「臨床医からの質問 ①」  の続き



4)rapid cyclerへの精神療法、薬物療法、家族への対応などのポイントについて教えてください。


rapid cyclerというものは、ほとんど抗うつ剤によって作られていると思ってください。抗うつ剤も長く使わない方がいいです。持続的に使うものではない、と思っておいてください。


持続的に使うのは気分安定化薬です。その次に抗精神病薬を使います。それまではうつであっても、抗うつ剤を使ったらダメですよ。パキシルがいいといっても(会場笑)、ね。それである程度、イライラはしなくて、情けなくて、元気がないような、波があんまりないようなうつ状態を作って、それから抗うつ剤を出すんです。


抗うつ剤のファースト・チョイスは薬屋さんにゴマをするわけではなくて、私はパキシルを使うか、デプロメール(フルボキサミン)を使うか、どちらかです。デプロメールは強迫症状の人に使うことからわかるように、どうにかすれば強迫症状を起こさせることができそうな感じの人はデプロメールを使うし、それからもっと素直な、いい人の場合はパキシルを使います。


私はパキシルを夕方使うと眠れんようになると思って、朝、使うんですけど、こないだ薬屋さんに聞いたら、逆に眠くなる人がおるんで、夜、使うという方法もあるらしい。それは本人に聞いて、どっちでもいい。私は朝、使う方がいい例が多いように思います。まあケースバイケースでしょう。


抗うつ剤を使って、持ち上げたり抑えたりとrapid cyclerを作らないようにしてください。rapid cyclerというような状態になっている人はリチウムが効きにくいです。いちばん効くのはテグレトールです。どうしてだか知りません。そしてだんだんおさまってくると、リチウムに移ったりします。なぜでしょう。わかりません。


(つづく)







◎ この一連の記事はすべて神田橋先生の了承を得て載せています。