予約した店に着くと、個室に通された。
10畳ほどあるスペースに、10人掛けのテーブルが一つ。
イスは5人ずつ、向かい合って座るように並べられていた。
私たち8人(男女各4人)は、思い思いの席に座った。
入口から見て一番奥、上手の席に40代なのに20代に見えるミラクルお姉さん、ミユキさん。
その手前は私。
私のさらに手前は、これまた20代前半ような美肌の持ち主、30代既婚のメグミさん。
…って、なんでここに女3人が固まってるんだ!!!
幹事のミサト君は、下手の席に座り、注文を店員に伝える役目を一手に引き受けている。
さすが体育会系。しっかりしてる!
ミサト君の隣には、遅れて部屋に入って来たサオリが座った。
―――30分後。
「イッキ!イッキ!」
私の斜め前に座ったカトリ君が立ち上がり、腰に手をやりながら、みるみるうちにジョッキを空けていく。
「おーー!いいぞいいぞ!もっと飲めーーー!」
立ち上がって声援を送っているのは…
この私である。
おかしい。本気モードの合コンだったはずなのに、何かがおかしい。
でも、私とて元は体育会系。この雰囲気に飲み込まれずにいられるわけがない。
ミユキさんは、入口に一番近い席に座ったミサト君に
「ビールもっと頼んで!」
「冷房効きすぎ!」
「唐揚げまだ!?」
隣に座ったメグミさんも、私と一緒に大はしゃぎ。飲むペースもいつもよりだいぶ早い。
20代前半のような白い美肌がすっかりピンク色に染まっている。
そして、すっかりできあがってしまった私の目の端に飛び込んできたのは…
少しはにかんだ笑顔で会話をする、ミサト君とサオリの姿。
…あ、あの二人…
だてに合コン女王と言われてたわけじゃない。
場数を踏んでいる私には、すぐにわかった。
あの二人、うまくいくな。きっと。
街中で行き違うカップルを見て思うこと。
カップルって、似た雰囲気であることがとても多い
(もちろん「美女と野獣」みたいな例外もあるけど)。
ミサト君とサオリは、私に言わせると両方とも「カワイイ系」の雰囲気を持っていて、こうして二人並んだところを見ると、パズルのピースをはめこんだみたいにピッタリなのだ。
やがて、会はおひらきとなり、私の携帯には素晴らしいイッキ飲みを披露してくれたカトリ君の電話番号とメールアドレスが残った。
でもカトリ君は私のタイプではない。残念だけど(向こうもおそらくそうであろう)。
…この連絡先を使って、2度目の合コンが開かれることは確実である。
そして後日。
サオリから、ミサト君と付き合うことになったと満面の笑顔で報告された。
「ありがとうございます!きららさん!
(*^_^*)」
私の心中は複雑である。
自分のために開いた合コンで、自分には収穫がなく、後輩が先に幸せになっていく。
もちろん祝福する気持ちはある。
そこまで心が狭いわけじゃない。けど…。
一抹の虚しさが残る
(TωT)
そのニュースを聞いた数日後、会社の女子トイレで同僚のサチコに声をかけられた。
「きらら~、サオリにとられちゃったんだって~?」
「はっ?何を?」
「とぼけなくてもいいよぉ~。きららが気に入って声かけた人と合コンしたら、まんまとその人をサオリにとられちゃったんだってね~」
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