みなさんこんにちは。きららです。
ここのところ週に1回更新していましたが、先週は力尽きて、更新できませんでした。
その分、今回は気合い入れて書きましたので、ぜひぜひ読んでくださいませ~
きららの婚活逃避行・昇仙峡へ を最初から読んでくださる方は
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駐車場に戻ると、おじちゃんは待ち構えていたように、こちらに向かって足早に歩いてきた。
「ああ、戻ってきたね。遅いから迎えに行こうと思ってたんだよ」
寄り道はしていないし、早く戻ってきたつもりだったが、つまりはそれほど心配させてしまったのであろう。
「ありがとうございます。滝、きれいでした。とっても」
おじちゃんはうなずくと
「約束だからね。とっておきのことを教えてあげる。
さっきお嬢さんがバスを降りてきたとき、びっくりしたんだよ。おじちゃんの初恋の人にそっくりなんだもの。まるで自分が若返ったような気がしたよ」
「私に似ていたんですか」
「そう」
微笑むと
「手、出してごらん」
私は両方の手のひらを差し出した。
「こうやって両方の手をくっつけて器みたいにして」
そして彼は、自分の上着のポケットに手を突っ込むと、私の手のひらに色とりどりのキャンディをバラバラと落とした。
「わぁ!」
「子供さんが来たときに渡してるんだけどね、全部持って行っていいよ」
「ありがとうございます」
おじちゃんは言った。
「不思議だねえ。この世の中に男の人はこのアメ玉よりもずーっといっぱいいるのに、お嬢さんを選ぶのは一人。お嬢さんが選ぶのも一人。きっといい人が見つかるよ」
ニコリと笑って続けた。
「おじちゃんがあと20歳若かったらプロポーズしていたけどね」
私が本当におじちゃんの初恋の人に似ているのかどうか、それはわからない。でも彼が励まそうとしてくれているのがよくわかった。
おそらく彼は思っていたのにちがいない。私が、恋に破れて昇仙峡にやってきた哀れな旅行者なのだと。
そしてそれは当たらずとも遠からずなのであった。
「あ、バスが来たね」
甲府駅行きのバスが角を曲がってくるのが見えた。13時51分のバスだ。
さあ、帰ろう。
もう少しここにいて話をしていたい気がしたが、きっと観光案内所のおばちゃんが、心配しながら待っている。
「次には旦那さんになる人を連れておいで」
私は笑ってうなずいた。
バスの窓から、おじちゃんに手を振った。おじちゃんも手を振っていた。
曲がり角を過ぎ、その姿が見えなくなったとき
私は、自分が泣いているのに気がついた。悲しかったのではない。嬉しかったのだ。彼の優しい言葉が、ただ嬉しかった。
きっといい人がみつかるよ
その人はどこにいて、いま何をしているのだろう。
甲府駅に着くと真っすぐに観光案内所に向かった。おばちゃんは、私の姿を認めると立ち上がり、嬉しそうに手を振った。その目に安堵の色が浮かんでいた。
ああ、ここにも優しい人が一人。
本当に来て良かった
・°・(ノД`)・°・
帰ったら、結婚相談所Sの担当アドバイザー、佐野さんに連絡しよう。
パーティーに行こう。お見合い相手も探そう。もう一度頑張るんだ
決意を新たに、東京への帰路についたのだった。
(きららの婚活逃避行・昇仙峡へ 終)
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読んでくださってありがとうございました。
「婚活珍道中」 のぞいていってくださいね♪
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