前回の続きです)
   今回の人口推計で明らかになった、現役世代(15~64歳)の人口は50年後、現在より4割以上減るという余りにもショッキングな事実。働く世代が約半数近くまで落ち込むというのである。これは正に日本社会の破綻の危機である。
   前回の投稿では、この少子高齢化に拍車をかけている原因は「愛着(愛の絆)」の未形成であり、そのためには、愛着形成に最も影響を与える乳幼児期の養育を見直す必要があると述べた。
   今回の投稿では、その具体的な見直し方、その方法について、私なりの考えをお話ししたい。因みに、以下に述べる内容は、私がこれまで随時投稿してきた記事を整理し一連の流れにまとめ直したものとなっている。
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   まず、愛着を形成するためにはどうすればいいか、その方法を私達が知ることである。ここでは、「愛着7」をその方法の1つとして捉えてみたい。因みに、この支援方法は、愛着理論の専門家達(精神科医の岡田尊司氏、元倉敷市立短期大学の平山諭氏、社会福祉学博士であり臨床ソーシャルワーカーのヘネシー澄子氏、臨床教育学博士であり臨床心理士並びに日本カウンセリング学会認定スーパーバイザーの八尾勝氏、NPO法人ハートフルコミニュケーション代表理事の菅原裕子氏)各氏の提案する愛着形成の仕方に共通する点を洗い出し、それらを7つに絞ったものである。その7つとは以下の事項である。
①乳幼児期に親が子どもの近くにいて養育に当たる
②スキンシップを図る
③子供を見て微笑む
④子供に穏やかな口調で話しかける
⑤子供の話をうなずきながら聴く
⑥小さなことから褒める
⑦以上の中でやると決めたものは、気分でやったりやらなかったりしない

   これらの方法を意識して乳幼児期の子供に接すれば、安定型の愛着を形成することが出来ると考える。因みに、特に出産後1歳半までの期間が大切であり、更にこの間赤ちゃんの養育に当たるのは基本的に母親だけに絞った方が良いと精神科医の岡田氏は指摘している。

   さて、専業主婦の方は、「①乳幼児期に親が子どもの近くにいて養育に当たる」については、クリア出来るが、課題は、子供を保育所に預けながら働いている母親である。1歳半までは基本的には子供の養育に当たるのは母親だけが望ましいのだが、1歳半以前に我が子を保育士という他人に預けなければいけないという現実の中で生活している母親も多い。
   そこで、我が子に接することができる時間が限られているならば、その“”を高めて養育の効果を上げればよい。「量より質」の考え方である。この考え方については岡田氏も支持している。
   上記の7つの事項の中で、最も効果があるとされているのは②の「スキンシップ」である。限られた時間の中でできるだけ赤ちゃんを抱いてあげることで“質”を高めることができると考える。しかし、例えばその時片手に持ったスマホを見ながら抱っこしたのでは、他の③〜⑥の支援が疎かになってしまい、せっかくの抱っこも台無しである。抱っこしながら、赤ちゃんを微笑みながら見て優しい声で話しかけ赤ちゃんの反応に頷きながら耳を傾け、「とても元気ですね〜」等と小さな事でも褒めてあげることが大切である。
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限られた時間の中でより多くの必要な支援を行うことができれば、それだけ養育の質を高めることができるのだ。これも、愛着形成のために何をすればいいのかが分かっていなければ出来ないことである。

   しかし、乳幼児期に愛着形成に成功しても、2〜3歳に訪れる第一反抗期(「イヤイヤ期」)に、母親が幼児のわがままに振り回され厳しい叱責を繰り返すことによって、母親が子供にとっての「安全基地」で成り得なくなった場合には、一度形成された愛着(親子間の愛の絆)も破壊されてしまう。この「イヤイヤ期」の子育ては、ある調査で「子育て悩みランキング」で1位になったもので、おそらく多くの家庭で見られるものではないかと思う。くれぐれも「イヤイヤ期」の意味と正しい接し方を理解して頂ければと思う。

   それを乗り切れれば、あとは「自立3支援」によって接することで、親子間の愛着は維持され続けると考える。このことに関わって最も陥りやすい落とし穴は、親の熱心すぎる養育によって子供に対して過干渉になることによって、子どもが親から自立できず、大人になっても誰かの助けがないと不安になったり、他人の目を気にしながら生活するようになったりすることである。
   なお、思春期に起こる第二反抗期での接し方を間違えると、子供が登校拒否に陥る危険もある。場合によっては、親の過干渉によって子供に溜まったストレスが思春期以降に爆発し、親に対して危害を加えることも起こり得るので注意が必要である。