White orchid | S w e e t 

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主に名探偵コナンのノーマルカップリング(主に新蘭)を中心とした二次創作ブログです。
イラストや小説をひっそりと更新中。
気の合う方は気軽にコメント下さると嬉しいです。
※一部年齢指定作品も混ざっていますのでご注意ください。

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俺は工藤新一。
高校2年の始め、ある事件に首を突っ込んで体が縮んでしまうという、なんとも奇怪な体験をした。
それから江戸川コナンという偽りの姿で元の体に戻れる事をずっと望み続けていた。
そしてついに、俺をそんな目に合わせた黒組織を壊滅させて元の体を取り戻したのは高校2年の終わりに近づいた頃。
高校生活で一番充実した日々を過ごせる筈であるその貴重な日々の大半を俺は小学一年生の体で過ごしてきたのだ。
まぁ、今更悔やんでも遅い。
これから充実した日々を過ごしていけばいいじゃないか。
体が戻ってまず始めにしたかった事。



蘭にずっと言いたかった事を伝える事。



ずっと待っていてくれた愛しいアイツに・・・・





――――――――・・・そう思っていたのに現実とは思い通りにいかないもので・・・。

黒の組織の事件処理やらの事情聴取や、やっと復帰できた学校では気が遠くなる程の課題や補習・・・
その上無遅刻、無欠席、学年末テストで学年3位以内を取る・・・などで普通では考えられない程の多忙な日々を送っていて気付けば高校2年の12月・・・。
もうすぐ年が明けようてしている。
事件の方はやっと先月の月末で落ち着いたが、
蘭とはすれ違いが続いていた。
唯一顔を合わせられる学校でさえ滅多にゆっくり話す事など出来ない。
しかし、たまに俺の不規則な食生活を気遣ってか夕飯を作っておいてくれる事もあった。
警察から帰宅してそれを目にして蘭の優しさを再度確認しながらも、
結局想いは伝えられないまま。
今しかない!というここぞという場ではいつも邪魔が入るし・・・・



・・・・・・いいかげん、やばいよな。



12月・・・まさかこんなに掛かるとは思わなかった。



因みに今は授業中。
後ろの席から蘭の姿を盗み見る。


コナンの時に聞かされた突然の告白。

これでもかという程思い知らされた今まで秘められた蘭の一途な想い。


それにやっと答えられる筈なのにな。

早く伝えたくて仕方のない筈だったのに。

たった一言言ってやれば済むのに。

どうして言えないんだ?



あぁ~くそっ!!

髪を掻き乱す。



周りの景色は変わらず動き続けて、時間は俺のために止まってはくれないようだ。

:::





キーンコーンカーンコーン


「おい、工藤!!」

「あん?」


授業終了のチャイムと同時にクラスメートでサッカー部に所属している坂本が声を掛けてきた。


「お前さ、冬休みサッカー部の合宿参加しねぇ?」

「合宿?」

「そ。後輩にお前の華麗な足裁きを披露してやってくれよ。」


今年の1年はたるんでんだよ・・と愚痴をこぼす坂本。


「いつなんだ?」


俺がそう言うと坂本は少し間が悪そうな顔をして言った。


「・・・24~27日。」


24日・・・24日って何かあったよーな・・・・

って、オィ!24日ってクリスマス・イブじゃねーか!?



「断る。」

「なっ・・頼むよ工藤~。」


断る俺に縋り付いてくる坂本を払い退けて考え込む。
24日・・・クリスマス。
これしかねーよな!!


俺はすぐさま教室に蘭を探す。
蘭は週番なので黒板を消している。
そっと近づいて。


「あ・・・。」


蘭の手から黒板消しを取って上の方に残った文字を消し去る。


「ありがと。」


久しぶりに見たような新鮮な蘭の笑顔に見惚れつつ自分の目的を思い出す。


「なぁ蘭。」

「何?」

「24日って空いてるか?」

「え。」


ここまできたらこの日しかねーよな。
この日こそ蘭に・・・


「ごめん・・・。」


そうそう・・ごめん・・ってええ??


「へ?」


てっきり蘭の口からは空いていると聞かされると思っていたもので、
思わず目を見開いて黒板消しを落としてしまった。


「あぁ!もぉ、何してるのよ新一!」

「あ・・いや・・・わりぃ。」


蘭が黒板消しを拾う。

―――――イヤそうじゃなくてさ。


「何かあんのか?」

「え?あぁ・・言ってなかったっけ?空手部のね、合宿があるの。」

「合宿!?」

「そう。クリスマスってゆう大イベントの日に合宿なんて最初はみんな反対してたんだけどサッカー部も同じ日に合宿が重なって・・一緒にクリスマスパーティをしようなんて話がでたら急に盛り上がってるのよ。」


楽しそうに話す蘭。
俺は楽しくねぇよ。
・・・ってそうじゃなくてサッカー部!?
あんなヤロー共も一緒なのかよ!?
その辺認められねえ。
俺の思考は素早く組み替えられる。


「24日・・何か大事な用だったの?」


蘭が申し訳なさそうな顔で伺ってきた。
それに笑って答える。


「いや・・・大丈夫だよ。今予定が決まったから。」

「?・・そう。」


その日の放課後、
合宿に急遽参加すると坂本に新一が伝えたというのは言うまでもない。


 

:::




ピ・ポ・パ・ポ


trrrrrr


「もしもし・・・新一?」

「よぉ、突然わりぃな。」

「ううん。どうしたの?」

「いや、たいした用でもねーんだけど・・・明日からお前合宿だろ?」

「そぉだけど?」


蘭のきょとんとした声が耳に入ると俺は口端を得意気に上げて言ってやった。


「俺もさ、明日からサッカー部の合宿参加すんだ。お前集合何時?」

「え?サッカー部?・・だって新一部活は辞めたんじゃ・・。」


蘭は思った通り驚いた様子だ。

「何か坂本が参加しないかっていうからさ・・暫く体動かしてねぇしたまにはいいかなって。」


なぁんてな。

蘭が空手部の合宿に参加するってんならこうするしかねぇよな。
とりあえずイブは一緒にいれる事には代わりねぇし。

だいちあんなサッカー部の輩とクリスマスパーティーなんか仲良くさせられるかっつーの。



・・・・・・・・・・・こう考えると俺って結構嫉妬深いな・・。




「そ・・・そうなんだ。」


気のせいか?
今蘭の声が少し雲っていたような・・・・。


「でさ、何時なんだ?」

「え・・・えと、朝の6:30。」

「お、一緒だ。だったらさ、行く時俺ん家寄ってくんね?」

「え?」

「俺、起きれる自信ねぇ・・・・。」

まぁ実際でも起きれなさそうだけど、一応口実。
朝一緒に行って夜話しがあるって言って・・・・。
昨日徹夜して考えた計画。
早いうちに手うっとかねぇとな。
いつも肝心なとこで邪魔入ったりするし・・。
約束しときゃぁ言わないわけにはいかねぇし。




「もぉ~しょうがないな・・わかった。迎えに行くね。」


蘭は快く・・?承諾してくれた。


「さんきゅ。」




蘭との電話を終えるとすぐに3日前頼んだモノの確認にまたダイヤルをプッシュする。


「あら・・・新ちゃん?どうしたの?」

「ちゃんと例のやつ送ったんだろうな?」

「大丈夫よ!!一番早いやつに頼んだんだからぁ。きっと今日にでも届くはずよ。」

「ならいいけど・・。」

「もぉ~そんな心配しなくても大丈夫よ。新ちゃん頑張ってね!優作と応援してるからvv」

「うっせえ!!じゃぁな。」


そう怒鳴って受話器を投げつけた。

くそぉ・・・本当は母さんになんか頼みたくなかったんだ。
そぉ言っていると家のチャイムが鳴り響いた。
早速例のモノが届いたようだ。
これで準備万端だな。


明日こそ絶対に邪魔が入りませんよーに・・・・・



:::




パチッ

目を無理矢理見開く。
昨日は何だかんだ言って蘭に伝える事を考えたら緊張なんかして・・
気付けば夜中の3時。
そして今は5:00
全然寝てねぇ・・・・
ていうか寝たに入らねぇ。
今になって眠気が襲ってくる。
しかし起きなければいけない。
きっと蘭のことだから遅くても6:00には迎えに来るだろう。
でも今日は俺が蘭を迎えるんだ。


一応登校は制服なのでいつもどおりブレザーを着る。
しかし今日は今年一番の冷え込みのようでそれだけではまだ寒い。
部活で使うウインドブレーカーを上に着る事にする。
ニット帽も被っとくかぁ。
そんな中テレビのアナウンサーが


「今日は本当寒いですねぇ~もしかしたらホワイトクリスマスになるかも。」


といったのを俺は軽く聞き流し昨日届いた例のモノをバックにつめてテレビを消して
家を出た。
今は・・・・5:59
そろそろ来る・・・かな?

家の門に寄りかかる様に座って蘭を待つ。



まだ・・・かな・・・・

今待ち始めて1分もしないうちから蘭が来る事を今か今かと待ち望んでいる自分がいた。
絶対に来るという確信がある俺。


でも蘭にはそんなものは存在しなかった。


今まで“待たせた”分・・。


今日はちゃんと伝えてやろう。


もう二度と“待つ不安”など必要のないことを。






「・・・新一?」

「・・・・・・・・・よぉ。」

「何で外にいるの!?こんなに寒いのに!!」

「なんとなく外で待ってたくなってさ。」


蘭は鼻を赤くして驚いた顔をしていた。


「風邪・・・・引いてもしらないよ?」

「ひかねぇーよ。」

「・・・・・・起きれるなら私来る事なかったね。」


何となく淋し気に言う蘭。
なんだ?


「今日はたまたま起きれただけだからいいんだよ。」


そか・・・と儚げに笑う蘭。
なぁんかひっかるんだよな。
・・・・とりあえず約束しとかねぇと。


「なぁ・・・。」

「何?」

「今日の夜・・さ、」


俺がそう言いかけると蘭は思い出した様に嬉しそうに話した。


「今日はクリスマスパーティだね、楽しみ~。ね、新一!」

蘭が嬉しそうに話すのに


「そうだな・・・・・・・・・・ってそうじゃなくてさ!」


と自分に言い聞かせるように叫ぶと蘭が目を大きく見開いて俺を見てきた。


「し・・新一どうしたの?」


ええぇぇい!!約束するだけだ!!いっちまえ俺!!


「クリスマスパーティーの時ちょっと抜けてくれるか?・・・・・話があんだ。」


言った・・言ったぞ俺!!


「うん。いいけど・・・・。」

「・・・時間できたら呼ぶ・・から。」

「わかった。」


不思議そうに俺を見る蘭。
もぉ後戻りは出来ない。
今日こそ絶対伝えるんだ。


「毛利!」


気付いたらもう学校に着いていてどこかで見たことのある男が門に立っていて
蘭の名を呼んだ。
誰だっけあいつ?
それより何で蘭を呼ぶんだよ?


「・・・・伊藤先輩・・。」


そう言って呟く蘭の目は何処か困った様子で・・・・
先輩?あぁ!そういえば去年卒業した空手部のヤツか。
・・・なんでそんなヤツがいんだ?
ソイツはゆっくりこちらに近づいてきた。
すると蘭が鞄を持つ手を強く握り締めたことに気付いた。


「蘭・・・・・?」


俺の声は聞こえていないようで蘭はそのまま俯いてしまった。
どうしたってんだ?


「今日は招待してくれてありがとな。久しぶりにお前らと部活出来るのがすっげー楽しみだよ。」


部活が出来るって事は・・・OBかなんかで合宿に参加って事か?


「し・・・指導よろしくお願いします・・・新一ごめん。私先に行ってる。」


蘭はそう言って逃げ出す様に走り去ってしまった。


「・・・へ?」


蘭のやつどうしたっていうんだよ?


「・・お前確か工藤だったよな?」


今度はその伊藤とかいうヤツが話しかけてきた。


「はいそうですけど・・・何か?」

「いや・・・そういやお前毛利と付き合ってんだっけか?」


う・・・・。


「いえ・・付き合ってませんよ?」


まだ・・・な。


「ふ~ん・・・・じゃぁ俺もあいつらの部活の頑張りでも見にいくか・・。
じゃぁな工藤。お前も部活・・だよな?頑張れよ。」

「ども・・・。」


なんだ??
なんか・・・・・・・・ひっかかる・・よな?



その時の俺はこれから起こる事にも蘭の曇った表情の意味にも全く気付いていなかった。



:::



「こっちに回してどうすんだ!」

「あっちあいてるぞ。」

「パス回せ!!」

「ボールから目放すなよ!!」


帝丹高校のグラウンドにこんな言葉が飛び交う。
この言葉を発しているのは・・・・


「工藤・・・お前一年以上サッカーしてねぇのに何でそんな動けんだ?」

「お前らが動けなさ過ぎなんだよ!だいち俺はたるんだ一年に指導するために呼ばれたんだろ?あっ・・・そこの一年今の場合はそうじゃなくて・・・。」

「ははは。」


乾いた笑いを漏らす坂本。


俺は久しぶりにサッカーを思いっきりやれる事が嬉しくて本気にサッカーというものを思い出していた。

仲間と走りまわるグラウンド。

ボールを追いかける楽しさ。

泥まみれになっても必死に必死にゴールを目指す。

向かってくるやつを抜く時のスリルと緊張感。

足を放れ勢いのついたボールが鋭い弧を描いてゴールへ入った瞬間の歓声、爽快感。

全てが鮮明に蘇る。

サッカーが好きなのはかわりはしない。




「・・・・・。」



そんな新一を見つめる一つの視線。




「蘭!休憩終わりだよ。」

「あ・・・今行く!!」


そういって道場に戻ろうとした蘭は一度立ち止まって振り返る。


「・・・・・・・。」


何か伝えたいような・・・そんな瞳。


しかし新一はソレに気付く事はなく、蘭はゆっくり前へ向き直り今度こそ道場に戻って行った。



「・・・・・蘭?」


一歩遅れて新一は道場に戻る蘭の後姿を見つける。

気のせいか?何となく今日はいつもの蘭とは違う様な・・。
考え過ぎか?




「工藤~!!集合かかってんぞ!!」


「・・・・・・・おぅ!!」




:::







「はぁぁい空手部とサッカー部の皆さぁん、合宿第一日目の部活動お疲れ様で~す。
今日はクリスマス・イブvv
そしておまちかねこの合宿の一番の楽しみクリスマスパーティーを始めたいと思いまぁす!!」


それを合図にクリスマスパーティーは幕を開けた。

さっきまで疲れた・・・もう嫌だ・・などと嘆いていたやつらは打って変わって大盛り上がり。
いつのまにこんなに用意したんだ?という料理やケーキにお菓子。
おまけによく考えられたゲーム。
絶対こいつらパーティーが目的で来てるよな・・。
たく・・・・調子がいいぜ。

俺はジャージのポケットに入った例のモノを軽く握り締めた。
賑わう部員達の中に蘭を見つける。
決心をして今しかないと蘭の名を呼ぼうとした時・・・


「ら・・・・。」

「おい工藤~何一人で突っ立ってんだよ!!お前もこっちこいよ。」

「へ・・・うわ・・!」


坂本に突然後ろから首に手を掛けられサッカー部員と空手部が数人混ざった中にいれ込まれてしまった。
仕方がないと少し混ざって騒いでから切り出した。


「俺・・ちょっと用があるから、一回抜けるな・・・。」

「用~!?」


さっと振り返って蘭をもう一度探すが今度は見当たらない。
部屋中見まわしてもそこに蘭の姿はなかった。
何処行ったんだ?あいつ・・・・。
さっきまで一緒の輪にいた空手部のヤツに声を掛ける。


「なぁ、蘭どっか行った?」

「え?あ、工藤君。・・・なんかOBで来てくれてる伊藤先輩に呼ばれてどっか行ったよ。
あっ!!そうそう、蘭から工藤君にすぐ戻ってくるから・・って伝言頼まれてたんだ。ごめん。言い忘れてた。」

「・・・・・伊藤?・・・わかった、ありがとな!」


さっき蘭に声掛けようとしたのは・・・・20分前か。
伊藤に呼ばれたのは・・・・言うの忘れるくらいだから10分は経ってるよな?
すぐ戻ってくる?
にしては・・・遅い・・・・よな?
てか伊藤は何用だっていうんだ?
・・・・・ちょっと待て。
朝、伊藤に会った時の蘭おかしかったな・・・・。
やっぱ・・・アイツと関係してんか?

俺は何となく嫌な予感がして蘭を探してみることにした。

合宿専用の建物の中を探しまわる。


「蘭?」


ここにいるんだろうか・・・と蘭の名を呼びながら。
しかし返答どころか人の気配さえ全くない。
どこ行ったんだよ。

ますます嫌な予感は俺の頭を支配しだした。

まさか蘭に手だしてんじゃねぇーだろな。
ふざけんなよ。








どこにいんだよ?


そんな時奥の方にある薄暗いところの扉が少し開いていて光りが漏れていた。

そっと近づく。


「なぁ・・いいかげんあんなやつやめろよ。」


朝聞いた伊藤の声が耳に入ってきた。
俺は扉に隠れる様に聞き耳をいたてた。


「・・・・・アイツ帰ってきても別になんともなってねーじゃん。」


耳に届くのは伊藤の声だけだ。
帰ってきても・・・・って俺のことか?


「別にお前のことなんか想ってねーんだよ。だからやめろって・・な?」


伊藤の口調は段々低くなる。


「さっきからずっと黙ってなんなんだよ?何とかいえよ。」


蘭はだんまりを決め込んでいるようだ。

話しが読めてきた。
俺がコナンだった間にアイツが蘭に言い寄ってきたんだな。
でなんともなってねーってのは俺と進展がなかった事・・・か。
だから俺を想ってるのは止めて自分にしろって訳。


・・・・・何でお前にそんなのを決める権利があんだよ!?
決めるのは蘭本人の意志だろうが!!
それにお望みどおり今から進展しようと思ってたんだよ。
邪魔すんじゃねーよ。

ふつふつと怒りが湧きあがってきた時、ガタンという大きな音がした。


「っいや!!」


同時に蘭の嫌がる声。

俺はすぐさま扉を開けた。


「蘭!!」


俺の目には蘭を押し倒して蘭の首筋に顔を寄せている伊藤が写った。


次の事は一瞬の出来事だった。


「・・・・・っにしてんだよ!!」


そう言って伊藤の胸倉を捕えて顔に殴り掛かった。


その勢いで壁に背中を打つ伊藤。


「・・う!!」


すぐに蘭を起き上がらせて顔を胸元に隠させて抱き寄せてから言ってやった。




「二度と蘭に触るな近づくな。もしまたこんなことがあったら何をしてでもお前を監獄にぶち込んでやる。」







なんの感情もない冷たい表情でただそう言い残すとその場を後にした。
伊藤はその新一の顔を見て金縛りにあったかの様だ。
きっとどんな凶悪犯であろうと逆らう事は出来ないだろうと思わせる程であった。
・・・・・・残ったのは青ざめた顔をして呆然としている伊藤だけであった。




俺は黙ったまま蘭の手を引き外に出た。


合宿場の中庭。
大きな木が暗闇に佇んでいた。


ふと気付くと繋がれた蘭の手は小刻みに震えていた。

はっとして振り向くと蘭の目から涙がポタポタ零れ落ちていた。


「・・・蘭・・大丈夫か?」

「っ・・・・新一ぃ・・・・。」


泣いて震える蘭を見ていたらどうしようもなく抱き締めたくなって、その意志のまま抱き締めていた。


「・・こわっ・・恐かったよ・・・。」

「・・・・もう大丈夫だから・・大丈夫。」


そう言ったと同時に何故伊藤の声が耳に入ってすぐに入らなかったのか悔やんだ。

伊藤のいう言葉はあまりにも自分の情けなさを突付かれた様で・・・。


悔しかった。





蘭が落ち着くまでずっと頭を撫でてやった。

震えは止まってそっと蘭は顔を上げた。


「・・・・ごめん。ありがとう。」


その瞳はまだ潤んでいて。

蘭は静かに俺の腕の中から出て行った。


「へへ・・・自分でどうにかするつもりだったんだけど・・・新一巻き込んじゃった。」

「・・・結局新一に助けられて・・・実はね新一が帰ってくる前に先輩に告白されてたの。」



蘭は俺に背を向けて話しだした。


「先輩にはお世話になったし優しくて空手も強くて好意を持ってたけど、それは恋愛感情なんかじゃなくて・・・。
その時ちゃんとお断りした筈だったんだけど・・・・。」


蘭の声は段々弱々しくなって。





「あのね。その時私には好きな人がいたの。大好きな人が。もちろん今も大好き。」





「・・・蘭。」



「でも・・・私勇気がなくてソレをずっと隠してて・・・・伝えたら今の関係が壊れちゃうんじゃないかって不安だったの。
そしたら先輩にもう止めろって・・・・・止めようかなって一瞬思った。」


「・・・・・・・。」


「でもやっぱりそんなの無理で。そしたら先輩にこんな事させるようになってた。」




蘭はまるで自分が悪いかのような言い方をする。

お前に悪い点なんか一つもないのに。

今思えば一番悪いのは・・・・・・・俺・・・・だよな。


「ねぇ・・・新一。」


「・・・・ん?」







沈黙が続く。





「あ・・・・雪。」


蘭がそういうのに気付いてよく注意して周りを見ると白い雪が静かに降り落ちてきていた。



「初雪・・・・綺麗だね。ホワイトクリスマスだぁ。」


そう言った蘭の横顔は雪に負けず綺麗だった。


本当は伊藤の言葉が内心悔しくて・・・・

負けてる気がして扉を開けなかった。

どんな想い方であったとしてもも蘭に想いを伝えられる事を羨んだ。

小さい頃らずっと一緒にいて何もかも分かっていると思ってその安心に寄りかかって逃げすぎていた。

でも・・・もう逃げないから。

自分で立って立ち向かうから。






「蘭。」


振り向く蘭をじっと見つめて・・・・・












「好きだ。」









「・・・・し・・・んいち?」




「蘭が好きなんだ・・ずっと前から。」



蘭はそれを聞くと両手で顔を隠して泣き出した。



「・・・・・嘘・・・。」

「嘘なんかつかねーよ。」

「・・・・・・だって・・。」

「嘘なんかじゃねー・・・嘘じゃねーから・・・・だから泣くなよ?」


そう言ってまた抱き寄せた。


もう二度と今日みたいな思いはさせないから・・。
もうお前を悩ませる事なんかしないから。


「ずっと蘭の目に写るとこにいる・・・絶対もう一人にさせない。」

「・・・新一。」




「待たせてごめん。」




:::





「なんか・・・夢みたい。」

「夢じゃねーよ。あ・・・そうだ、蘭コレ・・。」

「何?」


俺は今日のために用意した例のモノを蘭に渡した。


「クリスマスプレゼント。」


それを聞くと蘭はそのプレゼントを凝視した。


それから数秒後。


「私・・・何も用意して・・ない。」


黙っていた蘭の口から出た言葉に思わず拍子抜けしてしまう。


「そんなの別に気にすんなよ。」

「でも・・・・・。」

「・・・・とにかく中見てみろよ?」

「う・・うん。」


俺にそう言われて蘭は丁寧にプレゼントの包装を取っていった。


「わぁ・・!!」


包装を取られた箱の中には薄い透き通ったピンクのビンの香水。

香水名は・・・・・



“White orchid”



------------白い蘭。



「世界に一つだけある蘭の名前が入った香水だよ。」


「え・・・・。」


「匂い嗅いでみろよ?」


俺がそう急かすと蘭はキャップを開けて自分の手首に吹き掛けた。


同時に香る優しい清潔な香りは蘭そのものであった。


「良い匂い・・・。」


「だろ?昔母さんが外国で買ってきた香水に混じっててさ、そん時蘭のイメージがして・・
母さんに聞いたら香水名は“白い蘭”って教えてくれたんだ。」


「・・・・ありがとう。大事にするね。」


嬉しそうに笑う蘭。


一昨日考えた計画は半分も上手くいかなかったけど。

蘭の笑った顔が見れたからよしとしよう。

蘭が目の前の木を見つめて一言ー・・・・




「クリスマスツリーみたい。」





蘭の言葉を理解すべく俺も木に目線を移動する。

中庭に出入りするドアから発している部屋の明りが木の周りを淡く輝かせ雪がその微かな光りを交えて木を飾りつける。


それはとてもとても綺麗だった。







「ねぇ・・・プレゼント何がいい?」




・・・蘭がいい。なんて言ったらこいつどうすんだろな?





「・・・蘭がいてくれればそれだけでいい。」




俺のその言葉に蘭は顔を真っ赤にして


「・・・・・馬鹿。」


あれ・・・・?俺そういえば・・まだ蘭から聞いてなくねー?


「なぁ・・蘭、返事は?」


「へ?」


にっこり笑ってやる。


「・・・・・・。」


「聞こえねー。」


「~~・・・・・好き!大好き!!」


トマトよりもっと赤いんじゃないかというほど顔を赤くした蘭から聞かされたこの言葉に思わず笑ってしまった。

白い蘭・・・とは正反対・・だな。





次の日空手部の指導にきていた伊藤先輩とやらは急用が出来たとかどうとかという理由をつけて帰ったそうだ。




長い長い俺たちの片想いはついに幕を閉じ。






柔らかな香りと自然の作りだす輝きと共に新しい二人の始まりを訪れさせた。







Fin






:::後書き

長すぎ。


最後まで読んで下さった方・・・本当にありがとうございました。


改めて読み返してみると本当にまとまりのない最低なもので・・・・

恥ずかしくもなりましたが・・・・アップしちゃいました。



2004.12.10. のクリスマス企画小説でした。




2010.05.16 kako





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