佐野さん、やっぱり私、こういうの無理です…
ヽ(;´Д`)ノ
そうは言っても、パーティーはもう始まっている。
まさか、ここまで来て逃げ出すわけにもいかない。
「最初の移動は、女性の方はそのまま席におつきになっていてください。男性の方が移動します。
その次は男性の方にそのまま席におつきになっていただき、女性の方が移動…というように交互に進めさせていただきます」
というスタッフの説明の通り、初回は男性が移動するようだ。
「はい、スタート」
合図に従い、天下の帝国ホテルの一室を使ったイス取りゲームが始まった。
ほどなく、私の右隣に男性が座る。
「…はじめまして」
内気そうな男性だ。
「あの…これ、書いてください」
伏し目がちにそう言うと、薄いブルーの紙を私に手渡した。
スタッフが、会の冒頭で説明していた『コミュニケーションカード』というものだ。
名前、年齢、誕生日、職業、年収、趣味 そして連絡先の欄がある。
私は正直に、すべての欄を埋めていく。
ふと、「連絡先」の欄で手が止まった。
これ、正直に書かないといけないのかな…
まだ話をしていない段階で連絡先を書くのって抵抗がある。
だって、合コンだって、意気投合しないと連絡先は交換しないでしょ!?
でも、違うのだ。ここは合コンとは別の世界なのだ。
私はそう自分に言い聞かせ、「連絡先」の記入を終えた。
「山中さん…」
内気氏が言った。
「ハイ」
「あまり、お見かけしないですよね。パーティーは初めてですか?」
「ハイ。そうです」
「やっぱり
(^_^)」
内気氏が初めて笑顔を見せた。
「僕、2年前にここに入会したんですけど、パーティーにはほとんど毎回参加しているんです。お見かけしない顔だと思ったので…」
え…
そうなの?(・_・;)
2年もの間、毎月1回開催されるパーティーに欠かさず参加しつづけても
まだ、結婚相手が見つからないっていうこと?
そんなに、相手を見つけるのって大変なことなんだ…
(°д°;)
私が思わず返事に窮していると、内気氏は
「あ、ひいちゃいました?もしかして。
そんなにパーティーに参加してるのに、まだ相手が見つからないのかって…」
「えっ!
(=◇=;) いやいやそんなこと…」
「いいんです。そう顔に書いてありますよ…」
内気氏は少し遠くを眺めるようにして言った。
「もう、パーティーに参加すること自体が目的になっちゃってるというか…
正直、自分が結婚できるイメージって、無いんですよね…」
「…そうなんですか…」
「だって、山中さんだって、もしかしたらサクラなんじゃないですか?そうじゃない証拠なんて無いし、この『コミュニケーションカード』に書いてある情報だって、ウソかも知れないし…」
「えっ、違います!!
Σ(゚д゚;) ウソなんて書いてないですよ」
私は思わず、顔の前で激しく手を振りながら言った。
「…そうですか…」
内気氏は儚げな微笑を見せて言った。
「じゃ、よかったらメールください。またお話しできたら嬉しいので…」
それからしばらく、お互いの趣味に関する当たり障りのないハナシをして…
「はい!終わりです!次は女性の方が移動してください!」
スタッフの威勢の良い掛け声で、会話は中断された。
「じゃ…」
私が席を立つと、内気氏は、はにかんだような笑みを浮かべ軽く会釈した。
いい人そうなのに…。
話し方も、ルックスも、年収だって悪くないし、特にダメなところなんて無い。
それでも、こちらから連絡をとりたいっていう気持ちにはならなかった。
何故だろう。それなら、どんな人ならいいんだろう。
どんな人になら、私は、連絡をとりたいって思うの?
ボーっとしていると、周りの席が、どんどん埋まっていく。
まずいとりあえず、どこかに座らなきゃ
( ̄□ ̄;)
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