前回の記事はコチラ!
日曜日。お見合い相手のTさんとは、結婚相談所「S」のラウンジで待ち合わせることになった。
待つこと10分、Tさんがガラガラとスーツケースを引っ張りながら現れた。
出張帰りに「S」に直行したらしい。
「こんばんは。はじめまして」
Tさんは人の好さそうな笑顔で言った。
今回のお見合いは、夜だった。まずいことに、挨拶をするTさんの真上に「S」のオシャレなスポットライトがあって…
Tさんの薄い髪の毛を通過して、頭皮があらわに見えていた。
つまり、Tさんは若くしてかなりハゲていたのである。
気にしない。と、私は思った。
次に気に入ってくれた人と結婚する。その決意は固い。
もしTさんが気に入ってくれたら、私はこの人と結婚するのだから。
「はじめまして」
と、笑顔を返した。
ラウンジで10分ほど会話した後、私たちは近くのレストランに移動した。
今日は聞き上手に徹しよう。そう思って、つとめて彼の話を聞くようにした。
彼は親が一代で立ち上げた会社の役員をしており、話の内容は主に仕事に関することだった。仕事の苦労をうなずきながら聞いていると、彼は嬉しそうにどんどん話してくれた。
こんなに喜んでくれるなら、聞き役に徹するのも悪くない。
30分くらい会話したころ…彼が突然
「僕ってハゲているでしょう?」
私は動揺して
「え、あ、はい…?」
と曖昧な声を発した。
すると彼は笑って
「今ね、植毛してるんだ。植毛するといったん髪の毛が全部抜けるんですよ。
ショックロスと言ってね。それでまた植毛すると、今度は定着して、生えてくるんだ。お金がかかってね。外車一台分くらい使うことになるかな」
そして
「でも、お金でなんとかなるなら、なんとかしたいと思ってね」
私は無意識にこう返していた。
「いいじゃないですか!男の人が外見に気を使うことって、良いことだと思います」
それは本心だった。彼に笑顔を見せた。
すると、彼は
「…そう言ってくれると、嬉しいなぁ」
心底嬉しそうな顔をした。
よかった。良い人みたい。
正直だし、性格も良さそうだ。
今の一言で、私を気に入ってくれたみたいだし。
次に気に入ってくれた人と結婚しよう―――
そう思ったとたんに、神様が良い人に出会わせてくれた。
次回のデートの約束をして、私たちは別れた。
もうすぐクリスマス
このまま良い方向に進めば良いのだけど。
(続く)
――――――――
読んでくださってありがとうございました。
「婚活珍道中」 続々更新中です♪