TPAの問題について報道や各種団体が意見表明

ハフィントン・ポスト「TPPは国家主権を侵害する」
http://www.huffingtonpost.com/michele-nashhoff/the-transpacific-partners_b_2766729.html

 オバマ大統領は、一般教書演説でTPP交渉を終結する宣言をした。これは初めて公表された宣言である。TPP草案にある「ドッキング規定」では、日本や中国が後から参加しても、不利になることもなく苦しむこともなく、参加を許される。
 TPP協定を実行するには、最終的に合衆国憲法第一節第8条の通商協定規定権限を、議会が超憲法的に「貿易促進権限(TPA)」オバマ大統領に与えることが必要になる。(TPAあるいはファストトラック法の解説、省略) 
1月24日の議会調査局のTPPに関する報告書で、現在のオバマ政権が、TPAを持っていないことを明確にした。オバマ政権は、TPAを持っているふりをして活動している。

 パブリックシチズンのロリ・ワラック氏はTPP協定の危険性について警告している。
外国企業は、次のような特権を得る;
・低賃金国への雇用移転による危険性とコスト
・外国への企業の再配置に伴う「待遇の最小限の標準」が特別に保証される
・健康、労働、環境、法律による「期待される将来の利益」損失への保証(間接的あるいは調整的な売上保証)
・制限なしの資本移動
・投資の巨大な定義をカバーする新しい権利;知的財産権、許可証、派生物
・特定措置の要求、自国産品使用要求の禁止。調印国から投資家に適用される時だけでなく、全面的禁止。
 米国の多国籍企業が、悪名高いISDSを用いて、外国人投資家の極端な特権と権利を多くの国に要求できる目標を持てる。このシステムは、TPP署名国とその市民を越えて、個々の会社と投資家を上位に配置する。(ISDSの説明省略)

 

 先週、Jerome Corsiにより確認された。(詳細は下記URL)
http://www.wnd.com/2013/02/obama-skirting-congress-in-globalist-plan/
 TPP草案の第15章「紛争解決」に、オバマ政権がTPPにおける紛争審理を行う国際法定に米国の主権を放棄することが明記されていることを指摘した。TPP協定の解釈と応用に関する議論は、第15.7章によると三つのTPPメンバーからなる仲裁機関によって審判されること。
 TPP協定のもとで作られる仲裁機関は、米国法の上にあるので、オバマ政権は議会との特別の協議を行わずTPP協定交渉を進め、仲裁機関が米最高裁判所の上になるように見える。米国内の企業は米国法の対象だが、外国企業にそれにまさる経済的利点を与えることになる。


 他の反TPP運動をしているAmericans for Limited Government(無党派の全国組織の弁護士的ロビーグループ組織)も声明を出した。
 外国企業が米国内で営業するならば米国法に従わなければならない。米国最高裁を越える貿易協定をオバマ政権は作ろうとしている。それは憲法違反だ。憲法を廃止する協定に入ることは許されない。

 

 独立、無党派、非営利団体のAmerican Jobs Allianceのディレクターである私は、次の問題を提起したい。

「TPPは我々の主権と民主主義を傷つける」
それは、実施可能な世界的な政府の広範囲なシステムというように、貿易協定とミスリードされている。26分野の内、関税の引き下げ、消費者選択を制限する割当の引き上げの2分野しかない。実際は、米国の連邦法、州法、地方法律が従わなくてはならないフリーサイズの国際的規則を押し付ける。外国投資家が我々の天然資源と土地を利用し管理することに対する米国政府の規制を制限することも含まれる。TPPは、世界銀行と国連の二つの仲裁所の管轄下に入り、もし米国法がTPPの新しい特権にむしばまれていけば、米国の税金が外国企業に支払うよう強制される。


「TPPは国家を侵害する」
合意は、人々や州政府が多くの権利を保有する米国憲法によって確立された重要な抑制と均衡と自由を徐々にむしばんで行く。1000頁ものTPP規則が米政府および州政府を従わせる。


「バイアメリカン法と州政府段階の公共調達の廃止」


「国連、世界銀行の仲裁所が米国裁判所に取って代わる」


「米国の国土の1/4(5億4千4百エーカー)が外国の支配になる」
 連邦政府と外国人投資家との協定に外国の裁判所の判断を受けさせる。国家が管理する天然資源、電力の供給、水の供給、通信の供給、道路、橋、運河、ダム、パイプラインなどのインフラ整備など。
結論として、TPPはアメリカの国家主権、米国憲法とアメリカ人所有の企業に対する直接的な脅威だ。TPPは、アメリカの仕事と我々の独立を破壊する。
 オバマ政権が、最終的な議会承認を得る時が来ようとも、貿易促進権限(TPA;ファストトラック)法を議会が拒絶することを、確認しなければならない。


The Hill(米政界紙)「日本の参加反対」
Bluntアメリカ自動車政策会議・議長(前ミズーリ州知事)投稿
http://thehill.com/blogs/congress-blog/economy-a-budget/285743-the-right-trade-pact-could-deliver-jobs-and-growth
 3月4日からシンガポールで始まるTPP協定は、米国経済と米国労働者にとって強力な成長の機会があり、自動車産業はこの貿易協定から利益を得るだろう。
この協定は、取引と投資を自由化し貿易障壁を下げて、経済成長と雇用創出の助けになるだろう。

「日本問題」
 日本が交渉参加問題に言及したが、日本を含めることは間違いだ。
1980年代1990年代、大統領府と議会が、日本の自動車市場を開放する努力をしたが、日本は先進国の中で最も閉鎖的だ。2005年以降、米国車の日本への輸出は、日本から米国への輸出の1/130であり、現在の貿易赤字の70%が自動車及び部品である。

 日本における外国車の売上は、全体の6%以下にすぎない。先進国における外国車の比率は、1/3である。日本は、一方的に不当な輸出促進をして米労働者に損害を与えている。日本政府は、長い間、輸入を制限し輸出を促進するため、通貨操作を含む非関税障壁を用いて国内産業を保護してきた。日本の市場を開放するには。これまでとは異なった産業政策をとらなければならない。日本をTPP交渉に参加させることは、交渉を狂わせるか、一方的な貿易の損害を固定する危険がある。Center for Automotive Research (CAR)の調査によれば、日本がTPPに参加すれば、その継続的な通貨操作と合わせ、9万人の雇用が失われる。日本をTPPに入れてはいけない。

9万人雇用喪失記事

-communications.com/news/study-including-japan-in-trans-pacific-partnership-would-put-90000-u-s-auto-jobs-at-risk/
CARの報告書

http://www.cargroup.org/assets/files/the_effects_a_u.s._free_trade_agreement_with_japan_would_have_on_the_u.s._automotive_industry2.pdf

Insurance Journal
ホワイトハウスはファストトラック権限を求める予定
http://www.insurancejournal.com/news/international/2013/03/04/283433.htm
 先週金曜日(3月1日)、ホワイトハウスは、今年TPP交渉を終結させるため、新しい貿易協定の方法を容易にする法律の承認を求めると発表した。しかし、貿易に関する年次報告書の "貿易促進権限"として知られている法律に関する大統領の短い言及は、何年も前からこの問題に及ぼす行動を迫っていた何人かの重要な共和党員に印象づけることに失敗した。
 下院歳入委員会のキャンプ委員長(ミシガン共和党)は、オバマ大統領に、ファストトラック権限とUSTRの指名と承認に関し議会と議論を開始し、積極的で生産的な貿易政策を示すよう訴えた。現在のカークUSTR代表はまもなく退任する。米国は、今年、EUとのFTA交渉開始、TPPの交渉終結しようとしているとき、その交渉責任者を空席のままにしている。

 TPAは、ホワイトハウスが貿易協定の内容を修正することなしに、議会に提出し、一括採決を求めることができる。それは、承認過程で米国の議員によって切り裂かれたり選択されたりしないことを他国に保証するため必須と思われる。
 下院歳入委員会のキャンプ委員長と上院財政委員会のボーカス委員長が、TPA立法の計画を発表した。貿易法案が多くの民主党議員に嫌われるので、オバマ大統領の力強い後押しが必要だと議員の多くは思っている。TPAを獲得する適切な時間があった議会会期の4年後の、金曜日発表された、USTR年次報告には前向きな言語が含まれていた。


 「市場開放の交渉努力の終結、承認、実施にため、TPAのもとで議会と一緒に活動する。このような権限は、現在及び将来の交渉を導き、このように、前進している仕事中心の貿易課題を支援する。」と報告。

 オバマ政権は、権限なしで10ヶ国とTPP交渉を続けている。しかし、交渉者は、10月のバリ島でのAPEC首脳会議までには交渉を終結させたいと望んでいる。ホワイトハウスがTPAを持たなければ、それは困難になる。
 元上院議員、Monument Policy GroupのパートナーTimothy Punke氏は、「TPPもEU-FTAに言及するかどうかは別として、複雑になるし修正項目もあり両方は難しい。上院を通してTPAを獲得するのは困難である。」と語った。
 激しい戦いのあと2002年にTPA法が可決された。自由貿易を指示する共和党議員は、多くの失業者を生む貿易協定を非難する民主党議員の異議を抑えて法案を可決した。

 金曜日、上院財政委員会共和党トップのハッチ議員は、ホワイトハウスがTPAの法律更新を求める発表を行ったことを喜んだ。「しかし、TPAを作るには、話以上の現実てきなものが必要だ、大統領の真のリーダーシップと行動が求められ、この法律はオバマの貿易課題に不可欠な「かなめ」であるとハッチ議員は語った。


 オハイオ共和党でブッシュ政権時代のUSTR代表のRob Portman上院議員は、ホワイトハウス声明を歓迎し、政権にとってTPAを推進し可決させることに集中することは重要だと語った。

米経済界は、TPA法案を可決させることは今年の最優先課題の一つであると。

「それは効果的な交渉合意のための重要な道具であり、議会による可決を望む」と前ミシガン州知事(共和党)のBusiness RoundtableのJohn Engler社長が語った。
米商工会議所のChristopher Wenk専務も、オバマ政権の声明を歓迎。
(以上、Insurance Journal紙)


Feedstuffs紙
全国農民組合など8団体が米議会の有力議員に書簡を送った。
http://feedstuffs.com/story-groups-express-dairy-concerns-within-tpp-negotiations-45-95610
貿易の自由化による酪農製品への影響を考慮しなければ、TPPに反対。(ニュージーランドの脅威に対し)TPAについても、酪農産業が壊滅しないように、これまでのTPAを復活させるのではなく、新しい貿易政策手順を採用するよう議会に訴えると。
To make sure the U.S. dairy industry won't be decimated by the TPP, the letter urges Congress to adopt new trade policymaking procedures rather than

reinstating so-called "fast-track" authority.


Infojustce
400以上の市民団体も議会に書簡を送付
http://infojustice.org/archives/28828
議会は、オバマ政権に特別な権限を付与する前に、政権がTPP草案を公表することを要求せよ。
これまでのTPAではなく、新しい米国の貿易交渉承認手続きを要求する。
Instead of delegating Congress’ exclusive constitutional authority to “regulate commerce with foreign nations” to the executive branch through the

reinstatement of outdated and extreme procedures like Fast Track “Trade Promotion Authority,” we urge you to support a new American trade agreement

negotiation and approval process that:


「結論」
 オバマ大統領は、一般教書でTPP交渉終結とEU-FTA交渉開始を発表、そして12日に間に合えば日本の参加表明を期待し、カトラー女史が日本に張り付いて言論工作を行っていた。TPP参加を促す報道は、安倍総理訪米に向けてさらにエスカレートし、希望的観測記事(言論工作)が紙面を埋めた。会談後の報道も一斉に参加を叫んでいる。

 安倍総理の訪米で作成されたTPPに関する「日米共同声明」を、上記のように米国政治システムから見ると、「日本は参加表明をするだけでよい。日本との交渉は、牛肉、自動車、保険のように二国間の交渉を追求、何年かかってもよい。議会からTPAを獲得するためだ。」がオバマ政権の考えだと思う。
 安倍総理が帰国され、自民党や公明党に説明した。240名に達する「TPP参加の即時撤回を求める会」を抱える自民党にどのように説明するのか、そしてどのようにまとめるかが大きな問題になる。安倍総理は、決して「米議会調査局」が述べている自民党の分裂を招かない指示をするものと信じている。もし分裂などおこれば、自民党の問題以上に日本の政治が大混乱になり、取り返しの付かない歴史的事件になる。
http://ameblo.jp/tpp-tekkai/page-1.html#main (2月27日)
http://ameblo.jp/tpp-tekkai/page-2.html#main
http://ameblo.jp/tpp-tekkai/page-3.html#main
http://ameblo.jp/tpp-tekkai/page-4.html#main (2月22日)


 一方、米国では、オバマ大統領の一般教書演説、USTRの年次報告書の発表を受けて、各団体が声明を発表している。特に、公表されたTPA(貿易促進権限)の問題がクローズアップされ、米国政界の動向が注目される。折しも3月4日から13日までの日程でシンガポールでTPP16ラウンドの交渉が始まった。

「政府は17日の自民党大会前に参加表明する方向で調整を進めている。」との飛ばし記事も流されているが、時期的には16ラウンドの交渉結果のリークを待っていることも考えられる。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130306/fnc13030606380001-n1.htm


 最後に、米国の議会と大統領府の権限の違いは、日本が考える国会と政府の関係と全く異なることを留意いただきたい。プロスポーツで言えば、議会はオーナー、大統領はジェネラルマネージャー、閣僚は監督あるいはヘッドコーチに相当する。また、閣僚の人事権も最終的には議会(承認)にあり、各省庁は、議会委員会の監督下にある。

 TPP推進を決めるのは、米議会でありオバマ政権ではない。NAFTA以降の自由貿易協定は、雇用の海外移転=オフショアが進み、米国の失業者増大と賃金の引き下げにつながったと批判が多くなり、民主党議員に拡散した。(オバマ大統領もカーク代表も認識)特に民主党が多数派を占める上院では、60票のTPA賛成票を獲得するのは絶望的だ。

 米議会がTPA議決をせず、うやむやのうちにTPP交渉が消えるか、またはTPAを否決すればオバマ政権が対外的信用を失い、世界中の各国が米国との交渉を考え直すことになる。
 日本は、国益を調査し、TPA問題の米社会への拡散と米議会の動向を見守ればよい。

 

 日米同盟強化問題(対中国)とオバマ政権の引き返せないTPP交渉終結問題が、お互いの貸し借りの問題になるのかと理解しているのだが。


「参考、米国製造業」 
 米国の製造業雇用者数は60年の1,544万人から79年には1,943万人に増加したが、その後は減少傾向を辿った。とくに00年以降の雇用減少は急ピッチで、00年の1,723万人から10年には1,152万人と10年間で製造業の雇用者数は約3分の2に減少した。
労働者の時給は製造業の18.6ドル(10年時点)に対し、宿泊飲食サービスが10.68ドル、ビジネス支援・事務サービスが15.82ドルと低い。
経済産業省(288頁に日本、ドイツ、韓国、米国の就業者(製造、非製造)
http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2012/2012honbun_p/2012_03-1.pdf
農協資料(85頁~87頁に米国の製造業の雇用者数と雇用比率、賃金比較)
http://www.nkri.or.jp/PDF/2012/sogo_64_furukane.pdf