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カネが目当てなんでしょ?
いきなりの質問に、私は固まった。
…確かに、ある意味ではその通り。だって年収は高いに越したことは無いもん。
でも年収が高ければいいってわけでは、断じてない。
いきなりの質問に、私は固まった。
…確かに、ある意味ではその通り。だって年収は高いに越したことは無いもん。
でも年収が高ければいいってわけでは、断じてない。
このご時世、いかに高収入があったとしても安心なんてできない。
明日は無職になるかも知れない危険を誰もが抱えているのだから、もしもそうなったときにも一緒に頑張っていきたいと思えるような、人間として尊敬できるような男性との出会いを日々求めているのだ。
…さて、何て切り返そう。
そのとき、彼が沈黙を破った。
「こういう結婚相談所に登録して、カネのある男を探してる女って、どういう女なのか見てみたくて、それで入会したんだよ」
そして、口元をゆがめて笑った。
気がつくと、両隣の席に座った客から会話が消えている。私たちの会話に耳をそばだてているのだ。
あーあ、注目されちゃってるよ…
そりゃそうだよね。
私は思った。
誰だって、隣でこんな会話繰り広げてたら、そりゃ気になるわ!
一つ深呼吸してから、笑顔で言った
「お金、好きですよ」
財布から千円札を取り出した。そしてそれを伝票の上に置くと
「お金を稼げる人も好きですよ。だって今まで頑張ってきたってことでしょう?」
Yさんの切れ長の目を見つめた。
すると彼は居心地悪そうに目をそらした。
「…来てくださってありがとうございました。失礼します」
席を立つと店を出た。店の外から、ガラス張りの店内が見える。
Yさんは席に座ったまま、下を向いている。私が置いてきた1000円札に目を落としているようでもあった。
寂しい横顔だ。そう思った。
あーあ。…ちっ
あの紅茶、ホントは450円だったのに1000円置いてきちゃったよ。
カッコつけすぎたなあ。
500円玉持ってくれば良かった
カッコつけすぎたなあ。
500円玉持ってくれば良かった
きっと彼には、これまでにつらいことがたくさんあったのだろう。
それを優しく聞いてあげられる私だったら、きっと違う展開になっていたに違いない。
でも、そんな余裕も優しさもない、29歳の初秋であった。
私は近くの店でシュークリームを買い、家に着くと脇目もふらずに食べた。
大好きなシュークリームなのに、食べおわっても心はちっとも満たされなかった。
Yさんみたいに寂しい横顔をしていたと思う。たぶん。
それを優しく聞いてあげられる私だったら、きっと違う展開になっていたに違いない。
でも、そんな余裕も優しさもない、29歳の初秋であった。
私は近くの店でシュークリームを買い、家に着くと脇目もふらずに食べた。
大好きなシュークリームなのに、食べおわっても心はちっとも満たされなかった。
Yさんみたいに寂しい横顔をしていたと思う。たぶん。