※年収4000万円Wさん(6)
の続きです。
先日の料亭デートから2週間が経つ。
互いの都合が合わず、あれからWさんには一度も会えていない。
でも彼は相変わらず毎晩電話をくれた。
しかし、気になるのは…
Wさんが「ミンザイ(睡眠薬)」服用の上で電話をしてくる頻度が多くなったこと。
おおむね2日に1回はロレツの回らない状態で電話してくる。
彼はミンザイをおそらく毎日服用している。
薬を飲む前に電話するか、飲んだあとに電話するかの違いなのであろう。
要は泥酔している状態と同じことで、薬を飲んだあとに電話してきた翌朝は、私との会話の内容を全く覚えていないという。
もともと「S」の気がある私はそれを良いことに、シラフの状態ではとても答えてくれないであろうイジワルな質問をいろいろとした。
そして、その回答を楽しんだ
(Wさんの名誉のため、質問の内容はここでは伏せておく)
てなわけで、それなりにWさんとの会話を楽しんでいた私であったが、それはWさんと他人同士である今だからこそである。
もしWさんと結婚したら…
何を話しても、翌朝には内容を忘れられてしまうのか?
普段はそれで良いとしても、忘れてほしくない重要な話をする日もあるだろう。
しかも、気になるのは、Wさんがあまり私の話を聞いてくれないこと。
Wさんはいつだって自分の話ばかりしていて、私が話し出すと、自然と話題を自分のほうへ持って行ってしまう。
結婚したら専業主婦。××県には知り合いもいない。
まともに話をするのは旦那だけだというのに、その旦那とさえ、まともな会話はできないのだ。
耐えられるのか?そんな生活。
「…きららちゃん?聞いてる?」
今日はミンザイを飲んでいないWさんが電話の向こうで少し声のボリュームを上げた。
「あ、すみません。ちょっと電話が遠くて」
「来週の週末、××県に来てほしいんだけど」
うーん、なんだか気が進まないなぁ…
ああ気がついてしまった。
私の中で、既に答えは出ているらしい。
でも私は言った。
「行きます。」
これはチャンスだ。Wさんを好きになる、最後のチャンス。
Wさんのことを好きじゃない。
好きじゃないと結婚できない。他の人はどうか知らないけど、私は、好きな人としか結婚したくない。
もしもWさんのことを好きになれたら……玉の輿が待っている。
もうすこし粘ってみてもいいよね?
そして次の週末。
私は一人、××県に向かう新幹線に乗っていた。
オフシーズンの新幹線には空席が目立ち、周りはスーツ姿のビジネスマンばかり。
その中で白いワンピースの私はかなり浮いていた。
駅弁を広げ、ゆっくり味わった。
Wさんから貰った読みかけのビジネス書に最後まで目を通した。
駅のキオスクで買った雑誌を読み終わった。
まだまだ××県は遠い。
私とWさんの心は、もっともっと遠くに離れている。
ふと、そう思った。
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