは、僅かに遅れてその言葉の意味をしっかり理解して…

一気にその頬を真っ赤にしてしまった。

「デッ、デート…!!?ちょ、な、つ、敦賀さん!?言葉選びがおかしいです、デ、デートは、違います!だって、そんなはずはありませんもの…!!」
「違うの?でも、男女が2人きりで会うんだから、これはやっぱりデートじゃない?」
「2人きりって!!そ、それはそうですけど、でも、やっぱり、ち、ちちち、違いますよ…!?」
「まあまあ、そう言わずに。せっかくなんだから、ね?」

…せっかくって、どういうこと…!?

混乱を抱えたキョーコが愕然となるのに、蓮は笑って、

「それじゃ、また明日。楽しみにしているよ、最上さん」

そう言って手を振ると、その場を颯爽とした足取りで後にしていってしまった。

…窓際に残されたキョーコは、思わず、ふらふらと窓枠に縋ってしまう。

デ、デートって言うのは、好き合っている男女が、更に親しくなることを目的に会うことを言うんじゃないの…!?

おかしい、おかしいわ、いつの間に私の認識と世間の認識がずれていたの…!!?

ドキドキと高鳴る胸を抱えて、上気する頬を押さえて、キョーコは混乱の嵐に巻き込まれる。

…でも、だけど…

唖然としつつも、キョーコの心はこれまでの憂鬱を吹き飛ばしたみたいに、あっという間にざわめいてきていた。

明日のことを思うと、いてもたってもいられなくなってしまう。

「ど、どうしよう、敦賀さんと2人でお花見って!ああ、お弁当、そうよ、お弁当作らなくちゃね!?お昼時だし、敦賀さん放って置いたらご飯なんて気にもしなさそうだし!!この機会にこそ、敦賀さんの好物をたくさん詰めてしっかりお食事をして頂かないと…え、か、可愛い服って、どんなの…!?いえ、違う、違うわよ、キョーコ!これはデデ、デートじゃないから、普通でいいのよ!でも…普通って…!!?」

胸が騒いで、心が浮き立って、何をどこから考えたらいいのか分からなくなる。

そして、蓮の微笑みを思い出すと…きゅうっと胸が締め付けられた。
沈んでいた心が色付いたように華やかになり、鮮やかに彩度を深めていって…


心が、気持ちが、ふわふわと踊りだす。



この感覚は、一体どういうこと…??


その理由を探るのに精一杯で、これまでずっと気にやんでいた目の前で散りゆく桜の花びらも雨模様の暗い空も、キョーコの中をあっさりと素通りして行った。


心に残るのは、明日への戸惑いと…
本人は認めていないけれど、大きな大きな期待と喜びで。


…こうして。

LMEでは、顔を真っ赤にさせたキョーコが廊下の窓際で長く長く葛藤する姿が、そして、優美な唇に幸せそうな笑みを浮かべて社長室に向かう蓮の姿が見かけられた。



花の季節はまだまだこれから…


漸く、始まりを迎えたばかりだった。



*END*


明太さん、桜を散らせてしまいましたが、また素敵に咲かせて下さいませねドキドキ


ではでは!