きららの婚活逃避行・昇仙峡へ を最初から読んでくださる方は
滝のドウドウと流れ落ちる音が聞こえてくる。私はその場所へ、一歩一歩近づいて行った。
そして私は、仙ヶ滝に到着した。
※正しくは『仙娥滝(せんがたき)』と書きます。
轟音と共に、30メートルもの高さを水が流れ落ちる。滝の正面の高い位置に手すりが備えられ、見物できるようになっていた。おかげですぐ近くから滝の全体が見渡せる。さすがの迫力だ。
滝壺には水しぶきが上がり、白く煙っている。全身に、目に見えない細かいしぶきが降り注いでいるようだった。水を帯びた空気が心地よい。
ふと足元を見下ろすと、断崖絶壁。
数十メートル下の地面は、ゴツゴツとした岩場になっていた。
ここから落ちたら、ひとたまりもない…
思わず手すりをぎゅっと掴んだ。
その瞬間
頭の中でパズルのピースがカチ、カチ、カチと合わさる音がした。
「もう一度寄ってくれる?絶対ね。約束よ」
「ここで待ってるから」
「あんた、滝なんておススメしちゃ、ダメダメ。だって彼女、あの靴よ?
~~~~た人じゃないんだから」
~~~~た人、に当てはまる言葉がわかった!
(さて、なんでしょう)。
おそらく、そこには「死にに来た人」等の言葉が入るものと思われる。
つまり私は、観光案内所のおばちゃんと、駐車場のおじちゃんに
自殺志願者だと思われていたのだ………。
無理もない。
季節はずれの旅行者
(昇仙峡は、桜か紅葉の時期が一番おススメです)
TPOを全く無視した服装
(山に来るのにハイヒール)
青白い顔色
(オーバーワークから来る不眠症?のため)
これって、まさに、自殺しに来た人以外の何物でもない、って感じではないか…。
もー違うよぉ。違うのに
( ̄Д ̄;;
でもありがとう、心配してくれて…。ていうか、心配かけてスミマセン……。
戻ったらおじちゃんとおばちゃんに、何と弁解しよう。
いや、何も言わないほうがいい。言えば言っただけ、嘘っぽく聞こえるかも知れないから。
気が付けば、私は滝に向かって手を合わせていた。
神様、仏様、仙ヶ滝様!!
どうか私にステキな出会いを届けてください!!
そして
ふっ…ふふふふふ…
自分の行動がこっけいに思えて、一人、笑い出した。
滝の前で一人で笑っている、ハイヒールの女…。これじゃ完全に怪しい人である。後ろを数人の旅行者がいぶかしげに通り過ぎる。
もういい、旅の恥はかき捨てだ
「違う、やめたの。相手探すの、やめたの。ごめんね」
同僚にはそんなことを言っておいて、私は全然あきらめていない。本当は、ぜんぜんあきらめていないのだ。昇仙峡の優しい人たちと、この滝の勇壮な景色の前では、私の建前なんて簡単に剥がれおちてしまう。
私は、結婚したいのだ!!!
「私、ぜったいに、結婚しまーーーーーす!!!」
滝に向かってそう叫び……
そうになったが、さすがにそれはやめておいた(笑)。滝に一礼をして、元来た道を戻って行った。
手すりをぎゅっと掴み、足元に最大限の注意を払いながら。
続く (えっ、まだ続くの?)
――――――――
読んでくださってありがとうございました。
「婚活珍道中」 のぞいていってくださいね♪