28.最後のキス | S w e e t 

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主に名探偵コナンのノーマルカップリング(主に新蘭)を中心とした二次創作ブログです。
イラストや小説をひっそりと更新中。
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※バッドエドです。ご注意ください。





2 8 . 最 後 の




そこには、たった2人しかいないのに。
無情に広がる大きな部屋は。
その二人の体温など受け付けないように。

しんとして。


冷たい。


一人暮しをしている日々の中でも。
これ程虚しく感じたのは初めてだと新一は思う。


きっと自分の心は凍りついている。


しかし。

そんな事にも気付かない程。
思考はずっと固まったままだった。





愛しかった。
本当に・・・。





こんな言葉じゃ表現しきれやしない。

永遠に手放したくなんてなかった。





愛してる。
今でも。





確かな愛が目の前に存在する筈なのに。
目の前のかけがえのない大切な人は。
俯いたまま、新一を見ようとはしなかった。


「・・・・・・蘭。」


新一が名前を呼ぶと。
その人物は肩を小さく震わせた。



「このままじゃ・・・・・キリがないだろう?」



新一は驚いた。

まさか自分から口にするとは思わなかった。

自分はこれ程人間が出来ていたのかと。
本当は弱いと気付き初めていた自分を。

また強いと思い込んだ。

こんな自分を誉めてやりたいと・・・・。


「ご・・・ごめんなさい・・・。」


聞き取れるか取れないか際どい声が。
消えかけながら新一の耳に届いた。









今日、1つの恋人達が別れを遂げる。








「・・・あやまるなって。」


新一の苦笑した顔をそっと見上げた蘭の瞳は。
潤みだした。


「ごめっ・・・・弱くて・・・・わ・・たし、弱すぎる・・よね?」


蘭は震える唇を掌で抑えた。


「お前に非はないよ・・・あるとすれば俺だ。」

「ちがっ!・・・・違うよ。」


新一の言葉に蘭はすぐさま食いついてきた。


が。


すぐにその声は小さくなっていく。


そのまま2人は言葉を失った。
また冷たい部屋が。
2人を包み込む。

すると新一がカチカチと音を立てて秒を打つ壁時計を見た。


「・・・よし・・・時計の針が19時を指したら・・・・・・。」












「・・・終わりにしよう。」














「・・・・・っ。」





“終わりにしよう。”


つい最近まで。

違う。

きっと。

今でも。


大事過ぎて仕方なかった人から言われた一言。


これ程苦しくて。
悲しい言葉はない。


蘭にだって考えられなかった。


この恋に終わりがくるなんて。


けれど。

そうするしかない。

という結論しか。
2人には出てこなかった。


こんな別れをして。


いいのか。


2人で決めた事。


きっと間違いではない。


それなのに。





“2人の日々”は・・・・





どんな恋人達よりも。








深すぎた。








新一の指定した時刻まであと5分。


5分が限界だと思う。
それ以上今の状態が続けば。
きっとためらってしまう事に気付いていたから。


その5分が・・・。
5分だけが、2人を繋いでくれる特別な時間。


あと5分で。


他人になってしまう。


なんて簡単で残酷なんだろう。





恋が終わる。





それはどういう意味なのだろう。

相手に非がないからこそ・・・・つら過ぎる決意。
どんなに考えても。
悩んでも。
悪くはない。
誰も悪くはない。


仕方がない。


後、針が3周したら・・・・・・。



どうすれば。





この恋を忘れられるというのだろう。





2人は知ってる。











“忘れられやしない。”











「私・・・普通に出来る・・・かな?」


つい口にしてしまった。


「・・・・もう・・幼馴染には戻れないかな。」


これ以上。

何を言うのだろう。


「未来に昔の私達はいないのか・・・な?」


でも・・・止まらない。


例えいけないと分かっていても。


「戻れな・・・・っ・・・。」


とめどない涙が蘭の頬を濡らしていた。
そんな蘭の顔を影が覆った。





最後のキス。





「新っ・・・・だ・・だめだよ!」





蘭は必死に新一に抵抗した。
けれど新一の掌は蘭の両手首をたやすく押さえ。


止めようとはしなかった。


激しくて・・・。


無理矢理、想いをぶつけられているような。


そんなキス。


蘭は涙を流したまま次第に抵抗を止めた。


この温もりも。
感情も。
時に感じるささやかな甘い恐怖。

優しい手。
指。
唇。

互いの愛を知って。
交じり合えた喜び。
数え切れない愛。

唇から感じる、極上で残酷な想い。




今日までの2人の時間は全て。


このキスが終われば。





なくなってしまうのだろうか。





だったら尚更。





最後のキスを終えるつもりなんて・・・・・・。








ボーーーーン








時計の針は19時を指していた。


「・・・・・・。」

「新・・・・一・・・・。」


新一の動きが止まる。
蘭が見上げると。


「・・・っ!?」


俯いている新一の姿が一気に脳裏に焼き付く。


これほど切ない彼の姿は見た事がなかった。


「・・・・けょ・・。」


「・・・え?」


「いけよ・・・。」


ゆっくりと蘭の体から離れる新一。


蘭の涙は溢れる事しか知らないようだ。





「・・・・・っ・・・新一・・・。」





「行けって・・・!!!」





力強く怒鳴られたはずなのに。
その声は弱くて。
まるで好きなものを取り上げられた。
子供のようで。


蘭の瞳は見ずに。


蘭の顔の横についた手は。
微かに震えていて。



「ごめんね・・・・大好きよ。」



ふわっと微笑んで。






そっと口付けて・・・。








蘭からの最後のキス。








ほんの一瞬の出来事。








「さよ・・・なら。」








新一の体をすり抜けて。
蘭は新一の家を飛び出した。


飛び出した夜空には。


淡くそして偉大に浮かぶ満月。


立ち止まる足。


蘭はその場に座り込んだ。


そして月を見上げて。


綺麗な涙を流し続けた。







今1つの恋人達が別れを告げた。




Fin





:::後書き


暗い!



二人が別れる事は決してないでしょう。
けれど、まだ子供な二人はきっとこんな道に進む事があるような気もします。
お互いが好きで好きで。
大事で大事で。
離したくないからこそ。
手放すしかない。
続きを書くつもりではないですが。
願わくばまた二人は恋に落ちますよーに。
こんなお話でスミマセン。


2005.12.01 作品   



2010.05.16 kako



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