合コンのツテを求めて―――
とりあえず、私は携帯のメモリを「あ」行から順に見ていった。
「アサダサン」…ああ、この人。覚えてる。
たしかK大の4年生で、そのとき私は1年生。
合コンで知り合って、けっこう盛り上がって、別れ際いつものように
「アサダさん。また今度合コンしてくれませんか?今回とは別のメンバーで」
とお願いしたら
「それって、僕には興味ないってこと?」と笑顔で切り返された。
そのとき、私は…
彼の笑顔があまりに爽やかだったのと、そのセリフがあまりに予想外だったために見事に固まってしまったのだ
( ̄□ ̄;)
その後、どちらからも連絡をとることなく、それっきり。
今だったら、今の私だったら何と切り返すだろう。
アサダさんに興味がなかったと言えばウソになる。
そして、たぶんだけどアサダさんも、一瞬かもしれないが私に興味を持ってくれていた。
合コンを途切れなく続けることに情熱を注ぎすぎて、本来の目的が見えなくなっていた。
たしかにコミュニケ―ション能力は鍛えられたかもしれないけど、ホントにホントにアホな私だ。
私は携帯の画面に映った「アサダサン」という文字をもう一度眺めた。
私の3つ上だから、今は30歳か…。
きっと、もう結婚して子供もいるに違いない。
もし違ったとしても、8年ものブランクを越えて彼に連絡をとる勇気は、私にはない。
「その節はすいませんでした。お幸せに」
私は声に出して言うと「アサダサン」のメモリを携帯から消去した。
引き続き、メモリを見ていく。
誰なのかも思いだせない名前が続く。
合コンで出会った人たちだ。
「あーあ。こりゃ『電話帳』じゃなくて、『若気の至り帳』だね」
またもや声に出して私は言った。
その声がやけにオバサンくさくてちょっとだけ凹んだ。
「カサイ ワカバ」
ああ、ワカバ、もう2年くらい会ってないなぁ…。
ワカバは、高校時代の友人である。
私の母校は女子校だ。高校3年生は文化祭で宝塚のような出演者オール女子の舞台を行うならわしになっている。
その舞台で、私は主役(男役)、ワカバはその相手役(女役)を演じたのだ。
台本中にはキスシーンまであり、当時は校内で「きららはワカバとできている。キスシーンはフリじゃなく、本当に口と口をくっつけてやってるらしい」とまことしやかに噂されたものだった。
※実際は事実無根です。
懐かしいなぁ。いまどうしてるんだろ。
私はさっそくワカバにメールを送ることにした。
こういうとき、すぐさま行動に移すところが私の数少ない長所だ(と、よく言われる)。
元気?きららです。
そういえば2年近く会ってないね!
ワカバとこんなに長く会わずにいられたなんて、ちょっと信じられないよ。
近いうちに会わない?酒でも飲みながら語ろうよー連絡待ってます。
なんだこりゃ。なんか頭悪そうなメールになってしまった。
ま、いいや。送信!
―――2時間後
ワカバです!メールありがとう!嬉しい!ひさしぶりだねー☆
私こそ、きらちゃんとこんなに長く会わずにいられたなんて、ちょっと信じられないよ。
ちょうど、今度の土曜日、マイとノンコと3人で集まることになってるの。きらちゃんも来ない?連絡待ってます。
私はすぐさまOKのメールを送った。
携帯のメモリの続きを見るのはひとまずお休み。
まずは懐かしい友人に会って、心のモヤモヤをきれいさっぱり洗い流そう。
ひとつ、心に決めたことがある。
次に「いいな」と思う人に出会ったら「合コンしましょう」じゃなくて「二人で会いましょう」って言おう。勇気を出して。
――――――――
読んでくださってありがとうございました。
「婚活珍道中」 続々更新中です♪