爽快なお産レポート
テーマ:家族のはなし2人目を考えつつあるママ友達たちに、よく聞かれる。
「2人目は、1人目よりもお産が楽だった?」
「2人目は、赤ちゃん出てくるの早かった?」
・・・早かったし、楽だった!
前回、桃を産んだときは 、私はとても受動的だったと思う。
出産の神秘に魅せられて、気持ちもふわふわして、流されるままに終わったような感じ。
まず、微弱陣痛をやりすごす出産前の晩、
時計とにらめっこしながら一晩まるまる徹夜してしまったところから間違ってる。
翌朝になっていざはじまった本格的な痛みは「これは一体、どこまで強くなるの~?!」と怖くて、
痛みを自ら受け入れることもできずに、どうにか痛みをのがしてやれないものかと肩に力が入りっぱなし。
「はい、そろそろいきんでね」という頃には徹夜明け後半日が経過していて、
すでに体力が残っていないし、どう力を入れていいかもわからなかった。
・・・その結果、助産院についてから出産まで、8時間半かかった。
今回は、前と同じというわけにはいかない。
登山だってマラソンだって、「怖い」「ツライ」と思ってしまったら、実際その瞬間から重く気だるいものになる。
そのために心と体を準備して、張り切ってのぞめばものすごく爽快なスポーツなのに。
出産という、全身を使う体験も多分同じだ。
「怖い」「痛い」と背中をむけたらもったいない。
今回は、お産体験をもっともっと能動的に受け入れたいと思って、
里帰りしてからは毎晩、寝る前にイメージトレーニングを重ねてみた。
ちょうど学生時代、ウィンドサーフィンの大切な大会の前にそうしていたように。
寝る前の静かな時間、布団の中で、赤ちゃんに出会える瞬間を思い描いて、
赤ちゃんがスムーズに出てくるために自分にできることは何かをイメージした。
陣痛の痛みは「嫌なもの」「怖いもの」ではなく、赤ちゃんが出てくるために「必要なもの」なんだということを
受け入れるためのイメトレ。
それが功を奏したのか、今回は産んだ自分がビックリするくらいの超スピード安産だった。
助産院に到着してからたった1時間で杏に会えたのも、
そのお産が「痛い」というよりむしろ「楽しい」と思えたのも、
結局、気持ちのもっていきようが理由なんじゃないかと思った。
今回は産後の回復も早いし、
毎日を2人の子どもたちに振り回されているうちに出産のことなんて忘れてしまいそう。
でも、おなかの赤ちゃんと呼吸をぴったりあわせて爽快な大事業を成し遂げたあの特別な感じは、
(これから出産を迎える友達たちのためにも!)忘れないうちに書き留めておかなければ。
モモのお化粧熱、まだ続いています。「これ、まゆげかくもの?」とちゃんと用途もわかってます。
というわけで、以下、出産レポート。
(基本的には家族のための記録なので、無駄に長いです。忙しい人は読み飛ばしてください!)
10月29日、深夜3時。
腰のまわりに水分を感じて、目が覚めた。
数日前から腰が痛くて、湯たんぽを持って寝たから「湯たんぽが漏れた!」と思ったら、そうじゃない。
・・・破水?
予定日はまだ9日後だし、陣痛もない。
半信半疑のまま、でも1人では判断しかねて母を起こす。
「破水って、もっとこう、バシャーっと出てくるものかと思ってたわ」と言いながらも、準備をはじめる母。
たぶん、明日朝起きてからでも間に合うんだろうなあ、
陣痛の予兆もないのに、こんな夜中に助産院の先生まで起こすの申し訳ないなあ、と思いながらも、
「破水したら迷わず電話」と言われていたので、宮下先生に電話をし、そのまま助産院へ。
大悟にはこの時点ですでに3回、電話をしていた。
昨日の夜は、(ものすごく珍しく)遅くまで飲んでいたという大悟。
朝まで起きないかもしれないと思っていたら、出発直前につながった。
「あー、はいはいはい」
ヘンなテンションの応答。 この声は・・・、たぶん、(ものすごく珍しく) 軽く二日酔いしている様子。
破水した、と伝えると、
「そうか。・・・すぐ、むかいます」
電話の向こうで、ようやく座りなおした感じ。大悟、大丈夫かな?横浜まで来れる?
朝4時半。
助産院に着くと、桃のときも出産の最初から最後までお世話になった長谷部さんが
部屋をあたたかくして、布団を用意して、待っていてくれた。助産士さんって、本当にすごい仕事だ。
「確かに破水してるね。子宮口もすでに3センチになってます」
でも、肝心の陣痛が、まだない。不定期に、強めの張りがある程度。
「破水からはじまっているので、24時間たっても陣痛がはじまらないようなら、病院と相談をはじめます。
その場合促進剤で出産か、帝王切開という可能性も出てくるけれど・・・ まあ、しばらく、様子を見ましょうね」
破水しても長いあいだ赤ちゃんが生まれてこない場合、
感染症の危険性や、羊水が減って赤ちゃんの体力が弱まってしまうという可能性があるんだって。
「ソラマメくん。頑張って今日中に出てこなくちゃね。ここで生まれたほうが、きっと楽しいよ」
とまだ名前の決まらないおなかの赤ちゃんに話しかけて、
なんとか到着した大悟と一緒に仮眠をとらせてもらうことにした。
朝7時半。
陣痛に近い痛みを感じて目が覚める。
二日酔いのせいか、(ものすごく珍しく)イビキをかいている大悟の隣で、痛みの感覚をはかる。
このイビキ、さすが「2児のお父さん」っぽい。こうして年を重ねていくんだなあと感慨深さも感じる。
20分に一度、お腹の奥がキューッと痛くなる。その間隔はだんだんせまくなっているし、痛みも強さを増していく。
「ソラマメくん、すごいよ、すごいよ。がんばれ~」
と静かに話しかけ、ちょっとワクワクしながら、体力温存のために布団でぬくぬく時間を過ごす。
朝8時半すぎ。
痛みは、ほぼ5分間隔になった。大悟に声をかけて、起こす。
この時点で、私はもう、やる気十分。
今回は絶対に、痛みを怖がらず、どんどん受け入れていくことで、
出てこようとするソラマメくんを応援するんだ、最後まで一気に2人で頑張るんだと決めていた。
「今のうちに力つけておく?」と長谷部さんが朝食を持ってきてくれたのだけど、
せっかくはじまった陣痛の波を逃したくない。
ソラマメくんの安全のためにも、絶対に今日中に産まなきゃいけない。
勢いをさらに強めるために、まずは朝の散歩に出ることにした。
桜木町までドライブして、朝のランドマークタワーで大悟のコーヒーと朝食を買う間、
痛みはどんどんしっかりしたものになっていく。
平日の朝9時だから、いつもどおりに出勤する人たちが次々に周りを通り過ぎていく。
私は5分普通に過ごしてはしゃがみこみ、5分過ごしてはしゃがみこみ、と繰り返しているのだけど、
周りの風景はすごく、いつもどおりだ。
おなかの中でどんどん強くなる「命の時間」と、世の中の「いつもの時間」。
まったく違う時間の流れだけど、まだ両方に属していられる自分。
面白いなあと思いながら、ふと仕事のことを思い出して、
あとで気にならないように、職場の里香と玲に電話でいくつかお願いをする。
朝9時50分。
みやした助産院に戻る。そろそろ本当に痛くて、用意してもらった朝食もほとんど食べられない。
陣痛の間隔は、もちろん5分を切っている。大悟の二日酔いも抜けて、準備万端。
立ち会うことになる桃が怖がらないようにと、光のたくさん入る和室を用意してもらうと、
ほっとしたからかドン、と陣痛が強くなる。半ば倒れこむようにして布団の上へ。いよいよ開始だ。
「すごいよ、ソラマメくん。頑張るねえ。その調子だよ」 痛みの合間に、おなかに話しかける。
毎晩のイメージトレーニングの間もそうじゃないかな~?と思っていたことだけど、間違いない。
赤ちゃんをいよいよ送りだすために「いきむ」瞬間までは、母体はバタバタしないのが一番だと体が教えてくれる。
フーッと深く腹式呼吸をしてお腹に酸素を送り込むと、その分子宮が強い力で収縮するのがわかる。
赤ちゃんが自分で出てくる力を応援するために、私は腹式呼吸に徹するだけでいいんだと信じて
深く呼吸すること、十数回。
強い痛みが5~6回訪れているあいだ、
「あれ?もう赤ちゃん、出てこれるんじゃない?」という感覚を意識のどこかで感じていた。
モモを産んだときは、陣痛が強くなって子宮口が開くのを待つのに6~7時間かかっていたのだから
早すぎる気もしたけど、「かなりいいペースで進んでますね。お父さん、もうモモちゃんを呼んであげて」
という長谷部さんの提案で、大悟が実家の母に電話しはじめた。
実家から助産院まで、30分かかる。
モモ、間に合うのかなと心配しながらも我慢できず、「もう、いきんでもいいですか?」と聞くと、
宮下先生から「はい、いいですよ~」の合図。
そのあとはもう、待ちに待った波に乗るような感覚だった。
腹式呼吸のリズムができていたから、思いっきり押し出せる。
どこにどう力を入れたらいいか、赤ちゃんにも教えてもらえているかのようにいいリズムで、
呼吸にあわせて全身の力を込める。
「すごいすごい。もう赤ちゃんの髪の毛が見えてきたよ~」
冷え症の私は「足が寒い」と言って、大悟に足をあっためてもらっていたままだった。
ということは、位置的に、大悟には赤ちゃんが出てくる一部始終が見えてしまっている。
(前回は、「モロには見なくていい」という大悟は私の上半身を支える側にいたのに!)
でも、気にしている余裕はない。もう一度、お腹に強く押す力をこめる。
横になった私が踏ん張れるように、ちょうど足で蹴りたい位置に腕を貸してくれていた宮下先生が
「いやあ、上手になるもんだねえ。2人目なんだねえ」という声を遠くで聞く。
力を込めて、もうひと踏ん張り。
あたたかい塊がするっと脚と脚のあいだに出てきたのを感じる。
「・・・ふみゃあ!ふみゃあ!ふみゃあ!」
脚と脚の間に頭だけ出した状態で、赤ちゃんが泣いている。
「頭が出たよ。いいペースだねえ、安産だねえ。さあ、もうひと踏ん張り」
え?もう?
モモは?モモが、まだ来てない。
意識の奥でモモの到着を待ちたい気持ちがあったけれど、乗った波から降りるのは難しい。
次の陣痛と一緒に、お腹に丁寧に最後の力を込めて、赤ちゃんを送りだす。
「ふみゃああ!ふみゃああ!ふみゃああ!」
9ヶ月半、おなかに一緒にいたけれど、声を聞くのは初めて。
なんて細い、でも力強い声なんだろう。できたての、新しい命の声だ。
「愛、頑張ったね」
大悟、また泣いてる。
私は、すべての展開が速すぎて、感動する間もなく、ビックリしたまま。
へその緒がつながったままの赤ちゃんをおなかに乗せてもらって初めて、軽くて重い、
大切なあたたかさを感じた。
やっと出会えた感動をじわりと感じ・・・ そうになった、その瞬間。
お母さんに連れられて、顔のこわばったモモが部屋に入ってきた。私は、一瞬で我に返った。
赤ちゃんを送りだしたばかりの母の気持ちから離れ、引き裂かれそうな長女の気持ちに一瞬で共感した。
そしてそのあとは、前回の日記に書いたとおりの、ドタバタな毎日 のはじまり。
今日も杏は桃が貼ってくれるシールでおしゃれ。嫌がるどころか、ちょっとサマになってきた気も・・・
2人目の赤ちゃんはママと蜜月に浸る間もないままに、「この世はカオスか」と思って育っていくのでしょう。
そのカオスの中にたくさんの愛を感じながら、強く育っていくのでしょう。
散歩から助産院に戻って1時間、あっという間の出産体験だった。
「Orgasmic birthing 」とまではいかなかったけれど、波に乗るようにして爽快に出産できたことは間違いない。
出産の本には「痛みの逃しかた」がいろいろ出ているけれど、そんなこと考えていたらもったいない。
痛みには背を向けず、そのまま受け入れる。深く呼吸して、赤ちゃんへの応援になる酸素をお腹に送り続ける。
痛みに負けそうになったら、産まれてからの幸せな家族の風景を心に描いて、頑張る。
それだけできれば、「出産」はやみつきにもなり得る、爽快で感動的な体験だと思う。
と大悟に話したら、
「いや、もし仮に3人目があるとしても、まだまだずーっと先ね」
と釘をさされたけれど!
杏の予定日前日にオーストラリアに帰国予定だったBEN&JOHにも、杏はちゃんと会えました!
JOHは1月に女の子の赤ちゃんを出産予定で、杏と同級生。一緒に遊びに来てくれた倫子も、どうもありがとう~。
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