「臨床医からの質問 ②」  の続き



5)長期間の治療歴(10,20年以上)を持つ双極性障害の患者さんの配偶者(特に妻)慢性の疲弊、本人への無頓着、無関心・・・・・に対面、対応する際の心構え、工夫について。特に「治療者」が本人と配偶者、家族の板ばさみになる状況が容易におこりうるので・・・・・。



慢性の人で、家族がくたびれるのは薬物療法がうまくいってないのだと思います。そして「精神の持ちようなんかで変わるものではなくて、春夏秋冬みたいなもので、波が来たときは台風と同じ」と家族や本人に言うのが定石です。脳の病気。躁状態のときは、だいたい酔っ払いに接するのと同じように接するしかないです。


私は躁状態の人と接するのが好きでね。躁状態の人を入院させるのが上手よ。「あんたっ、入院せにゃっダメじゃがね。ほらっ、もう保護室とわかるじゃろぅ。あんたもようわかっとるから保護室。はい、行きましょ」とか(会場笑)。初診の人でもね。上手です。




6)双極性のうつ相での抗うつ剤の使用についてご意見をお聞かせ下さい。



これはもう言いましたね。はい、次。



7)ご本人は「もう少し元気でありたい」と抗うつ薬を希望されることが多いようです。そして躁転されることがあります。御助言よろしくお願いします。



本人は「もう少し元気に」と言う。これが困るのよね。ちょうどいいくらいと思うのに、本人は「もうちょっと元気に。これはまだうつですよ」とか言うの。「うつじゃない」って、「前からこのぐらい」って言うけど、これは説得するのは難しいですね。「これじゃあ人生がつまらん。面白くない」とか「生きがいがない」とか言って、これはね、難しい。これは答えられません(会場笑)。もう押し問答です。


どうしても本人が言うことを聞かんときには、私はデジレル(トラゾドン)を使います。デジレルは、みなさんどういう感想をお持ちか知りませんが、気分はよくなるけど、活動性が全然出てこない薬のような気がするんです。デジレルを出すと、なんかニコニコして「いいです」とか言って、活動性は全然出てないんだけど、本人は気分がいいから、それで勘弁願うというふうにします。お使いになってみてください。


私はデジレルで躁転したケースがありませんので、いいかなと思います。アナフラニール(クロミプラミン)とかを使ったら躁転します。パキシルもいかんです。



(つづく)









◎ この一連の記事はすべて神田橋先生の了承を得て載せています。